05 REPORT

第10回IW実施報告◇WFP×経済学部 特別公開授業 「国際開発論」(林 光洋)「紛争と飢餓に対するWFPの取組み ~ 飢餓から救う。未来を救う。」

2019年01月18日

インターナショナル・ウィーク  第10回 SDGs

▲国際連合世界食糧計画(WFP) 山﨑 頼良 氏

  本学経済学部では、3年次以上を対象に途上国の開発政策等を学ぶ講義『国際開発論』(担当=経済学部教授 林光洋)が開講されています。学生たちは、途上国で実施された開発政策の社会・経済発展に対する影響、貧困および格差の実態、要因、解決方法、アジア等途上諸国の開発経験等について、同講義を通じて学んでいます。

 2018年11月27日(火)3限目、国際連合の世界食糧計画(World Food Programme、以下WFP)東京事務所に勤務する山﨑 頼良 氏をゲストスピーカーとしてお招きし、多摩キャンパス8号館8301教室にて、特別公開授業「紛争と飢餓に対するWFPの取組み :飢餓から救う。未来を救う。」を開催しました。この講演は、本学のインターナショナル・ウィークのイベントの一つとしても実施されました。

 今回の授業では、インターナショナル・ウィーク第10回のテーマである「SDGs」に関連して、WFPとSDGsの関係、WFPの活動の柱である食糧支援の実態、WFPの組織について等の説明がありました。公認会計士の資格を持つ山﨑氏ならではの視点も随所にあらわれていました。また、講義では、学生がスマートフォンやタブレットで回答できる「リアルタイムアンケート」が使われました。回答状況がすぐにスクリーンに映し出されるため、学生にとっては仲間がどう考えているのか、意見の共有が可能になり、考え方の幅がより広がる授業となりました。

「SDGsの目標2および17に向けたWFPの取組み」

 2015年、国連総会において、2030年までに人々の生活を改善するために17の目標からなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択しました。その採択を受けて、WFPでは2017年に新しい中長期計画目標を出しました。

 SDGsの17個ある目標は相互に関連しています。WFPの使命と活動もそのすべてに及ぶのですが、なかでも、「目標2」と「目標17」に重きをおいています。そして、国連WFPの使命である「飢餓ゼロ」(飢餓のない世界)の実現をめざします。

◀世界のハンガーマップ(2017年版)
 

WFPのSDGs「中長期計画目標」

●SDG2(目標2)― ZERO HUNGER   
飢餓に終止符を打ち、食糧の安定供給確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する。     
WFPは飢餓とたたかうことを使命とする国連機関として、2030年までに飢餓をなくすことを第一の目標とする。

●SDG17(目標17)-PARTNERSHIPS FOR THE GOAL
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。
1. WFPの持つ、飢餓とたたかう専門知識や技術、ネットワークをもって、各国政府の飢餓撲滅のための政策立案・執行を支援する。
2. SDGs達成に向けて努力するあらゆるアクター(国連・国際機関、各国政府、民間企業、市民社会、学校・研究機関、メディア等)の力を結集する。

世界の飢餓の現状とWFPについて

    世界中で約8億2,100万人(2017年12月現在)、世界の人口9人に1人が飢餓に苦しんでいるといわれています。飢餓の状況が生まれる主な要因のひとつは「武力紛争の拡大」にありますが、昨今では、そこに「気候変動の影響」が追い打ちをかけています。ほかにも慢性的な貧困や経済の低迷、食糧価格の高騰なども影響していて、それらが複雑に絡み合っています。

 WFPは、飢餓と貧困をなくすことを使命とする国連唯一の食糧支援機関です。食糧支援には、災害や紛争時の緊急支援、栄養状態の改善、学校給食の提供などがあります。毎年約80ヵ国で女性や子どもなど8,000万人に、年平均320万トンの食糧を配布する支援を行っています。
 WFPでは、人道支援のための物流サービス機能・手段(陸上=トラック5,000台、海上=船舶20隻、航空=飛行機70機)を有しています。それらを使って現地に食糧を届けていますが、近年になってクレジットカードやペイサービスを利用する「キャッシュ・バウチャー」や「ブロックチェーン」等、新しい方法での支援が始まっています。カード等を現地の方に使ってもらうのですが、現物支給に比べると輸送コストや時間もかからない上に、現地で買い物をすることにより、現地の経済に貢献できるメリットもあります。
 さらに、作業や評価の効率化をはかるために、「自動運転技術」や「AI技術」などの最先端技術も導入しています。
 

WFPで働くこと、支援することとは

▲WFPに出会ったきっかけや就活等、学生目線で話してくれました

   世界100か国以上で1万6,000人の職員(日本人職員は77人)が国連WFP職員として、業務に従事しています。活動資金は、民間企業や個人・団体、各国政府からの任意搬出金によってまかなわれています。日本とのパートナーシップはとても強く、政府やJICA、NGOのほか、日本企業からも多くの支援を得ています。

 講義の最後に、山﨑氏から、以下のようなメッセージをいただきました。
 私は、高校時代にアメリカへ交換留学し、大学(教養学部社会科学学科)在学中には台湾へ留学の経験をしています。その頃から海外で働く夢を抱いていましたが、大学卒業後は公認会計士として監査法人で会見監査に従事しました。しかし、夢を捨てきれなくて、専門の力を生かして国際機関の財務や会計にかかわりたいと思うようになり、国連 JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)派遣制度(※)」に応募し、WGPのローマ本部に赴任しました。そして、現在は正規職員として東京事務所で活動しています。

 WFP には様々な職種があって、私のような財務・会計やIT系の人材も必要とされています。現地で活動するにあたっては不便な生活や危険もないとはいえません。しかしそれ以上に、人道支援の最前線で活躍できることなど、達成感を得られる魅力的な仕事です。さらに自分自身を成長させる機会も多い仕事だと実感しています。インターンシップやボランティア、イベントの機会もあるので、興味を持って参加、応募してください。

 まず皆さんには飢餓問題に意識を向けていただき、WFPをぜひ支援してください。支援には募金という方法もありますが、毎回募金するのも大変です。WFPのホームページを見たり、SNS等で情報を得る、インフルエンサーとしてこの授業で学んだ話を広めるのもその一つです。世界情勢に関心をもち、自分たちができることを実践してください。
 
 ~世界を飢餓から救うことは、未来を救うことにつながります~
 

(※)国連 JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)派遣制度=将来的に国連機関の正規職員として勤務を志望する人のためのプログラム。2年間、国連機関の本部や現地事務所で実際に勤務し、経験を積むことができる。

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