05 REPORT

【第6回IW実施報告】駐日インドネシア大使館教育文化部長 講演会「インドネシアの人材育成の現状及び今後の日本との関係」

2014年12月24日

駐日インドネシア大使館教育文化部長 講演会
 第6回インターナショナル・ウィークの4日目となる12月11日(木)、駐日インドネシア大使館、M.イクバル・ジャワド教育文化部長が多摩キャンパスを来訪し、講演会を開催しました。講演会に先立ち、ジャワド教育文化部長と本学の酒井正三郎学長、武石智香子副学長、若林茂則教授、スティーブン・ヘッセ教授、佐々木創准教授、エマン・スヘルマン講師らが意見交換をしました。

下記に、講演の概要を紹介します。

講演会「インドネシアの人材育成の現状及び今後の日本との関係」

東南アジア最大の人口を誇る、多民族国家・インドネシア
 インドネシアの国土の長さは6,400キロ。東京からインドネシアの首都・ジャカルタまでの距離が5,700キロであることを比べると、インドネシアは非常に大きな国であることが分かります。1万7,000以上の島々から成り、人口は2億5千万人です。ちなみに、東南アジア諸国の人口が6億人。インドネシアは東南アジアの中でも最も人口の多い国です。300以上の民族、700以上の言語が使われており、民族的な多様性があります。自然資源も豊かで、インドネシアにしか生息しない動植物もいます。スズは世界第2位の産出国。ニッケル、金、銅、天然ガスを産出し、パーム原油に至っては世界最大産出国です。

日本への留学が、経済を牽引する人材を育てる
 インドネシアでは7~15歳の子供のほとんどが学校に通っていますが、高校生に上がる年齢になるとやや減少します。さらに、大学に通う年代は2,500万人ほどいますが、そのうち400万人しか大学に通っていません。入学金、授業料が払えず、就労の道を選んだ結果です。
 こうした現状を踏まえ、政府は国家予算の20%を教育に分配することを決定しています。特に留学に力を入れていて、奨学金を約800名に支給しています。最大の留学先は日本で、3500人のインドネシア人が、インドネシア政府や日本政府、日本企業、両親からの支援を受け、日本で勉強をしています。考えてみてください。10年経ったら、3,500人のインドネシア人が日本からインドネシアに帰り、社会のリーダーとして働きはじめるんですよ。現在でも、ジャカルタでは日本の学校を卒業したインドネシア人が、日系企業で活躍しています。10年後、留学を終えた学生たちがインドネシアの産業経済を牽引してくれるでしょう。

ビジネスリーダー+人口ボーナスで、世界第7位の経済大国へ
 日本の「国際協力銀行(JBIC)」2013年のデータによれば、海外でビジネスをするのに有効な国として、インドネシアが第1位に挙げられています。すでにインドネシアに進出している日系企業の製品は、インドネシアで大変人気を集めています。購買できる中間所得者層が非常に増え、市場として成長しているからです。いわゆる人口ボーナスにより、人口2億4千万人のうち約60%が就労年齢であり、しかもその多くが生産性の高い若年層です。研究機関「McKinsey」が2010年に出したデータによれば、2030年にインドネシアは世界第7位の経済国になると予測されています。

経済成長する中で見つかった課題。発展を継続させるために――
 若者の中には、両親からかなりの援助を受けながら、アルバイト生活を続けている人もいます。両親のお金で生活が賄えると考えているのです。これが、中間所得者層の罠です(一定の収入に達した後、順調に発展できず収入が停滞すること。「中所得国の罠」は、資源や労働力を輸出することで中所得国に移行するものの、先進国の技術競争、後発新興国の追い上げなどに遭い、先進国の仲間入りができずにいることを示す)。いわゆる中間所得者層の罠から抜け出すには、教育の質を向上させなければいけないと思います。だからこそ若者には「海外で勉強せよ」と奨励しているのです。
 もうひとつは、技術、イノベーションの発展です。例えばお菓子に着目してみると、日本では様々な新商品が登場しています。アジアでも有名で、みんながお土産として買っていきます。ラッピングも美しく、旅行者たちはラッピングを破らないよう非常に注意して持って帰っているんです。皆さんに言いたいのは、これがイノベーションのひとつだということ。ものづくりの伝統も日本にはあります。私たちは、日本がいかにしてイノベーション大国になったかを学びたいと思っています。留学生の87%が科学技術を学んでいますが、インドネシア政府は社会科学にも目を向けようとしています。ものが作れても、どう売るか分からなければビジネスは成り立ちません。
 日本とインドネシアは戦略的パートナーシップ、経済連携協定を結んでいます。私は教育のセクターでも、2国間の協力関係の強化を望んでいます。
 インドネシア政府は、日本の学生にもインドネシアで勉強してほしいと思っています。奨学金制度もありますので、中央大学からインドネシアに留学したい人は、ぜひ応募してください。
 
 
■講演者プロフィール■
 
 Ir. M. Iqbal Djawad, M.Sc, Ph.D イクバル・ジャワド博士
1987年にインドネシアのハサヌディン大学畜産学部を卒業後、1994年に広島大学大学院水産学科修士課程、1997年に同大学大学院水産学科博士課程修了(魚類生理学専攻)。2012年より駐日インドネシア共和国大使館教育・文化部長。インドネシアのハサヌディン大学で教職に就きながら、現在米オハイオ大学東南アジア研究センターにて非常勤教授も勤める。

講演前には武石副学長たちがジャワド氏と会談。講演後にはジャワド氏を囲み、懇親会が開かれました。
懇親会には酒井学長、武石副学長、橋本副学長、若林教授、ヘッセ教授、酒井(由美子)教授、佐々木准教授、エマン講師、カルティカ講師のほか、インドネシアから中央大学に留学している学生たちが参加しました。
駐日インドネシア大使館教育文化部長 懇親会
駐日インドネシア大使館教育文化部長 懇親会
駐日インドネシア大使館教育文化部長 懇親会
駐日インドネシア大使館教育文化部長 懇親会
駐日インドネシア大使館教育文化部長 懇親会

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