02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソン メッセージ vol.063

海外初心者だった柔道家が、初めてのロングステイを成功させた心得

江口 吹樹さん | 株式会社NEXT GROUP
海外事業部

商学部 会計学科 2012年卒業
[掲載日:2018年03月05日]

柔道一筋で、全国大会の常連選手だった学生時代。
外の世界を見る間もなく、稽古に没頭していた。
ところが、大学を卒業して社会に出たことにより、
情報を一気に吸収し海外へ目が向く。

26歳でサモアに渡り、2年間、柔道の指導に挑戦した江口氏。
「学生たちには早い時期から社会に接し、将来の選択肢を増やすことを
お勧めしたいです。経験に基づく意見は強い」

と、これまでを振り返る。

そして、「実は、南の島が好きだったんだと気が付きました」と、
2018年よりインドネシアで働くことに決めていた。

学生時代は柔道漬け。就職して、外の世界を知る

 柔道を始めたのは、7歳の時。身体が大きかったので、スカウトされたんです。小中高大と柔道の全国大会に出場し、小学生時代には全国1位の成績も収めました。中学、高校、大学とスポーツ推薦で入学し、部活と授業を往復する毎日。柔道と授業が第一優先の生活だったので海外に対する意識もなく、パスポートは大学4年生の時に親と海外旅行をすることになって初めて取得しました。

 卒業後は貿易関係の会社に就職。国内の営業職でしたが、社会人になって柔道以外の世界に触れたことで、「外国の社会はどうなんだろう」と興味を持つようになりました。その後、会社を退社して独立行政法人 国際協力機構(JICA)のJICAボランティアに応募。青年海外協力隊として柔道を指導するために、サモアへ派遣されることが決まりました。

異国の地で自分の意見を聞いてもらうには、まずは信頼関係

 サモアへ行くまで、海外に長期滞在した経験がなく、どんな国かもよく知らなかったので、不安がありました。実際に行ってみると、開発途上の国ということもあってインフラが整っておらず、停電や断水は少なくありません。それでも、柔道でメンタルが鍛えられていたおかげか不便さは気にならず、「海が綺麗でのんびりしていて、いい人たちが多い」という印象を持ちました。

 その土地が肌に合えば、精神的な強さに関係なく過ごせると思います。私の場合はマイナスなことを思案するのが苦手で、いつもワクワクする楽しいことを考えて行動しています。そういった意識が持てれば、どこの国でも楽しめるというのが私の意見です。

 サモアと日本の異なる点はたくさんあります。特に印象深かったのが、時間の使い方です。日本では1日24時間を最大限に活かそうとせわしなく動いていますが、サモアはその真逆です。南の島の“あるある”で、1日のんびり過ごしてストレスフリーな人が多い印象を受けました。しかし、悪いところもあります。時間を守らない。私がサモアへ教えに行った柔道という競技は、時間やマナーが厳しいです。私はサモア柔道協会からJICAを通じて、まだ脆弱であるサモアの柔道の競技レベルを向上させ、オリンピック強化選手15名を育成するといった要請を受けていました。

「オリンピック強化選手を育てるのであれば、規律も教えなければ」。

 そう思って厳しく指導を始めたのですが、選手たちは朝6時半スタートの稽古に対し、8時、9時に道場へやってきます。悪びれもせず、「おはよー!」と、明るい感じで。これではいけないと思い、1回、厳しく注意をすると、練習に来なくなってしまったんです。このストライキは1か月近く続きました。練習に戻ってもらうまで、すごく大変でしたね。上から押し付けるだけでは駄目だと分かり、毎日生徒の家に遊びに行き、練習をするわけでもなく「遊んでよ。サモアのことを教えて」と距離を縮め、友達になりました。
 そこからやっと信頼関係ができて、厳しいことを言っても理解してもらえるようになりました。技術を見せるだけでは、心を開くことができませんね。友達になったことで、彼らの中で「強いけれど信頼できない人」から「強い、かつ信頼できる人」に代わったのではないでしょうか。
 この信頼関係が築けたことで、サモア柔道の代表監督としてサモア選手をリオデジャネイロ五輪に連れて行けたのだと思います。国際大会で成績が残せるようになり、現在は東京開催の五輪に出場を予定しています。

相手に入り込んでいく勇気があれば、語学力は自然と身に付く

現在はインドネシア・ロンボク島に赴任中。現地スタッフとは家族ぐるみの付き合いで、生まれた赤ん坊を紹介されることも!

 青年海外協力隊の経験で身に付いたのは、生き抜く力。日本では手を伸ばせば手に入るものでも、サモアでは自分で作らないとない。工夫して日々を過ごすので、考える力がつきました。
 それから、外国人と話す時に物おじしない精神も備わりました。
 サモアの公用語は、英語とサモア語です。サモアに派遣された最初の半年は、「調べてから言おう、話せるようになってから話そう」と思ってテキストで勉強していたのですが、いっこうに上達しませんでした。腹をくくって、満足に話せないままでも現地の人たちと過ごすようになってから、一気に語学力が向上しました。単語を並べるような片言だったのが、今では思ったことをパッと伝えられます。海外に来たのなら、話せなくても現地の人と一緒に行動することが語学習得のコツだと感じます。

 サモアから帰国した後は、「海外に住みたい。南の島が自分に合っている」と思い、インドネシアに赴任できる株式会社ネクストグループに就職しました。今度はインドネシア語を一から覚えなければいけませんが、サモアに派遣された時と違い、「十分な会話ができなくても、どうにかすぐ伝えよう」という感覚に代わっています。
 現地の人たちとの交流が楽しみです。言葉を早く覚えるには、友達になる力は重要ですからね。サモアで選手たちにストライキを起こされて、そう感じました。人とすぐに仲良くなれる人は、海外での生活に向いているかもしれませんね。

社会での良好なスタートを切る第一歩は、経験に基づく選択肢の用意

 学生時代を振り返って今思うのは、留学をしておけばよかったな、ということ。単純に海外が好きというのもあるのですが、学生の時には好きだと気が付いていなかったので、そう考えると視野を広げる心がけは大事かと思います。たくさん見ておけば、選択肢が増え、選ぶことも早くできるようになると思います。

 就職についても、募集内容を見てイメージしてみても、実際はやってみないと合うか合わないか分かりません。
 「とりあえず、挑戦してみて」と言いたいところですが、そうもいかないでしょうから、「インターンシップなど経験して情報を集めておいて」と今の学生たちに言いたいです。就職活動の面接でも「こういう事がやりたい」だけではアピール力が弱いですが、「こういう事をしてきて、こういう事がやりたい」と経験に基づく話であれば現実味があり、面接官も「経験して思ったんだ」と納得してくれるはずです。

 僕が言うのもなんですが、学生のうちは見えていないものが多いので、学生のうちにインターンシップなど積極的に社会を経験した方が、いろんなものが見えてくるのではないかと思います。

■プロフィール■
株式会社ネクストグループ 海外事業部
2016年リオデジャネイロ五輪 柔道男子サモア代表監督
江口 吹樹(えぐち ふぶき)さん

1989年生まれ、東京都出身。7歳から柔道を始め、小学生で全国小学生学年別柔道大会に優勝、日本一に輝く。中学、高校、大学までスポーツ推薦合格。中学、高校、大学と全日本柔道選手権大会に出場し、中学校では全国5位を記録。大学卒業後は一般企業に就業。その後、2015年から2年間、独立行政法人 国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊に参加し、サモアへ。柔道の指導者として、オリンピック強化選手を育成したほか、柔道人口の拡大に向け小学校訪問や道場で約60名を稽古するなど、多忙な日々を過ごした。2016年リオデジャネイロ五輪では、柔道男子サモア代表の監督を務める。2018年からはサモアでの経験を生かし、株式会社NEXT GROUPに就職。インドネシアで観光業、日本語教師、海外不動産など様々なビジネスに従事する。

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