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Close Up! 「英語で学ぶ日本法プログラム」

2013年11月25日

2013年秋学期、法学部に新設された「英語で学ぶ日本法プログラム」。グローバル社会において、日本語で学修した専門知識を外国語で運用する能力を高めることを目的に、留学生と同じ教室で学んでいます。実際にどのように講義が行われているのか、そのひとコマをご紹介します。

木曜3限「専門総合講座A1 比較公法」 
担当教員:佐藤信行法科大学院教授・牛嶋仁法学部教授

英語で学ぶ日本法講座

「英語で学ぶ日本法プログラム」には、「比較公法」「比較契約法」「比較刑事法」「比較企業法」「比較裁判手続法」の5つのクラスが設置されています。そのうち「比較公法」は、憲法と行政法の双方を範囲としており、この日(2013年11月21日)の授業は、憲法部分の佐藤教授が担当でした。憲法編第6回のこの日は、1995年に廃止された刑法の尊属殺人規定(刑法200条)に関する1973年の最高裁判所違憲判決を素材として、「平等」とは何かについて、議論がなされました。 

はじめに、憲法14条(法の下の平等)の内容を確認しました。条文には、「すべて国民は、法の下に平等であって人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とあります。この中の「性別」という概念をもとに「合理的な区別とは何か」について、アメリカの「ブラウン対教育委員会判決」(Brown v. Board of Education of City of Topeka, 347 U.S. 483)の例を参考にしながら、考えました。

 次に、1973年4月4日に最高裁が下した「尊属殺法定刑違憲事件」の判決について議論しました。

 刑法200条は「尊属殺」の重罰規定を定めたものであり、被害者が被疑者の父母、祖母祖父などの直系尊属である場合において、法定刑は「死刑又は無期懲役」に限られるきわめて重いものでした。しかし、この事件における被告人女性の悲惨な背景を考慮すると、執行猶予の余地のある刑法199条(殺人罪)ではなく刑法200条を適用されることは極めて不合理であり、憲法14条(法の下の平等)に違反しているという理由から、最高裁は刑法200条を違憲とし、被告人に対し通常の殺人罪を適用、懲役2年6カ月、執行猶予3年を言い渡したのです。

 この判決では、15人の最高裁裁判官の意見は3つに分かれました。1人は、刑法200条は合憲であるとする反対意見を述べています。これに対して、残り14人は、尊属殺人罪という特別な犯罪類型自体を認めることが憲法違反であるとする6名と、この類型は認められるが通常の殺人罪との間での法定刑の差があまりに大きすぎるので憲法違反であるとする8名に分かれました。そこで、参加学生各々の意見が述べられた後、このように裁判官の意見が分かれた背景には、日本法・日本社会おける儒教的価値観とそれへの評価の差異があるのではないかという視点から、活発な議論がなされました。

なお、この日は、オーストラリアから来日中のニューサウスウェールズ大学のコリン・B・ピッカー教授のほか、牛嶋仁法学部教授と北井辰弥法学部准教授も加わり、講座に参加した学生と活発に意見を交わしました。

担当教員から

佐藤信行法科大学院教授

佐藤信行(中央大学法科大学院教授・法学部兼担教員)

日本法は日本語で書かれていますが、今日のグローバル化社会では、日本法を適用法(準拠法)としつつも、「英語を契約言語とする」ことが普通に行われています。ここでポイントとなるのは、こうした場合「直訳」が成り立たないということです。なぜならば、英語は、元来イギリス法(今日ではイギリス法を起源とする「英米法系」)と結びついた言語であり、その枠組みの違いから生じるギャップがあるからです。

そこで「英語で日本法を学ぶ」ということは、同時にその背景文化や英米法にも触れ、学ぶということを意味するのです。

この学び方は、まさしく新しいものであり、担当教員である私も含め、参加者は毎回「発見」を体験しているところです。たとえば、今回の議論では、「刑法200条ではなく199条の下で、被害者が尊属であることを考慮できるか」という原理的な問いがなされましたが、アメリカ合衆国ご出身のゲスト教授コリン先生からは、「合衆国では、そもそも量刑ガイドラインが厳格であり、裁判所の裁量幅が
小さい」という議論の前提の違いが指摘されました。これも、こうした発見の一つでといえるでしょう。

今年から始まったこの新しいチャレンジに、ぜひ皆さんも参加してください!

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