05 REPORT

駐日フランス大使による法学部特別講義
「激動する世界におけるフランス外交と日仏関係」

2018年06月19日

 2018年6月7日(木)、本学多摩キャンパス8203号教室にて、ローラン・ピック 日本国駐箚フランス特命全権大使をお招きし、法学部講演会「激動する世界におけるフランス外交と日仏関係~la diplomatie française et les relations franco-japonaises dans un monde en pleine mutation」を実施しました。
 この講演会は、ピック大使と本学法学部教授 目賀田周一郎及び西海真樹とのご縁で実現したもので、目賀田教授担当の「外交と国際法Ⅰ」の授業内で開催されました。
 大使には、フランスから見た世界の諸問題、日仏関係への期待などについてお話いただきました。また、講義の最後には、日本人学生や留学生からの質疑にもお応えいただきました。法学部はもとより、他学部学生、教職員、一般の方など、300名を超える出席者の皆さんは、熱心に聞き入っており、グローバル化が進む世界情勢や各国の課題、それらにフランスや日本がどのように対応し、どう協力してゆくべきかなどについて、理解を深めたようです。
 
 以下で、講演会の一部をご紹介します。

 

星野学部長のごあいさつ

▲法学部長 星野智

 2017年にローマ条約調印から60周年を迎え、本学のEU情報センターでは、「日本EUフレンドシップウィーク2018」と題したイベントを5月15日~6月2日に多摩キャンパス図書館にて開催しています。欧州連合(EU)の歴史をたどるパネル展やEUクイズなどの企画に、多くの学生が参加しました。
 また今年は、日仏就航通商条約160周年にあたります。現在、日本とEUの間では、経済協定EPAの最終合意が成立され、年内の調印を目指されています。EPAの成立により、今後ますます日本とEU、日本とフランスの関係が深まることが期待されています。

 ピック大使には、「激動する世界におけるフランス外交と日仏関係」というテーマで講演していただきます。今日のお話は、今後の日本とEU、日本とフランス、との関係を考える上で、我々に大きな示唆を与えてくれることと思います。

はじめに ~ピック大使より学生の皆さんへ 

 本日、中央大学の多摩キャンパスを訪れ、学生の皆さんがこのような素晴らしい環境の中で、人生の第一歩を歩んでいけることをうらやましく思います。
 今日同行しているマリナス氏は、大使館で日仏の大学間交流を担当していますが、かつてこの中央大学に留学していた経験があります。日本で今の仕事に就いたのは、もしかしたら、こちらの教室で学び、日本を好きになったことがきっかけだったかもしれません。
 皆さんには、大学での生活を十分に楽しみ、将来に向けての芽を築いていただきたいと思います。
 

世界の問題・課題は、国境を超えて

 国際社会は様々な問題や課題を抱えていますが、それらは国境を超え、世界規模に発展するケースも少なくありません。様々な問題はグローバルに、互いに連動し作用し合っているということがいえます。このようになりますと、国内だけで解決できる問題ではなく、解決するためには、国際協力が必要不可欠になってきています。
 現在、世界では多くの緊張が存在し、アフリカのサヘル地域、中東ではイランを中心にシリア、イエメン、サウジアラビア、ヨーロッパではウクライナ、南アジアではフィリピンやインドネシア、極東地域では北朝鮮というように、様々な地域や国々で対立や内戦等という問題があります。また、環境問題では、気候の変動にもつながり近隣諸国に影響を与える温室効果ガス。テロ問題では、第三国に移動して残虐な行為を惜しまずに実行する人たちがいます。テロは、ヨーロッパや中東に限定するものでもなく、アジアではマレーシア、インドネシア、フィリピンでも起きています。しかもテロの脅威は、大量殺戮兵器や大量破壊兵器に加えて、核の問題にも発展しています。
 
 そして、安全保障や環境問題のみならず、経済でも同様に問題が起きています。ITの普及により、世界をまたがって活動するグローバルな企業が増えていますが、あまりにも世界中で活動しているために、それが税金逃れという形で、各国の収入源である国税の減少に繋がってきていることも問題です。そして、2008年に起きたリーマンショックは、アメリカから瞬く間に世界中に広がり、EUでも大きな痛手となりました。
 

各国が協力し合い、問題を解決するために必要なこと

 世界の抱える様々な問題を解決するためには、国と国が積極的に協力し合うことが必要です。第二次世界大戦後に、各国が協力して多くの国際機関を創設しました。国連や国際司法裁判所などが一例ですが、各機関で全体の問題を解決に導くだけでなく、G7やG20といったフォーラムの機会に、国と国が協力し合って解決するとともに、国際貢献してゆくということが望まれます。

 しかしながら、国際機関の中で、自分たちに不利なことを排除しようとしたり、加盟している機関から離脱したりと、自分たちに有利な形で個別に交渉しようとしたりするケースが表れてきています。最近では、イギリスのEU離脱、パリ協定から離脱を申し出た某国が記憶に新しいところです。
 これまで私たちが大切にしてきた人権や民主主義などの共有してきた価値観に変化が出てきているように思われます。そのことにより、国際機関の存在自体も揺らぎ始め、さらに民主主義そのものにも影響が出ないともいえません。

 私たちが協力し合って行動するための根底には、法があります。それは私たちが話し合いながら決めていった規定やルールというものです。今後、私たちはそのルールを大切にしながら、新たな形を構築していかなければならないと思います。

これからの日本とフランス

▲終了後に、フランスからの交換留学生と

 このような世界情勢だからこそ、日本とフランスは、より一層協力し合い、行動を共にしていかなければならないと思います。両国は同程度に中規模の国であり、国の価値観や将来の目標も同じようなものを見据えていることを考えますと、お互いに対等の立場で話し合いができるのではないかと思います。

 今日、お話した様々な課題、問題に関しても、日本とフランスは同じような見方をしていると感じます。
 政治分野では、今後の防衛や安全保障だけでなく、経済交流についても同様です。EPAが速やかに調印されることを願って待ち望んでいますし、これにより、両国の企業にとって有利な環境づくりができることでしょう。また、文化、芸術、学術分野においても、様々な交流を続ける必要があると思います。なかでも、特に若い方々や研究員の方々が互いの国に行って、交流や研究をするというような体制を取りたいと考えています。

 こうした両国の関係づくりに役立つ形での要人の往来も現在進められています。2018年7月14日には、安倍総理がフランスを訪問され、マクロン大統領と意見交換することになっています。そこで意見交換と話し合いをするだけでなく、具体的な成果が望まれるところです。

■  プロフィール  ■ 
ローラン・ピック 日本国駐箚フランス特命全権大使
Laurent Pic,  Ambassadeur de France au Japon

1964年8月2日、パリ14区生まれ
【学歴】パリ市アンリ4世高等学校卒業
国立東洋言語文化学院(INALCO)ロシア語修士号取得、 パリ政治学院(IEP)卒業
【経歴】1993-95年:外務省大陸欧州局、ロシア、独立国家共同体、コーカサス担当、 1995-97年:在バーレーン大使館一等書記官、 1997-01年:外務省欧州協力局で、ヨーロッパ連合(EU)とアフリカ、カリブ海、 太平洋の各地域諸国(ACP)及びEU開発政策担当、 2001-02年:ピエール・モスコヴィッチ欧州問題担当大臣官房技術参事官、 2002-06年:ヨーロッパ連合(EU)フランス政府代表(ブリュッセル)一等書記官、 2006-08年:国際連合フランス政府代表部(ニューヨーク)第二参事官、 2008-09年:欧州問題事務総局(SGAE)次長、 2009-12年:外務・欧州問題省事務次官付秘書官、 2012-14年:ジャン=マルク・エロー首相官房外交顧問、 2014-16年:駐オランダ大使、 2016-17年:ジャン=マルク・エロー外務・国際開発大臣官房長、2017年6月より:駐日仏大使

▲ローラン・ピック駐日仏大使ご一行と学長・福原紀彦ら本学関係者

▲この日は快晴に恵まれ、多摩キャンパス内を徒歩で移動されました

▲学長・福原(左)、ピック駐日仏大使(右)

▲学長室で和やかに歓談されました

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