02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソン メッセージ vol.043

世界で戦うための武器

板越ジョージさん
国際経営コンサルタント・海外進出プロデューサー

中央大学専門職大学院戦略経営研究科 修了
[掲載日:2014年10月14日]

板越ジョージさん

高校卒業後、1988年に単身米国に渡り、カネ無し、コネ無し、英語力無しの状態から、1995年にインターネット・広告代理店事業の Itasho Americaをニュージャージー州に設立しました。 それから事業を順調に拡大し、99年にはベンチャーキャピタルや伊藤忠商事等から740万ドルの投資を集め、日本人最年少でNASDAQ株式公開直前まで漕ぎ着けましたが、ネットバブルの崩壊と9.11による風評被害によってあえなく破産。失意のどん底から7年、紆余曲折の末、何とか立ち上がり、現在は改めて事業を軌道に乗せることができました。

その後、2011年に中央大学ビジネススクールでMBAを取得。現在はNYでビジネスを繰り広げる傍ら、さらに中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程で学んでいます。

確信すると同時に走り出す――3カ月の集中と結果

中学の3年間をジャニーズJr.として過ごすものの、その後ジャニーズを辞め、3カ月猛勉強した末に第一志望の高校に入学しました。しかしそこで無為な時間を過ごしてしまい、大学受験に失敗。一念発起して今度は米国留学を目指し、バイク急便の仕事で死に物狂いになって、3カ月で100万円を稼ぎました。
何か大きなことがしたかった私は、日本では芽が出ないと早い段階から確信し、バイク急便という過酷な労働にも耐え、稼いだ資金で単身渡米しました。
その後、語学学校に9カ月通い、何とかTOEFL500点を取得してアメリカのサウスカロライナ大学へ進学。学費が尽きれば帰国して、また3カ月バイク便で100万を貯める――そんなことを繰り返していました。
在学中は安価で単位を取得しやすい東欧やロシアに短期交換留学し、単位互換で大学を4年で卒業。一旦は政府機関に就職しましたが、そこに自らの活路を見いだせず、NYの新聞社に就職。編集を希望したものの、広告営業にまわされました。ところが、そこで面白いくらいに広告が取れ、気がつくと3カ月で社内NO.1の売上になっていました。
その翌年はインターネット元年の95年。Yahoo!ができ、Amazonができ――私はこの波に先駆けて乗ることができ、26歳で独立し、年商1億の起業家になり、30歳には自叙伝を出すこともできました。

負けても決してめげない

ビジネスが軌道に乗り、日本人最年少で米国株式市場上場寸前まで行った33歳の時、突然の転落が起こりました。2000年から始まったネットバブルの崩壊に続き、翌年9月11日の、忘れもしない9.11事件。
私の会社は事故が起きた世界貿易センタービルのすぐ近くにあったのですが、幸い建物自体の損傷は免れました。しかしその日を境にNY関連の投資が引き、会社は大きな打撃を受けました。数年前からアニメブームを作り、ブックオフの米国誘致などを行っていた矢先の、思わぬ風評被害でした。
それから7年間は、本当に辛い日々の連続でした。個人で抱え込んだ数億の借金、結果的に迷惑をかけてしまった多くの人々への詫び――。
復活をかけてNYでフリーペーパーを作ったり、イベントを企画したり、キャラクターグッズを販売したりして、何とか数億の借金を返済し……。
――そして、猛烈に勉強がしたくなったのです。

中央大学との縁

ちょうどそんな時、当時コンサルを一緒にやっていたブラザーの元会長だった方から、中央大学でビジネススクールを開校するという話を聴きました。縁があったら学んでみたいと思っていたところ、給付奨学金をいただく事ができ、それをきっかけに2期生で入学しました。
一度勉強し始めたら楽しくなり、在籍中は2年間でNYと日本を20往復し、卒業しました。その後、当時大学院総合政策研究科長の大橋教授と出会い、「良かったらうちに来て勉強しないか」とのオファーを受け、博士後期課程に進むことを決意。論文を書いたところ、これが当たり、本になりました(『結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?』(ディスカヴァー21、2013年)。本書は、日経新聞の書評にも掲載されました)。

第2回Work shop

第2回Work shop 情報社会と人間行動の変容@JaNet Hall in NYC

第2回Work shop

第2回Work shopでの中央大学学部生の発表模様

「根無し草」は評価されない

高校を卒業してからずっとアメリカだったので、日本で事業をすることにコンプレックスがありました。
米国ではDegreeがないと評価されないし、わかってもらえないのです。これは自分がコンサルやサポート、指南役といった職業を生業にしており、それなりの人たちを相手にしているからかもしれませんが、これから『グローバルに行こうよ』という人たちの道標になるには、“根無し草”では評価されません。自分のルーツを知らない、自分の国を持たない人はそもそも信用されないし、相手にされないからです。そこがしっかり証明できた上で、全てがスタートすると思っています。
日本人の中には日本の悪口を言う人がいますが、それでは信用されません。海外で活躍するには自分のルーツをしっかり持ちながら、誇りをもってそれを語るぐらいでないといけません。
結果私は、その“学びの場”に米国ではなく、あえて日本を選んだのです。
グローバルに活躍するからこそ必要になる日本人としてのアイデンティティーを、今後も大切にしたいと考えています。

板越さんの最新刊『クラウドファンディングで夢をかなえる本』(ダイヤモンド社刊)

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■プロフィール
1968年、東京生まれ。中学時代はジャニーズJr.に所属。高校卒業後、バイク便で留学費を稼ぎ、88年に単身渡米。サウスカロライナ大学国際政治学部卒業。95年に広告会社を創業し、7つの会社を経営するも、9.11の影響で倒産。現在は、米国進出企業のためのコンサル会社を営む傍ら、在NY日本人最大のNPOネットワークJaNetの発起人としてJaNet会館を運営している。2011年には、日米20往復し中央大学専門職大学院戦略経営研究科(中央大学ビジネススクール)を修了し、現在は、同大学院総合政策研究科博士後期課程在学中。在NY日本国総領事館海外安全対策連絡協議会委員、坂本龍馬財団理事。主な著書に、『結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?(ディスカヴァー21)』等多数。

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