05 REPORT

【第6回IW実施報告】フィリピン大使 講演会「フィリピンのグッド・ガバナンス 政治的、経済的影響と日本との関係」

2014年12月24日

フィリピン大使 講演会
 第6回インターナショナル・ウィークの2日目となる12月9日(火)、マヌエル・モレノ・ロペス駐日フィリピン大使が多摩キャンパスを来訪し、講演会を開催しました。講演前にはロペス大使との懇談会が開かれ、本学の酒井正三郎学長をはじめフィリピンからの留学生や同国のインターンシップに参加した日本人学生と交流しました。

下記に、講演の概要を紹介します。

 講演会「フィリピンのグッド・ガバナンス ~政治的、経済的影響と日本との関係」


教訓から経済を発展させる。フィリピンは今、成長過渡期
 フィリピンは南シナ海、太平洋といった戦略的海上交通路をまたぐ形で立地しています。7,107の美しい島々が存在し、それらは81の州に分けられています。120~170の言語が使われ、1億人の国民は温かく勤勉です。アジアの中でも活気ある民主主義国家として経済が成長しており、この国の継続的発展が東アジア経済の安定にも繋がるでしょう。
 フィリピンは1946年に共和国として独立して以来、さまざまな教訓を得てきました。その中には15年間の独裁政権下で学んだ、厳しい教訓も含まれています。我々は民主主義に基づきダイナミックに成長するための知識として、それらの教訓を積極的に活用してきました。フィリピンは今、エキサイティングな時期にきています。

秩序ある国家として、パートナー国と取り組む平和維持
 2010年、ベニグノ・アキノ3世が大統領に就任し、政治経済の抜本的改革を行ってきました。アキノ政権の信念は、「法律と憲法にのっとったよい統治(グッド・ガバナンス)は、よい経済を生む」です。政府に説明責任を持たせ、透明性を高めて汚職に対して断固たる反対をしたことで、産業界からも信頼が得られるようになりました。経済は安定し、アジアの中でもっとも経済が好調な国のひとつとなっています。2014年には、米国系有力格付機関、スタンダード&プアーズ(S&P)が、フィリピンをトリプルB(BBB)に格付けしました。これは経済発展が著しいBRICs(ブリックス)諸国のインドやブラジルよりも高い格付けです。このことは、投資家たちの信頼を高め、フィリピンが社会保障プログラム、防衛、健康保険、貧困削減などに資金を割く余裕ができたことを意味します。また、アキノ政権はインフラ整備にも真剣に取り組んでいて、2015年にはGDPの4%、128億ドルをインフラ整備のために計上しています。
 この発展を継続させるため、近隣諸国へも積極的に働きかけています。
ASEANでは2015年末に発足するASEAN経済共同体(AEC)に向け尽力しており、AECでマーケットが統合されれば経済がさらに活性化するでしょう。
 また、移民問題、災害リスクの低減、平和維持といった国内の課題にも、日本、アメリカなど海外パートナー国とともに取り組んでいます。特に海洋安全保障に関して西フィリピン海、南シナ海の問題は、アジア太平洋地域の将来の安全保障と安定にとっても間違いなく大きな影響を及ぼすものです。フィリピンはいずれにせよ、紛争の平和解決、法の支配の順守、共通海域の防護、上空飛行及び航海の自由を促進し、志を同じくする国々のサポートを頂きながら問題解決に向けて建設的な決議を強く求めています。

 日比国交正常化60周年。フィリピンに最も近しい国・日本
 多くの方はお気づきではないかもしれませんが、フィリピンと日本は東南アジアでは最も近い隣人であり、多くの類似点を持っています。双方ともアジア大陸から沿海によって隔てられ、反対側には太平洋が広がる島国です。マニラ、東京間は飛行機でたった4時間。でも、近いのは距離だけではありません。1956年にフィリピンと日本の外交関係が確立されて以来、政治、経済、文化面において誠意ある関係を築いてきました。フィリピンにとって日本は最大貿易相手国であり、ODAの最大拠出国です。日本の絶え間ない支援により、40年間続いたフィリピンのイスラム過激派、モロ・イスラム解放戦線MIFLとの紛争は、平和に向けた協議で大きく進歩しました。日本はこの和平プロセスにおいて、ミンダナオ和平国際監視団、国際コンタクト・グループ、独立警察委員会(ICP)のメンバーとして、長きに渡り貢献してくれました。これら3つの全てにおいてメンバーだったのは日本だけです。
 2016年の7月、日比国交正常化60周年を迎えます。フィリピンと日本における戦略的パートナーシップは一層強化され、地域繁栄の助けになると思っています。
 今回の講演が地域国際関係の重要性の指針になり、皆さんのフィリピン理解への一助となれば幸いです。
 
 
■講演者プロフィール■
 
 Manuel Moreno Lopez  マヌエル・モレノ・ロペス大使
1967年にフィリピンのユニバーシティ・オブ・ザ・イースト(経営学専攻)を卒業後、1970年にハーバード・ビジネス・スクールにて経営開発プログラムを受講。フィリピン最大の配電会社Manila Electric Corporation (MERALCO) の社長、会長兼CEO等を歴任した後、2011年4月より駐日フィリピン共和国大使。

フィリピン大使 講演会 懇談の様子

懇談の様子。
駐日フィリピン大使館からロペス大使、エスカローナ公使が来訪しました。
本学からは酒井学長、武石智香子副学長、橋本基弘副学長、若林茂則教授、スティーブン・ヘッセ教授、宮本 勝教授、エマン・スヘルマン講師と、フィリピンでのインターンシップを経験した本学法学部政治学科・小泉佑人さん、フィリピンからの外国人留学生、イアンさん、アリアンさんが出席しました。
フィリピン大使 講演会 懇談の様子
フィリピン大使 講演会 懇談の様子
フィリピン大使 講演会 懇談の様子

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