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「水環境に関する国際シンポジウム」-基調講演

2013年03月22日

持続的な水環境・水利用の改善に向けて

公益財団法人フォーリンプレスセンター理事長/前国際連合広報担当事務次長 赤阪清隆氏

これまで多くの国際組織が水に関わり、国際会議でも議論されてきました。国連の「 Academic Impact 」においても、すでに各国の専門家らによって、水環境に関わる多様な取り組みがなされ、今後も維持されていくことと思います。しかしながら、日本のように水が豊富な国の人々には、水を確保することの大変さや重要性、またそのためのプログラムを十分に理解することは難しいかもしれません。多くの人々は、いまだ水は天からの聖なる贈り物であり、商品として扱われてはいけないと思っています。日本にも水を祭った神社が各地にあり、水神の存在を信じています。

しかし、私は今日あえてここで、水が聖なるものというコンセプトに挑戦したいと思います。水を商品として扱えば、水の価格は必要に応じて適値になるはずです。

現在、アジア各地や中東、カリフォルニア、そしてアフリカでは、約7億8300万人の人々がきれいな水を入手できない状況にあります。これは世界人口の11%にあたります。水は5つのグローバルリスクの中の一つで、2013年には水環境が2番目に深刻なリスクとなっています。

また、OECDの2050 年の環境見通しによると、世界人口の約40%が水環境の深刻な場所に住むことになります。とくに、南北アフリカと南、中央アジアの率が高くなっています。また、毎年1~2億人の人々が、浸水、干ばつ、その他の水害の犠牲になっており、その3分の2は浸水に関するものです。2050年には、浸水の危険にさらされる人々は、1.2億人から1.6億人に増えると予測されています。

こうした問題の解決に向けて、国際間では共通の取り組みや同意がなされていますが、そのもっとも重要な課題の一つとして、“ミレニアム開発目標(MDG)”の7項目目に挙げられている「環境の持続可能性の確保」があります。これは、2015年までに安全な飲料水および衛生施設を継続的に利用できない人口の割合を半減し、改良飲料水源を継続して利用できる人口の割合を増やすといったものです。これに基づいて多くの地域でさまざまな努力がなされていますが、今現在、オセアニアとサハラ以南のアフリカではその目標が達成されていません。

ご存じのとおり、水衛生管理の改善に関わる支出の多くを占めるのは、インフラのメンテナンス費と運営資金です。これらを確保するためには、国際支援に加え、各国の財源が必要になります。そこで水に対する課税が重要な収入源となります。

しかし、水に価格を設定することには議論があります。私はOECDで学んだ経験から、水には適切な価格設定が必要だと信じます。水環境と衛生のコストに見合った価格がつけられれば、人々はもっと水を有効に利用するからです 。ところが、発展途上国ではいまだ水は公共のものとの意識が強く、水に価格をつけることに対して抵抗があります。

近年、国連事務総長よりPost-MDG High-level Panel が設定されました。個人的には目標設定が高すぎるので、各国の同意がなされることは難しいのではないかと思っていますが、5月、6月、9 月、そして10月に行われる国際会議では、中央大学がリードする SDG(持続可能な開発目標)、Post-MDGへの貢献について発言するとても良い機会になると思います。たとえば、震災復興の経験を世界と共有することです。私は2日前に岩手県に行きましたが、沿岸には平地が広がり、家屋は津波によって破壊され、廃墟となっていました。しかし、震災復興が行われつつあり、今後の予防策が検討されていました。こうしたことは、SDG 、Post-MDG にとって、非常に貢献できる経験共有です。

中央大学が推進する“TEAM WATER JAPAN”は本当に素晴らしいフォーラムです。現状、水管理の統括はまったくなされておらず、水に特化した国際組織や国連機関 も存在していません。政治も同様で個々に活動しています。日本政府に関して述べると、すべての省庁が水に関して何らかの取り組みを行っていますが、それを統括する場がありません。日本のビジネスリーダー、教育リーダー、IT、企業、そして、研究者が一つとなった“TEAM WATER JAPAN ”のような組織こそが、国際的に水環境に関した取り組みをリードしていくことができると思っています。

Let there be work, bread, water and salt for all. By Nelson Mandela

私も世界中の人々がきれいな水を利用でき、衛生的な場所に住めるよう望む次第です。まだまだ課題や難題は数多くありますが、今日のようなシンポジウムで、今後の水環境の発展に向けた良い提案が出ることを願います。

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