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05 REPORT

【日本赤十字社・経済学部】特別公開授業「国際協力論」(林 光洋)「イラク、マレーシア、インドネシアにおける難民保護、災害復興と開発協力~UNHCR と日本赤十字社での経験から」

2019年07月10日

 2019年6⽉4⽇(⽕)1限⽬、多摩キャンパス7号館7104教室にて、特別公開授業「イラク、マレーシア、インドネシアにおける難⺠保護、災害復興と開発協⼒〜UNHCR と⽇本⾚⼗字社での経験から」を開催しました。
 
本公開授業は、経済学部教授 林光洋の講義『国際協⼒論』の⼀環で、⽇本⾚⼗字社事業局 救護・福祉部防災業務課⻑の辻佳輝⽒(前国際部・開発協⼒課⻑)をゲストスピーカーとしてお招きし、実施されました。この講義には、本講義の履修者だけでなく、他学部からも国際協⼒や災害⽀援などに興味を持つ学⽣などが多数出席しました。
 
 辻⽒は中央⼤学法学部を卒業した1992年、青年海外協力隊に参加し、帰国後に⼤学院で国際関係学を学びます。それからは、JICA、国連難⺠⾼等弁務官事務所(UNHCR)、外務省等を経て、現在は⽇本⾚⼗字社で活躍されています。国際機関や途上国に関係する日本の組織から世界中のさまざまな地域に派遣され、難民の保護や災害復興における最前線で多岐に渡る経験をされました。本授業では、「国際協⼒/開発協力」、「災害復興⽀援」等について、辻⽒の現場での経験を中心に語っていただきました。

国際協力に携わる~さまざまな国と地域で活動して

▲久しぶりに訪れた母校で、後輩に向けて熱く語っていただきました

 辻⽒は、中央⼤学法学部に在学中から「グローバルな舞台で働きたい」という夢があり、⻘年海外協⼒隊に応募しました。⽂系の法学部出⾝のために、開発途上国でニーズの多い技術や知識をもつ理系出⾝者に⽐べて職種の分野は限られていましたが、卒業した年に「⻘少年活動」の職種で採⽤されました。派遣された太平洋のミクロネシア連邦では、⽂化、習慣の違う国で⼦どもたちにドッチボールやポートボールなどを教え、2年間の任期中にさまざまな経験を積むことができたといいます。そして帰国後は、海外でさらなる活動を⽬指すために、⼤学院に進学。修了後、JICAで3年間、⽇本政府のODA事業スキームのひとつである「無償資⾦協⼒事業」に従事しました。⼤学時代に履修した「国際法」の授業で学んだ「難⺠の保護活動」への思いが⼤きくなり、JICAで勤務した後、国連難⺠⾼等弁務官事務所(以下︓UNHCR)へ移りました。


 UNHCR では在任中の5年間に、イラクとマレーシアに駐在しました。イラクでは、イラン系クルド難⺠を、マレーシアでは、現地警察や⼊国管理局に逮捕されたアフガニスタン⼈、ミャンマー⼈、インドネシア⼈等の難⺠の保護活動に従事。いずれの国でも、難⺠の第3国への再定住をすすめたり、不法逮捕等の釈放要求を担当しました。この業務では、関係機関との交渉が必要不可⽋で、それにはハイレベルな交渉力が要求される、とてもエキサイティングな⽇々だったようです。またイラクでは24時間秘密警察に監視されながらの毎⽇で、精神的な重圧はかなりのものだったといいます。そして、UNHCRでの任務終了後には帰国し、外務省でヨルダンとスーダンの担当官を務めました。
 

▲緊急救援の様⼦。訓練を受けている⽇本⾚⼗字病院の医師・看護 師は、災害が発生すると緊急の救護活動に出動。
(提供:日本赤十字社)

 ⽇本をはじめとする多くの先進国は、開発途上国への⽀援やグローバル・ イシュー(地球規模課題)※の改善、解決に向けて、協⼒し合いながら国際的な⽀援を⾏っています。そして、各国政府や国際機関はもちろん、NGO・NPO団体、企業などのアクターも⽀援者として、現場 で活動しています。辻⽒は、「困難に直⾯している⼈の命を救いたい」 という信念を持ち続けながら、国際協⼒の最前線で活動してきました。 外務省で勤務した後、「いかなる状況下でも、⼈間のいのちと健康、尊厳を守ります」という使命をもち、191の国や地域で⾚⼗字のネットワークをもつ、⽇本⾚⼗字社の理念と活動に賛同し、同社に⼊職しました。
 
※グローバル・イシュー(地球規模課題)
ひとつの国では解決できない地球規模の課題のこと。移民・難民問題、気候変動(地球温暖化)・地球環境問題、人口問題、飢餓・栄養、ジェンダー問題、感染症やHIV/エイズ、テロ対応、国際組織犯罪(麻薬、人身売買)等。

世界中で人道活動に従事する赤十字社の活動

 ⽇本⾚⼗字社は、災害や感染症等の発⽣時とその後の「緊急救援→復興⽀援→開発協⼒」という『災害マネジメント・サイクル』全体にかかわる⽀援をしています。辻⽒はこの中でも「復興⽀援」、「開発協⼒」を中⼼とした活動に従事し、インドネシアで発⽣した「スマトラ島沖地震・津波災害」(2004年)、ネパール地震(2015年)の復興支援事業に携わりました。

▲ネパール大地震の被災地にて。住民が主体となって
地域のハザードマップを作成(提供:日本赤十字社)

 ネパール地震を例に挙げると、被災地に物的⽀援をするのではなく、⽀援者として地域住⺠の話し合いの仲介、作業の指導や⼈材育成のサポ ートをします。これが⾚⼗字社の「復興⽀援」、「開発協⼒」です。具体的には、地域コミュニティを主体にした⾃主防災組織づくり、⾃主防災組織による危険な場所の修復作業、減災につなげる活動としてハザードマップの作成や耐震性のある家づくり、そして減災啓発活動として⾃然災害に備えた訓練や衛⽣・保健の指導などです。

 
世界から日本国内へ~地震大国における防災・減災活動
 これまで辻⽒は、「難⺠保護活動」や「災害復興」、「開発協⼒」といった活動を世界を舞台に⾏ってきましたが、今年4⽉より、活動のベースを国内に移し、⽇本国内の「防災・減災プログラム」の全国展開に従事しています。
 
 活動の主役は、地域のコミュニティと住⺠⾃⾝です。住⺠一人ひとりの⼒は⼩さくても、コミュニティが⼒を合わせて活動を進めれば、共に助け合うことができるようになり、住⺠が主体で活動ができるようになれば、災害時に⾃ら予測し、対応し、回復して前進することが可能になります。「地域のコミュニティと住⺠⾃⾝が危機に際しての原動⼒になる」ということは全世界共通で、実際に1995年の阪神淡路⼤震災の経験から証明されています。⾚⼗字の開発協⼒のひとつである「⾃然災害や疾病に強い地域づくり」を⽬指し、この活動を継続しています。
 
 
事前の備えで『いのちを守る』を根付かせる
 また、災害や疾病から命を守るためには、「⾃らの命と健康は⾃分で守る」という意識を一人ひとりが持って備えることも⼤切です。そして、災害後の復旧復興においては、「より良い復興(Build Back Better)」(「仙台防災枠組み」※より)といって、単なる現状の復旧ではなく、より強い抵抗力を備えた復興を⽬指していく必要があります。
 
「事前の備えで『いのちを守る』を根付かせる」を⽇本⾚⼗字社の防災・減災事業のスローガンとして活動をすすめていきます。
 
 
※仙台防災枠組み
第3回国連防災世界会議(2015年3月14日~18日まで宮城県仙台市で開催)の成果文書である「仙台防災枠組2015-2030」は、2005(平成17)年の第2回会議(兵庫)で採択された「兵庫行動枠組」の後継となるものです。2030年までの国際的な防災の取り組み指針として、世界各国で仙台防災枠組に基づいた取り組みが始まっています。(仙台市ホームページ「防災環境都市・仙台」サイトより抜粋)

▲住民が協力し合い、減災活動を実施(提供:日本赤十字社)

▲住民による住民のための防災教育
(提供:日本赤十字社)

▲住民皆で話し合いながら地面に描いたハザードマップは紙に清書(提供:日本赤十字社)

<経済学部・FLP国際協力プログラム 林光洋ゼミ>
フィリピン・フィールド調査に向けた計画発表会

 続く4限⽬、経済学部・FLP国際協⼒プログラムの林光洋ゼミでは、 中央⼤学の先輩であり、現在は⽇本⾚⼗字社に勤務している辻佳輝⽒をお迎えし、フィリピン・マニラでのフィールド調査を含む研究計画の発表会が⾏われました。

 この発表会には、林ゼミの3年⽣を中⼼に、4年生、2年⽣も参加。林ゼミの3年⽣の学⽣たちから、フィリピンを対象にした研究のテーマ、仮説、リサーチ・クエスチョン、分析手法、調査⽅法、訪問先、論文構成などの報告が⾏われました。

 3年⽣は、防災、教育、保健医療、BOPビジネス分野の4班に分かれて、研究計画の検討を重ねてきました。前週には、アジア・コミュニティ・センター21(ACC21)の代表理事 伊藤⽒と広報担当の辻本⽒にお越しいただき、各班の発表を聞いていただきました。そこで指摘いただいた提案、改善すべき点などのアドバイスを踏まえ、それぞれの研究計画の⾒直しや改善に着⼿した内容の発表となりました。

▲発表を前に少しずつ緊張感が増してきました

▲防災班のテーマは、「コミュニティ防災におけるソーシャル・キャピタルの重要性」

▲保健医療班は「フィリピンにおける妊産婦への保健医療サービス」がテーマ

▲計画発表会を終えて全員で。日本赤十字社の辻氏(前列中央右)、経済学部教授 林(前列中央左)


 辻⽒は、⻑年、国際協⼒の最前線で活動し、現在は⽇本⾚⼗字社で、防災・減災の分野における、地域のコミュニティへの防災 教育、啓発活動等、被災地復興に携わっています。

 4班の発表に対して、研究のテーマについてもういちど掘り下げてみることの必要性やリサーチ・クエスチョンの内容、インタビューのアポイントメント⼿配(インタビュー先の選定、話を聞く順番、マニラの交通渋滞の考慮)等、具体的な指摘とアドバイスをいただきました。


 
 発表した学⽣たちは、この助⾔を熟考し、彼らの現地調査を含む研究プロジェクトの実施を⽬指していきます。学⽣たちの視野がより広がり、現地調査の実施に向け、計画の⾒直しや修正すべき点など、⼤きなヒントを得る機会となったようです。

■辻 佳輝(つじ よしてる)氏  プロフィール■

【学歴】
 1992年:中央大学法学部法律学科卒業、1995~97年:国際大学大学院国際関係学研究科修士課程修了
【経歴】
●1992年12月~94年12月:青年海外協力隊に参加(太平洋州ミクロネシア連邦)
●1997年~2000年:国際協力機構(JICA)無償資金協力調査部調査第1課
●2000年~05年:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
・2000年4月~01年12月:在イラク・バグダッド事務所
・2002年1月~05年10月:在マレーシア・クアラルンプール事務所
●2005年10月~08年8月:外務省・中東アフリカ局中東第1課及びアフリカ第1課
●2008年~現在:日本赤十字社
・2008~11年:インドネシア(アチェ州)に駐在(日本赤十字社スマトラ島沖地震・津波災害復興支援事業現地代表)
・事業局国際部開発協力課長を経て、2019年4月~:事業局救護・福祉部防災業務課長

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