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05 REPORT

第11回IW実施報告◇経済学部 特別公開授業 国際開発論(林光洋) 「途上国開発の現場:ウガンダ、ナイジェリアにおける技術協力の事例から」

2020年03月31日

インターナショナル・ウィーク   第11回 アフリカ・アジア諸国

▲学生時代は林ゼミの中でもアクティブに活動していたという石川氏

 経済学部では、3年次以上を対象に途上国の開発を学ぶ講義『国際開発論』(担当=経済学部教授 林光洋)を開講しています。この講義では、開発経済学をベースに、途上国の社会・経済発展、格差・貧困問題等について学際的に開発を扱っています。
 2019年12月10日(火)3限目、多摩キャンパス7号館7102教室にて、国際協力や途上国支援に対するコンサルティングサービスを提供する企業、株式会社JINより、事業部コンサルタントの石川 渚氏をお招きし、特別公開授業「途上国開発の現場:ウガンダ、ナイジェリアにおける技術協力の事例から」を開催しました。この授業は、本学のインターナショナル・ウィークのイベントの1つとしても実施され、本講義の履修者に加え、他学部からも途上国開発や国際協力に興味を持つ学生などが多数出席しました。
 
 石川 氏は中央大学経済学部国際経済学科を2009年に卒業。在学中には、林光洋教授の元で学びました。卒業後は、青年海外協力隊の隊員としてザンビア共和国に派遣され、エイズ教育を中心に村落開発の分野で3年間活動しました。その後は世界保健機関(WHO)のインターン(結核対策)、イギリスの大学院(ロンドン大学衛生熱帯医学大学院・途上国の公衆衛生コース)を経て、2015年から株式会社JINに入社し、JICA(国際協力機構)の技術協力プロジェクトを中心に活動しています。

 今回の授業では、石川氏が開発コンサルティング企業の一員として国際協力・国際開発に携わり、アフリカ地域で実際に実施している技術協力について、現場での取り組みや想いなどを語っていただきました。
 
以下で、講義の様子をご紹介します。

国際協力を仕事にする~開発コンサルティング会社とは

▲ウガンダでの農業指導の様子。石川氏は現地の人たちと共に作業を進めます(提供:JIN)

 石川氏が開発コンサルタントの道を目指すきっかけは、大学時代、経済学部の林光洋ゼミナールに入ったことに始まります。ゼミでは、輪読、現地調査、論文執筆、その他さまざまな活動から、国際開発とは何か等、多くのことを学び、さらにさまざまなゲストスピーカーによる講義を聞いて、「開発コンサルティング」という仕事の存在を知り、国際協力を生業にする夢を広げていったそうです。卒業後、JICAの青年海外協力隊に合格してザンビア共和国に赴任し、コミュニティ開発隊員としてHIV・エイズに関わる活動をします。その後WHOでのインターン、イギリスの大学院留学を経て、2015年に株式会社JINに就職しました。
 
 株式会社JINは、国際協力の分野で活動する開発コンサルティング企業です。そのような企業には、ハード系(インフラ・都市開発など)、ソフト系(公共政策や人間開発など)がありますが、JINはソフト系の企業で、主にJICAのODA(政府開発援助)案件を扱っています。
 石川氏は、学部のゼミではマイクロファイナンスを研究していましたが、青年海外協力隊時代にはエイズ教育やコミュニティ開発に関わる活動を行い、大学院時代には公衆衛生の知識を学んだことにより、現在は、保健、社会開発、農村開発の担当になりました。プロジェクトでは、データ分析や事業効果測定といった作業もありますが、それには経済学部で身に付けた知識やスキルがとても役立っているそうです。学部、特にゼミで学んだ開発経済学の知識、そして青年海外協力隊の現場と大学院で学んだ保健の知識、この2本を柱として活動を進めているそうです。現在はウガンダとナイジェリアの2案件を担当しています。数年という長期間、現地にずっと滞在し続けるJICAの駐在員や長期専門家とは異なり、1年のうち7~8か月間程度、2つの国と日本を何度か行ったり来たりしながら活動を進めています。

「北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト」

 2015年11月から5年間の計画でスタートした、「北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト(Northern Uganda Farmers’ Livelihood Improvement Project:NUFLIP)」は、5期目の最終年になりました。活動を実施するウガンダ北部のアチョリ地域では、反政府組織と政府軍の内戦が20年以上続き、多くの子どもがさらわれて少年兵となったり、民家集落が焼かれたり、住民の9割以上がキャンプ生活を余儀なくされたりしました。2006年の停戦後は、住民が自分の土地に戻りました。しかし、そこは農業に適した肥沃で広い土地であったにもかかわらず、多くの住民が農業で生計を立てようにもうまくいかない状態が続いています。それが60%という高い貧困比率につながり、国の開発政策の重点課題となっていました。

 プロジェクトでは、生産した農産品を売るための「市場志向型農業」と生活の質の向上を目指す「生計向上アプローチ」に取り組んでいます。
 具体的には、農業での収入増加、家計の管理、食生活の管理、家族の労働分担等の知識とスキルを地域に定着させることを目指しています。プロジェクト・チームは、市場志向型農業普及を担当する専門家、野菜栽培を担当する専門家、生活の質向上とジェンダーを担当する専門家、栄養改善を担当する専門家、マーケティングを担当する専門家から成り、それぞれの専門的技術を持ち寄り、融合させ、プロジェクトを実施しています。プロジェクト終了後も、成果を現地に根付かせることができるように工夫しているそうです。
 地域住民を少人数の農家グループに分け、1年間かけて研修をし、2年目以降は1年目の状況を考慮しながら、内容や回数も変えていきます。「市場志向型農業」では、市場調査の方法、市場を意識した品種の選び方、収穫量が増すような適切な栽培と管理などを教えます。「生計向上アプローチ」では、毎月の収穫量から市場用と家庭消費用を分けて保管し、それぞれの在庫期間をわかりやすく示すことを目的にした食料在庫カレンダー、販売時期および家計支出を把握することのできるカレンダーの作成方法を教えたり、身近な食料を使った3色食品群カードを用いての栄養指導を行ったりしています。

 この4年間の取り組みにより、プロジェクトに参加した住民たちの中には、年間を通じて、食料不足と現金不足に陥らないように管理ができる家庭や、これまでの自転車操業生活から抜け出せる人も増えてきました。しかし、2期目終了時に農家として野菜栽培を続けられたのは40%でした。農薬の使用説明書が読めないとか、高額な推奨種子を買うことができない等、さまざまな要因があるようでした。一方、プロジェクトとしては、いったん農業を辞めてしまった人が、野菜栽培技術や家計管理のスキルを身に付けて成功しているプロジェクト参加者たちを見て、自分もやってみようと思えるような機会創出に努めています。最終期には、県政府・農業省が持続性をもって継続していけるかどうかが課題で、そのための研修マニュアルの作成をすすめています。

▲良い種子を使い、適切な肥料や農薬管理を実施した栽培により立派な野菜を収穫することができました(提供:JIN)

▲ナイジェリアで実施しているプロジェクトでは、栄養改善のための能力強化につながるさまざまな指導を行っています(提供:JIN)

「ナイジェリア国 連邦首都区における栄養改善能力強化プロジェクト」

 ナイジェリアでは、5歳未満児の慢性的な栄養不良の割合がとても高いという栄養課題を抱えています。政府は対策をとっていますが、その改善に至っていません。そのような状況を踏まえて、2019年2月から「ナイジェリア・連邦首都区における栄養改善能力強化プロジェクト」をスタートしました。
 ナイジェリアのプロジェクトでは、栄養改善に焦点を当てて、現地で入手可能な食材の働き、3色食品群、食事のバランスなどに関する研修を実施しています。
 研修で3色食品群カードを用いて栄養バランスを学んでもらったり、栄養吸収率の高い調理法を習得してもらったり、不衛生な手で子どもに食事を与えてしまう等を改善するために、保健衛生の知識を身につけてもらったりしています。栄養改善のためには、農業の生産、収穫後の管理、現金の不足の側面に注意を払う必要があり、収穫量向上、栄養配慮の作付け、と備蓄管理(食品加工や収穫後処理を含む)、換金作物の栽培といった課題にも取り組んでいます
 まだプロジェクトがスタートしたばかりであるということもあり、現地の実情に合うアプローチ方法を構築するところから始め、内容を充実させながら、より効果の大きい研修を実施していく予定です。

▲3色食品群を学ぶ研修。目で見て理解しやすい教材を使って、大人もゲーム感覚で楽しみながら栄養の基礎知識を学ぶことができるようにしています(提供:JIN)

終わりに

 講義のまとめとして、石川氏は、「保健分野の専門知識やマニュアル的なノウハウを持ち合わせていても、それらが現地の人たちに当てはまるとは限らないし、当てはまったとしても、受け入れてもらえるとは限らない」と述べました。大切なことは、まずは、現地の生活習慣や文化を理解することだそうです。現地の人々をしっかり観察して、相手の生活状況を把握し、その背景にある価値観を確認した上で、活動内容に反映させていくことが必要なのだそうです。そのために、一緒に畑を耕し、手作業だけで土地を耕すことの大変さを身をもって理解しようと努めることもするそうです。「困ったら、1日でも2日でも現場に行って視察し、確認してくるように」と会社からも言われているそうです。
 「学部や大学院で学び得た知識がそのまま彼らに受け入れられるわけではない。自分の専門を持ちつつ、現場で現地の人たちと交流して信頼関係を得ることで、彼らの考え方や価値観、生活環境を理解できるようになる。そこが私たち開発コンサルタントの仕事のスタート地点になる」と、講義を締めくくりました。

<経済学部/FLP国際協力プログラム 林光洋ゼミ 座談会>
教えて先輩! ~後輩たちの疑問や悩みにお答えします!

 続く4限目には、経済学部・FLP国際協⼒プログラムの林光洋ゼミの大先輩であり、株式会社JINに勤務し、ウガンダやナイジェリアなど、アフリカ地域で実施しているJICAの技術協力プロジェクトに携わっている石川 渚 氏をお迎えし、座談会が開催されました。
 林 光洋ゼミナールの3年生を中心に、2年生と4年生も出席しました。座談会では、学生からの素朴な疑問や悩みや不安について石川氏が回答する形ですすめられました。大学時代の過ごし方、アフリカ、現場での活動、国際開発・国際協力を仕事にすること、生き方、林ゼミの思い出等。笑いを交えながら親身に答えていただきました。
 ここにその一部をご紹介します。

教えて先輩! ~現役の林ゼミ生からゼミの卒業生、石川先輩に質問

[青年海外協力隊について]
・青年海外協力隊に必要な資質・能力…現場のニーズを把握できる力と柔軟性が必要。
・アフリカは大変?…アフリカの、特に農村部では、生活インフラが整備されていないところがほとんど。電気が通っていたとしても、水は井戸から汲んで運び、トイレは地面に穴が掘ってある程度だから、多少のサバイバルな度胸は必要。でもJICAでは危険な場所への派遣はされないので安心です。
・大変だったことや残念だったこと…HIV感染症・エイズ予防の活動にやりがいを感じたが、地域の環境・状況でやれることに限りがあったのは残念であった。
・よかったこと…現地の人(住民)に受け入れてもらい、現地の人として生きることができたこと。
 
[国際協力の仕事、 開発コンサルティングの仕事について]
・国際機関への入職は難しい?…日本人が正規の職員として働くことは簡単ではない。ただし、35歳までならJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)で国際機関の仕事を経験することが可能。JPOを経験してから正規の職員になっていく人は多い。
・女性に不利?…出産・育児は不利なイメージもあるが、国際機関、国際協力に関連した組織・団体には女性が勤めやすい環境を整えている所もあって、子連れで海外に行って仕事をしている人もいる。
・現地の活動で大変なことは?…現地の人から賛同を得られなかったり、反感を買われたりすることがある。それには、私たちが住民との交流が少ないとか、熱意が足りないなどの理由がある。現地の人たちと真剣に向き合って説明したり、行動を共にしたりしながら信頼関係を築いていくことが大切。
 
[国際協力人材に必要なスキルや能力]
・語学力はどの程度必要?…学生時代に英会話学校に通った。リスニングの力が必要です。
・必要なスキル…
相手を理解する力、体力、精神力。実力は経験しながら身に付いてくる。しかし、海外活動が続く時期には自己管理が大切。国際協力の活動には、ここまででいいという上限も終わりもなく、途上国での生活はサバイバルな面もあるため、体調を崩すと、メンタルにまで及びがちになる。体力が本当に必要。
 
[アフリカについて]
・理想とするアフリカの開発は?…内部からの力(内発的な力で)でアフリカ独自の開発ができたらよいと思う。ビジネスは住民のニーズに合うものを現地の人たちと一緒に考えていったらよいと思う。
・アフリカにあって日本にないこと…日本は家族やコミュニティの絆が薄いように感じられる。アフリカには助け合いのネットワークがあって、近所の人たちをはじめ、地域のさまざまな人たちが子どもの面倒をみて、育てている。地域の中で生きることが素晴らしくて、うらやましさもある。
・アフリカの宗教…さまざまな宗教がある。宗教は違っていてもコミュニティの仲間として一緒に暮らしている。

[学生時代について]

・山田晃一先輩(石川氏と同期、三井物産勤務。2019年9月に特別公開授業)から、
林ゼミの同期には元気な女性が多かったと聞いた…
私は勉強することも好きだったけれど、ゼミの活動に参加するのが本当に楽しかった。輪読や論文執筆に加えて、ゼミのメンバーと一緒に潮干狩りや旅行に行ったこともあります。フィリピンの研究プロジェクトでも、現地調査に出る前の準備で忙しい時期にも、現地調査が終了して論文執筆に集中している時期にも、ゼミのメンバーで遊びに行ったりで食べに行ったりして、メリハリを付けていた。苦しかったことも、楽しかったことも、うれしかったことも、共に経験することができたので、今でも仲がよく、つながっている。
・林ゼミで学んだこと…最初は、とがっていました。でも正直に仲間と接することができるようになってからは変わることができたと思う。フィリピン現地調査のアポ取りで、初めて海外へ英語で電話をした。そのようなチャレンジすることの大切さを学べたし、ゼミの論文を英語で書き上げらることができたことは、私の仕事の基礎になっている。学生のときに苦労してやり遂げたことは自信につながる。
・今やっておくべきこと…英語で執筆するグループ論文は悔いのないように完成させること。時間があるのは今のうちだから試してみたいことにチャレンジしてみよう。インターンをしたり、バックパッカーでいろいろな場所を旅したり、仲間との卒業旅行をしたりしたことは、とても良い経験になった。
 
[そのほか]

・おすすめの国は?…学生時代の休みの時期は海外ばかり行っていた。アジアの国々もよいけれど、今はアフリカを勧めたい。ダイナミックに経済成長する都市部も、人々の温かさにふれることのできる農村部も、広大なサファリも楽しめることができるから。
・大学院のこと…ロンドンでの大学院時代は、資金不足、英語力不足、新しい分野の知識不足もあって、学費・生活費を捻出したり、授業についていったりするのが本当に大変だった。教室・図書館・寮の3地点を往ったり来たりする勉強漬けの毎日を過ごした。
・これからの目標は?…プロジェクトを動かせるようなリーダーになりたい。
・理想のリーダー像は?…メンバー1人ひとりの性格や力を把握し、メンバーが実力を発揮しやすい環境を作ることのできるリーダー。現在のプロジェクトのリーダーは大きな器の持ち主で、皆が気持ちよく仕事ができるように采配し、チームの皆に仕事を任せて、失敗の責任はすべて自分が引き受ける、というようにしてチームを強くしている点ですごいと思う。
・良いチームを作るためには…メンバーそれぞれの異なった意見がある中で、共通の目標を設定し、そこに向かいたいと思ってもらえるような意識づけをすること。ゼミのチームでも同じようなことが言える。 皆さん頑張ってください。


<石川 渚(いしかわ なぎさ)氏 プロフィール>
神奈川県横浜市出身   
・2005~2009年:中央大学経済学部/林光洋ゼミ
・2011~2014年:青年海外協力隊/ザンビア共和国
        で活動(村落開発普及員)
・2014年:WHOインターン(結核対策分野)
・2014~2015年:イギリスの大学院へ留学
        =ロンドン大学衛生熱帯医学大学院
         (途上国の公衆衛生コース修了)
●2015年~ : 株式会社 JIN入社
・2015~2020年:ウガンダ共和国=北部ウガンダ
    生計向上支援プロジェクト(栄養改善担当)
・2017年:南スーダン共和国=スポーツを通じて
    の平和構築の取り組み(事業効果測定担当)
・2019年~現在:ナイジェリア連邦共和国=連邦首都区における栄養改善能力強化(保健・衛生・事業効果測定担当)

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