02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソン メッセージ vol.022

アジアから世界へ。堅実に一歩ずつ事業を展開

鈴木 修さん | スズキ株式会社
代表取締役会長兼社長 南甲倶楽部副会長

中央大学法学部 法律学科 1953年卒業
[掲載日:2013年4月1日]

織機製造からオートバイ・自動車事業へ進出

鈴木 修 代表取締役会長兼社長

鈴木 修 代表取締役会長兼社長

私は大学卒業後、銀行勤務を経て、1958年にスズキ(当時、鈴木自動車工業)に入社しました。スズキは1920年に創業者である鈴木道雄が開発した織機を製造販売する鈴木式織機株式会社として浜松に設立されました。創業当時は日本の繊維産業が世界を席巻していましたから、鈴木式織機も順調に売り上げを伸ばしたようです。しかし、織機は耐久性抜群で代替需要を望みにくい商品であったため、会社の将来を思った創業者は自動車事業への進出を決意。1950年からオートバイの製造を始めました。1955年には、軽4輪乗用車「スズライト」(2サイクル360cc)も発売し、日本における軽自動車の先駆となりました。

その後1970年代に入ると、高度成長の流れを受けて自動車産業はアメリカへの輸出が急速に伸びていきました。しかし、対米自動車輸出自主規制が実施されたことにより、アメリカへの自動車輸出は割当制になってしまいました。当時スズキは日本の自動車メーカーの中で最下位の弱小企業だったので、当然対米輸出枠が割り当てられるはずもありません。そのため、アメリカでの勝負ではなく、「どこでも良いから一番になりたい」と考えました。

そこで1975年、まだ自動車メーカーがなかったパキスタンの政府と合弁で同国初の自動車工場を稼働させることにしました。1982年にはインド政府と国民車プロジェクトについて提携して生産を開始しました。

とにかく、どこかの国で1位をとりたいと無我夢中でやってきました。いわゆる海外戦略などという立派なものがあったわけではありません。ただ、クーデターが起きないような政治が安定した国を選ぶということは考えました。大事なことは、まず雇用を創出して、進出先の経済に貢献し、一般市民の生活を改善することです。あとは「一度決めたことはとことんやる」こと。どこへでも出て行ってチャレンジする精神が必要だと思います。

中東・西アジアも視野に海外展開を促進

現在は、インドネシア、ハンガリー、中国などでも合弁会社を設置していますが、このほどタイに初の100%出資の海外四輪工場をつくりました。ASEAN諸国間の貿易では関税が撤廃されているため、インドネシアの工場と部品を相互供給しても税金はかかりません。
タイで2モデル、インドネシアで2モデルをつくれば両国で4モデルを売ることができます。しかも部品を共通化すれば量産効果はさらに高まり、これを中心にフィリピン、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、マレーシアなどでも全部共通の部品で製造できることになります。軽自動車はアジア諸国の方々に好まれ地理的に近いこともあって、アジア市場には打って出やすいのです。今後は、東南アジアだけでなく、中東・西アジアも視野に入れた海外展開をしていきたいと思います。

マネジメント人材育成にも注力

私の故郷の飛騨では、冬の夜、よく杉の木が泣いていると言われる音が聞こえます。成長の早い杉の木は、雪が降り積もると、重さに耐えかねた枝が裂けてしまう。その音です。しかし、竹は節があるから積もった雪の重さにもしなって耐えるのです。成長に伴って節ができ、それがしっかりと支えているのです。

企業の成長も同じです。急激に成長してしまうと、竹の節の間隔が長すぎるのと同じで折れやすくなってしまいます。ですから、今後も確実に一歩ずつ前進していきたいと考えています。

現在、自動車、オートバイ、船外機をあわせると、世界150~160カ国に輸出をしています。こうして規模が大きくなるにつれ、粗製乱造にならないように、マネジメントする人材の確保がますます重要になってきました。その意味でも今後、人材教育にはとくに力を入れていきたいと思います。

プロフィール

鈴木 修
スズキ株式会社
代表取締役会長兼社長 南甲倶楽部副会長

1930年岐阜県益田郡下呂町(現下呂市)生まれ。53年中央大学法学部卒業後、銀行勤務を経て、58年鈴木自動車工業(株)(現スズキ(株))入社。2代目社長鈴木俊三氏の娘婿となる。63年取締役。常務、専務を経て78年社長就任。2000年から会長、08年には再び社長を兼務。自らを「中小企業のおやじ」と称し、徹底して「現場」にこだわる強いリーダーシップで世界22カ国に32の自動車、オートバイ、船外機を中核とした生産会社を展開。連結売上高は2兆5000億円。ハンガリー名誉総領事、「中央大学 箱根駅伝を強くする会」会長、南甲倶楽部副会長。

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