05 REPORT

JICAボランティアセミナーが開催されました

2015年12月08日

 2015年11月24日(火)、多摩キャンパス8206教室にてJICAボランティアセミナーが開催されました。本セミナーは、青年海外協力隊の募集説明会とあわせて、国際協力や海外ボランティア活動について理解を深める目的で開催されたものです。
 当日は、青年海外協力協会(JOCA)・巨海亮二氏より、JICAボランティア事業に関する概要が説明されました。青年海外協力隊の活動で、広い世界観、課題解決能力、たくましい精神力、高いコミュニケーション能力等が得られることや、社会的評価が高まり帰国後の就職状況も良くなって来ていることなどについて話がありました。
 また、中央大学経済学部国際経済学科を2009年に卒業し、青年海外協力隊としてザンビア共和国に派遣された石川 渚 氏(中央大学経済学部OG)が招かれ、村落開発普及員の活動や活動を通じて得られた成果などについて発表が行われました。 本セミナーには、国際協力や青年海外協力隊に興味がある学生を中心に約150名が参加しました。学生たちは特に大学の先輩である石川氏の体験談に強い感銘を受け、「苦悩や失敗談も交えた実体験による話がリアルに伝わってとても興味がわいた」、「今後自分の将来やキャリアを考えていく上で参考になった」などの意見が聞かれました。
 
石川 渚 氏
職   種: 村落開発普及員(現在のコミュニティ開発)   
派 遣 国:ザンビア共和国
所   属:チョングウェ 郡エイズ対策委員会
2009年 中央大学 経済学部 国際経済学科 卒業 / 経済学部 林ゼミナール所属
▼卒業後、民間企業とNPOに勤務
▼青年海外協力隊 (2011年1月~2014年1月)
※通常2年間の派遣を1年間延長
▼WHOインターン、英国大学院留学
  現在は開発コンサルティング会社に所属し、ウガンダ国で実施中の日本の政府開発援助(ODA) 案件の技術協力プロジェクトに携わっている。

体験談概要

村落開発普及員としてザンビアのチョングウェ郡でHIVの減少を目指す

 ザンビアという国で、村落開発普及員としてチョングウェ郡エイズ対策委員会に所属し、3年間活動しました。村落開発普及員は専門的な技術や資格等がなくても応募できる職種で、活動内容は多岐に渡ります。医療分野のバックグラウンドはありませんでしたが、HIV予防教育、コンドーム配布、HIV検査の普及等、郡内におけるHIV新規感染者数の減少を目指してザンビア人同僚と共に活動をしました。
 ザンビア人(15歳~49歳)のHIV感染率は12.5%(UNAIDS, HIV and AIDS estimates/2013出典)です。世界平均0.8%と比べても非常に高い数値です。応募前はHIVについての詳細知識や活動経験はありませんでしたが、JICAの派遣前訓練でHIVの基礎知識や、現地での予防啓発活動方法、プロジェクトの組み立て方などを学び、任地であるチョングウェ郡に赴任しました。

相手の文化を尊重しながら、いかに活動の効果を上げるかという課題

 HIVに対する啓発活動では、HIV検査の促進や予防啓発活動だけでなく、中学生や高校生に対するHIV予防教育も必要だと考えました。なぜならば、郡内の学校で妊娠・退学をする生徒がいることが配属先で問題視されていたからです。学生たちに望まない妊娠の防止とあわせて、HIVへの感染予防教育が、今後、リスクのある性交渉に至ってしまうかもしれない生徒を減らす為に必要とされていました。
 しかし、敬虔なクリスチャンが多いザンビアでは、婚前性交をタブーとする価値観も強く残っており、教育現場におけるHIVの予防手段であるコンドーム使用教育に対する反発が強くありました。こうした自分とは異なる宗教や文化背景で暮らす人々がいる中で、相手を尊重しながらどうアプローチをするのがベストなのか試行錯誤し、学生たちには妊娠のメカニズムを教えはじめ、そこからHIVの感染経路について伝えていくようにしました。また、学校の教員たちには「学生たちにどんな将来を歩みたいかキャリアプランを描かせ、今は子どもを作る時期ではなく勉強に集中する時期だと教育する」などを提案しました。
 もちろん、性交渉におけるHIVの感染が多い状況下でコンドームの使用が一般的には勧められており、すでに性交渉をはじめている学生等へは有効なアプローチとして位置づけられていますが、文化面を配慮した場合に教育現場に学生へのコンドーム使用の啓蒙活動をするべきではないと考える人も多くいます。相手を配慮した上で、でも効果のあるベストな活動は何かを考え模索し行動に移していくのが、現地に根付いた活動をする協力隊ならではの経験かと思います。
 また、青年海外協力隊の活動は現場で現在行われていることに従うだけでなく、その状況をくみ取ったうえでより良い活動の提案をして活動を活性化させていくことで現地の人の為になれることが醍醐味だとも思います。

“先進国からの支援者”という期待に、どう対応するか

 海外からの援助団体が多くある中、ザンビアに派遣された当初は「何かをくれる人」という印象を持たれていました。しかし協力隊としての活動は、援助団体等が行うような規模の大きなものや予算のある活動ではありませんでした。ですから、協力隊はまずはそうではないと言うことを伝えなければいけませんでした。
 現地ではHIVの予防啓発や、HIV陽性者の支援、HIV/AIDSによって親をなくした孤児支援団体の人々の活動を支援していたのですが、支援とは言っても、活動資金の為にお金を必要としていることには変わりはありませんでした。そんな状況下、彼らの活動を支援する為に協力隊としてできることを考え、現地で活動している大型の海外NGOがもっている草の根団体の支援プログラムを探し、採用される提案書の書き方のコツを団体から直接聞いて草の根団体の人に指導を行いました。団体活動支援の一環として、どうすれば今後も活動資金が得られるかを、提案書の書き方の指導から提出までのプロセスを共にすることを通して分かってもらえるようにしました。
 活動を通して、現地の人と同じ目線に立ち、共に対応策を考え、共に実施することで、協力隊として支援できることは多かったです。

健康管理や防犯は、JICAの指導+自己管理が必要

 ザンビアはマラリア蔓延国ですが、首都にあるJICA事務所には健康管理員がいて、ザンビアの状況考慮した健康管理法を指導してくれます。一週間に一度服用するマラリアの予防薬もJICAから無料で支給されました。もちろんこうしたJICAからのサポートはありますが、それを守らなければ意味がありません。そうした意味で、健康は自己管理も必要です。セキュリティに関しては、JICAの防犯基準をクリアした家でないと住めません。しかし、そうしたセキュリティをクリアした家に住んでいても、家の中や身の回りの貴重品を周囲の人に見せる等の注意や配慮を怠った行動をしていると、強盗に入られる危険性が上がる等、自己管理の大切さもブリーフィングを通して学びます。
 安全に過ごせるかは日頃の心がけ次第だと思います。

モチベーションにも紆余曲折がある

 現地での活動は、精神的にも活動的にも難しいことがたくさんありました。派遣されて間もない頃は新しいことへの挑戦の連続であり、本当に楽しく活動を行っていました。しかし、半年くらい経つと、「本当にこれでいいのだろうか? 自分の活動は配属先や現地の状況にマッチしているのだろうか?」と疑問に思い始めました。さらに思ったように物事が進まないことが続くと、自分がせっかくザンビアまで派遣されたのに何をしているのだろうと、気持ちが沈むこともありました。しかし1年くらい経つと失敗から学びや、地域や一緒に働く人について分かってくることがあり、成果が見えてきて葛藤を突破することができました。
 こうした経験により精神面が鍛えられたり、試行錯誤の連続から課題解決能力が鍛えられたりと、多くのことが得られました。

青年海外協力隊は、現地の人の人生に関わる活動です

 現地で心がけていたのは、同僚をはじめ一緒に仕事をする現地の人たちをよく知ること。現地の人たちが何を求めていて、どう仕掛ければその人たちが喜ぶ活動ができるのかを考えていました。国の制度のひとつとしてJICAで派遣されているのに、上手くいかず無力さを実感し、すごく悔しい思いをしたこともあります。そうしたなかでも諦めずに一生懸命に考え現地の人たちとやりきるところにやりがいがあるのだと思います。
 青年海外協力隊に行くと知り合いに言った時には「遊びに行くのでは?」思われたこともありましたが、文化が異なる異国の地で、そこにいる現地の同僚と一生懸命に活動内容を考え、現地の人たちと協調してきたことは、どこでも活かせるスキル。そして青年海外協力隊は、その国や現地の人たちの生活に関わる重要な活動です。HIV対策の活動も、その人の人生、一生の健康に関わること。生半可な気持ちではいけません。大変だからこそ学びがあるし、自分の成長もあるし、達成した時の喜びも大きいです。
 今すぐでなくてもいい。機会があるなら、いつかはJICAボランティアに参加することをお勧めします。

前へ

次へ