02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソン インタビュー vol.005

アナウンサーという立場から学んだ、新社会人として輝くコツ

グローバルパーソンインタビュー vol.005

齋藤 安弘さん | パーソナリティ/元ニッポン放送アナウンサー

法学部 法律学科 1964年卒業
[掲載日:2015年8月3日]

私がパーソナリティに抜擢された理由

 『オールナイトニッポン』の担当になったのは、『ニッポン放送』に入社してから3年目のことでした。週6日間を6人のパーソナリティで務めることになり、ベテランの方々が名を連ねるなか、当時26歳の私はメンバー最年少で抜擢されました。最近になって当時の編成部長に話を伺う機会があり、なぜ私を起用してくださったか訊ねてみたんです。そうしたら、「お前はね、明るかったんだよ」と言われました。明るいだけで、目立った才能はありませんでした。それでも、“明るい”というのは大事ですね。どの企業でも、そうだと思います。仕事ができても、暗くて周囲とコミュニケーションが取れないのではいけません。これから皆さんが社会に出た時、人とどう接していくかということ、それから、いい上司を見つけることは一番のポイントになるでしょう。どういう人と出会うか、その人が自分にとって合うか合わないかは重要です。

気持ちのコントロールが、仕事へのモチベーションを保つ

 我々アナウンサーは自分が担当した番組を長く続けるために、知恵を働かせる必要があります。では、どうしたらよいか。例えばリスナーや視聴者のためにサプライズを行うとします。しかし、例えば週5日間放送する番組でしたら、その5日間すべてにサプライズがあると、それはサプライズではなくなってしまう。5日間のうち2日間を、「なるほど!」と思ってもらえる放送ができたら御の字です。放送する側も、調子がいい時とそうでない時がありますから。一般企業で働く場合も、自分の気持ち、やる気を維持するために計算する必要があるでしょう。
 また、企業は人を見ています。限られた人数で仕事を受け持っているわけですから、一人ひとりの社員に求められる才能・能力は大きいです。逆に言うと、だから面白みがあるわけです。
 『ニッポン放送』の社員の中には大学で生物工学を学んできた人が、番組を作っているケースもあります。その人には自分の専門分野を活かす道もあったでしょうが、ラジオが好きだからこの仕事をしているんでしょう。業種は異なっても、自分の身をどう処していくか考えることは大切。メディアに進みたいと思っている方なら特に、自分の人間性を豊かにすることを考えましょう。
 求められるアナウンサーになるために、「人間性を豊かにする方法を考える。それしかない。引き出しをたくさん設けること」とおっしゃったアナウンサーがいます。また、別の方は「お米のようなアナウンサー」が求められるアナウンサーだとおっしゃいました。お米を嫌いだという人は、あまりいませんよね? 毎日見ていても嫌われない必需品。そういうアナウンサーになったらいいということです。

社会人としての準備―「浅くていい。だから、幅広い知識を!」

 近年はテレビやCMのコピーが日本語をダメにしているのでは、と感じます。“やばい” “まじすか”などテロップで出てきますが、使うべき言葉じゃない。でも、そういう言葉は、あっという間に広がってしまうんですよね。ですからメディアを目指そうと思ったら、日常の言葉から気を付けていただきたいです。幅広く、浅く、でいいんです。浅くていいから、幅広い知識を身に着けること。そのなかで、得意なジャンルを作れれば、道を開く一つのキッカケになると思います。一般企業でも、その人がどういう人格で、何をコンテンツとして蓄えているかは評価の対象になります。メディアに進む、進まないに関係なく、これから世の中に出ていく学生の皆さんには、「とにかく人間的に中身を豊かにすること」と言いたいです。

プロフィール

齋藤 安弘
パーソナリティ/元ニッポン放送アナウンサー
法学部 法律学科 1964年卒業

1940年生まれ、神奈川県出身。高校生時代は放送部、中央大学在学時代は放送研究会に所属。1964年に中央大学法学部法律学科を卒業し、『ニッポン放送』にアナウンサーとして入社。1967年10月の放送開始以来、40年に渡って放送を続けるラジオ番組『オールナイトニッポン』の初代DJ(パーソナリティ)を務めた。

前へ

次へ