03 RESOURCES & CHANCES

法学教室

「専門知識を英語で学ぶ」の中でご紹介している「英語で学ぶ日本法」には、もう一つ大きな効果があります。それは、こうしたクラスを日本人学生と留学生が同時に学ぶことによる理解の深化です。

そもそも、ある国の法制度は言語と結びついています。日本語は日本法の言語であり、英語は英米法(ここでは、イギリスを発祥の地として、アメリカなど旧イギリス植民地を中心とする世界に広がる法システムの総称として、この言葉を使います。)の言語ですから、「日本法を英語で学ぶ」ということは、実は簡単なことではないのです。たとえば、日本法の「契約」という概念と、英米法の「contract」という概念は極めて近いものですが、完全に一致してはいません。やや専門的になりますが、英米法のcontractの成立要件には、「約因」(consideration)という日本法にはないものが含まれている等の差がありますし、信託のように日本では「契約」の一種とされるけれども、英米法ではcontractとならないもの(trust)もあるのです。

すると、日本法の条文や法律文書にある「契約」という言葉は、通常は「contract」と訳することができますが、そこでは「厳密に言えば契約とcontractは違うもの」という前提知識が必要ですし、さらにいえば、ある場面ではcontractと訳してはならないのです。 このようにしてみると、英語で日本法を教え・学ぶに際しては、まず、その担当教員が日本法だけではなく英米法をも理解していることが必要です。しかしさらに、英米法系に属する自国法を専攻してきた留学生と日本法を専攻してきた学生が、同じ授業に参加して、多方向のディスカッションを行えば、参加者全員が、より深くまた実地に応用できる理解を得ることができるでしょう。