駐日フランス大使による法学部特別講義
「激動する世界におけるフランス外交と日仏関係」
2018年06月19日

この講演会は、ピック大使と本学法学部教授 目賀田周一郎及び西海真樹とのご縁で実現したもので、目賀田教授担当の「外交と国際法Ⅰ」の授業内で開催されました。
星野学部長のごあいさつ

▲法学部長 星野智
また今年は、日仏就航通商条約160周年にあたります。現在、日本とEUの間では、経済協定EPAの最終合意が成立され、年内の調印を目指されています。EPAの成立により、今後ますます日本とEU、日本とフランスの関係が深まることが期待されています。
ピック大使には、「激動する世界におけるフランス外交と日仏関係」というテーマで講演していただきます。今日のお話は、今後の日本とEU、日本とフランス、との関係を考える上で、我々に大きな示唆を与えてくれることと思います。
はじめに ~ピック大使より学生の皆さんへ
今日同行しているマリナス氏は、大使館で日仏の大学間交流を担当していますが、かつてこの中央大学に留学していた経験があります。日本で今の仕事に就いたのは、もしかしたら、こちらの教室で学び、日本を好きになったことがきっかけだったかもしれません。
皆さんには、大学での生活を十分に楽しみ、将来に向けての芽を築いていただきたいと思います。
世界の問題・課題は、国境を超えて

現在、世界では多くの緊張が存在し、アフリカのサヘル地域、中東ではイランを中心にシリア、イエメン、サウジアラビア、ヨーロッパではウクライナ、南アジアではフィリピンやインドネシア、極東地域では北朝鮮というように、様々な地域や国々で対立や内戦等という問題があります。また、環境問題では、気候の変動にもつながり近隣諸国に影響を与える温室効果ガス。テロ問題では、第三国に移動して残虐な行為を惜しまずに実行する人たちがいます。テロは、ヨーロッパや中東に限定するものでもなく、アジアではマレーシア、インドネシア、フィリピンでも起きています。しかもテロの脅威は、大量殺戮兵器や大量破壊兵器に加えて、核の問題にも発展しています。
そして、安全保障や環境問題のみならず、経済でも同様に問題が起きています。ITの普及により、世界をまたがって活動するグローバルな企業が増えていますが、あまりにも世界中で活動しているために、それが税金逃れという形で、各国の収入源である国税の減少に繋がってきていることも問題です。そして、2008年に起きたリーマンショックは、アメリカから瞬く間に世界中に広がり、EUでも大きな痛手となりました。
各国が協力し合い、問題を解決するために必要なこと
しかしながら、国際機関の中で、自分たちに不利なことを排除しようとしたり、加盟している機関から離脱したりと、自分たちに有利な形で個別に交渉しようとしたりするケースが表れてきています。最近では、イギリスのEU離脱、パリ協定から離脱を申し出た某国が記憶に新しいところです。
私たちが協力し合って行動するための根底には、法があります。それは私たちが話し合いながら決めていった規定やルールというものです。今後、私たちはそのルールを大切にしながら、新たな形を構築していかなければならないと思います。
これからの日本とフランス

▲終了後に、フランスからの交換留学生と
今日、お話した様々な課題、問題に関しても、日本とフランスは同じような見方をしていると感じます。
政治分野では、今後の防衛や安全保障だけでなく、経済交流についても同様です。EPAが速やかに調印されることを願って待ち望んでいますし、これにより、両国の企業にとって有利な環境づくりができることでしょう。また、文化、芸術、学術分野においても、様々な交流を続ける必要があると思います。なかでも、特に若い方々や研究員の方々が互いの国に行って、交流や研究をするというような体制を取りたいと考えています。
こうした両国の関係づくりに役立つ形での要人の往来も現在進められています。2018年7月14日には、安倍総理がフランスを訪問され、マクロン大統領と意見交換することになっています。そこで意見交換と話し合いをするだけでなく、具体的な成果が望まれるところです。
■ プロフィール ■
ローラン・ピック 日本国駐箚フランス特命全権大使
Laurent Pic, Ambassadeur de France au Japon
1964年8月2日、パリ14区生まれ
【学歴】パリ市アンリ4世高等学校卒業
国立東洋言語文化学院(INALCO)ロシア語修士号取得、 パリ政治学院(IEP)卒業
【経歴】1993-95年:外務省大陸欧州局、ロシア、独立国家共同体、コーカサス担当、 1995-97年:在バーレーン大使館一等書記官、 1997-01年:外務省欧州協力局で、ヨーロッパ連合(EU)とアフリカ、カリブ海、 太平洋の各地域諸国(ACP)及びEU開発政策担当、 2001-02年:ピエール・モスコヴィッチ欧州問題担当大臣官房技術参事官、 2002-06年:ヨーロッパ連合(EU)フランス政府代表(ブリュッセル)一等書記官、 2006-08年:国際連合フランス政府代表部(ニューヨーク)第二参事官、 2008-09年:欧州問題事務総局(SGAE)次長、 2009-12年:外務・欧州問題省事務次官付秘書官、 2012-14年:ジャン=マルク・エロー首相官房外交顧問、 2014-16年:駐オランダ大使、 2016-17年:ジャン=マルク・エロー外務・国際開発大臣官房長、2017年6月より:駐日仏大使

▲ローラン・ピック駐日仏大使ご一行と学長・福原紀彦ら本学関係者

▲この日は快晴に恵まれ、多摩キャンパス内を徒歩で移動されました

▲学長・福原(左)、ピック駐日仏大使(右)


▲学長室で和やかに歓談されました