02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソン メッセージ vol.066

 信念を持って努力し続けることがグローバル・パーソンへの第一歩

大沼 広和さん | JB Line,Inc.理事
NYLIFE Securities, LLC
Chartered Financial Consultant®

総合政策学部 2003年卒業
[掲載日:2019年01月09日]

「憧れの海外で働きたい」
その夢を実現させるために進学した総合政策学部で、
グローバルな生き方をする先生や先輩に出会った。
少しでも彼らに近づきたくて必死になって勉強した。

念願がかなって赴任したアメリカでは、山あり谷あり。
それでも努力を怠らずにキャリアアップにつなげていった。
さらに出会いや交流を通じて慈善活動を始める。

自分のスキルとキャリアを社会に還元しよう、
地域のコミュニティや困っている人々のために

信念、情熱とリーダーシップを持って。
 

憧れの海外に行くための礎を大学で築く

 アメリカに来て約15年、本業のファイナンシャルアドバイザーと並行し、JB Line,Inc.(※詳細はプロフィール欄に記載)の理事として、また二児の父として、毎日を過ごしています。本業が軌道にのり充実しているからこそ、慈善活動にも、子育てにも力を注げるのだと思っています。

 中学・高校から漠然と海外に憧れてきました。中央大学へは、いつか日本国外で活躍したいという夢を抱きながら進学。総合政策学部は、英語教育が充実していて帰国子女が多い学部だったため、それまで海外経験がまったくなかった自分にとっては、一番の進学先だったのです。

 在学中は、退任された河野光雄先生の元で学びました。河野先生のゼミに入ったのは、ゼミの先輩の話に影響を受けたからです。その先輩とは、現在は沖縄国際大学教授の友知政樹さんです。中大卒業後にアメリカ・カリフォルニア大学に進学した方で、私にとっては憧れの存在でした。
 少しでも彼に近づきたい一心で河野ゼミに入ったのですが、河野先生はとてもグローバルな感覚をお持ちの方でした。海外から知り合いの研究者が来日した際には、そのミーティングなどにゼミ生をたびたび連れて行ってくれました。研究者の皆さんと英語でコミュニケーションをとり、研究について生き生きと話し合う先生の姿に魅せられていきました。
 先生の専門は物理学で、物理の法則を社会科学に生かす研究をされていました。ゼミでそのような手法を学んだことは、経営やマーケティングなどの分野で働くようになってから、非常に役に立っています。先生は、学生と一対一で本気で向き合ってくれました。卒業後に渡米してからも相談にのっていただくなど、今でも交流しています。私にとっては大切な人生の大先輩です。

 また、研究活動と併せて取り組んだのが、UCLAのGrant(奨学生)への無謀な挑戦でした。寝る間も惜しんで頑張りましたが、圧倒的な実力不足で、箸にも棒にも引っ掛かりませんでした。しかし、ただの夢としてではなく、現実に挑戦した経験が、その後の自分の行動を大きく変えたのだと、今ではそう考えています。

 もうひとつの思い出は図書館です。授業のない時間の大半は図書館で過ごしていました。大学院の図書室や学部図書室で夢中になって洋書を読み込みました。アルバイトも図書館でするなど、私にとって大切な場所でした。
 振り返ると、学生時代にたくさんいろいろな本を読み、それは私のスキルの礎になりました。好きな本・嫌いな本、良い本と良くない本、そういうことなど関係なく、夢中になって読んだことは本当に良かったと思っています。今は、仕事ではMidCareer(中堅)世代、家庭では2人の子どもの子育て中で、自分の時間は限られてしまいます。しかし、学生時代に無駄ともいえそうな膨大な冊数を読んだことにより、本や情報の良し悪しを見分ける力を身に付けられたし、今でも勉強し続けられているのだと思います。
 

憧れのアメリカでビジネスパーソンの第一歩がスタート……しかし!

▲左から奥様のロビンさん、ミキオくん、メイちゃん、大沼さん

 大学卒業後は、日本電産株式会社に入社し、京都にある本社に勤務しました。そこで社会人として基礎や業務スキルなどを身に付けながら経営企画や事業計画、M&Aなどに従事していました。海外志向は変わらずで、入社してから海外に行きたいとずっと会社に願い続けて4年目に、ようやく夢だったアメリカへの出向が叶ったのです。
 そして、2007年にボストンに赴任しました。まず苦労したのが英語でした。もちろん大学でも就職してからもずっと勉強を続けてきましたが、仕事も会話もほとんどが英語となると、話は違います。会話力を付けるべく、毎日のようにカフェやレストランに通って店員さん相手に積極的に英語で話しかけ、さらにプライベートで英語を話せる友人を見つけていくうちに、徐々に英語が自分のものになってきました。

 しかし、ようやく英語での暮らしにも慣れてきた2008年、なんと会社から帰国命令が下ったのです。「リーマン・ショック」が世界を揺るがし、勤めていた会社も大きな影響を受けました。憧れのアメリカに来て必死になって働いて、ボストンの生活にも慣れ、一生を共に過ごしたい大切な人にも出会えたのに、ここで帰国なんて……。考え抜いて悩んで、会社を辞めました。そう、ボストンに残ることを選んだのです。そこから、私のアメリカでの次のステップがスタートしました。
 
 アメリカに残ることを決めてファイナンシャル系企業に転職し、これまで学んできたことを生かしながら、新たな環境で必死に働きました。やがて家族を持つようになり、資産運用やリタイヤメントアドバイザーの仕事が充実してきた頃、地域や周りの困っている人へのサポートなどに取り組み始めました。
 

自分のスキル・キャリアで団体の運営を支える~それが誰かのためになる

▲2018年7月、在ボストン日本国総領事館にて行われた外務大臣表彰受賞の様子。左はJB Line,inc.の渡邊代表

 そのような中で、JB Line, Inc.とのご縁が生まれました。
 JB Line,Inc.とは、米国ニューイングランド地方(ボストンなど)に住む日系人を対象に慈善活動に従事している団体です。当初はボランティアとして、たびたびお手伝いをしてきました。

 理事のお話をいただいたとき、自分の Personal mission  ( I stand for making positive impacts on local cultural communities / next generation  through my profession, Leadership and Passion  =
仕事を通じ、リーダーシップと情熱をもって、地域社会、次世代のお役に立ちたいという個人的使命)に従って、微力ながらお手伝いさせていただくことにしました。理事を引き受けるにあたっては、私の両親の育て方が影響していると思っています。両親は自分のことと同じように、家族以外の人に対して接したりお世話をしていました。その背中を見て育った記憶が背中を押してくれました。

 JB Line, Inc.は、米国ニューイングランド地方の日本人及び日系人を中心とした人々の生活上の問題解決を援助するために2010年に設立。24時間対応の日本語・英語による電話相談やケースマネージメント、カウンセリング、DV(ドメスティック・バイオレンス)・離婚・ハーグ条約・親権をはじめとする夫婦間の相談、高齢者の訪問、サポートグループ、アウトリーチ、ボランティアの育成等、ありとあらゆるさまざまな活動を行っています。
 特に、電話相談においては、JB Line, Inc.に参加する各分野の専門家とボランティアらによる直接の支援を行っていますし、各州の政府や登録NPO等の専門機関・団体への紹介といった間接支援も提供しています。また、DV被害者に対する邦人支援に関して日本の外務省と委託契約を結んでいます。外務省(大使館、総領事館)とこの契約を結んでいるのは、世界で9団体しかないために、JB Line, Inc.は米国全土の被害者からDV被害の相談を受けています。
 こういった活動が認められて、2018年7月に、外務大臣表彰を授賞しました。

 私は2016年に、JB Line, Inc. の理事に就任し、ボランティアとしての実行スタッフではなく、団体をマネージメントする形でのサポートをしています。Officerである渡邊代表の経営についての監督や活動報酬と評価、また団体としての将来の方向性や財政など、理事会を通じて議論したり決議する場合もあります。そして現在は、長期的戦略と財務の計画を担当し、“2025Vision”という形の事業計画を策定しているところです。
 理事という役割は、ビジネス・採算性から考えると、お手伝いできることに限りがあるものですが、NPOとして対価を問わずにサポートが必要な方々をお手伝いできること、地域で必要とされていることを思うと、この喜びは活動の醍醐味にもつながり、採算性を超えた達成感を得ることができます。
 

失敗にひるまない熱意と誰にも負けない強みを持つことが
アメリカでキャリアアップするための秘訣

▲授賞式にて。JB Line,Inc.のメンバー、道井総領事とご来賓の皆様(出典/在ボストン日本総領事館HP)

 日本で生まれ育ち、海外で働くことは、自分の実力を試したい人には最高の機会です。日本では、性別や年齢だけで、その機会を制限されてしまうことが多々ありますが、アメリカでは、実力さえあれば、公平に評価されます。それがアメリカで働く一番の魅力です。

 アメリカでビジネスパーソンとして働きキャリアアップし続けるためには、失敗にひるまない熱意を持つこと、そしてたった一つでも誰にも負けない強みを磨き続けることのどちらかが必要です、あるいはそのふたつをバランス良く両立させることだと思います。

 これまで、タイミングやいろんな要素の重なりのおかげで素晴らしい結果を出す人をたくさん見てきました。ある程度の時間が経つと、バランスシート(実力・日々の行い)とインカムステートメント(結果と収入)は、必ず一致してきます。さらに、どの分野、どこの世界でも、毎日を一生懸命に過ごし真面目に働く人は、長い目で見て、プロフェッショナルとして長く活躍される方が多いように思います。後輩の皆さんにも、将来に向けて、時間をかけてバランスシート(実力)を磨き、鍛え続けてほしいです。

 私も社会に出て15年近く経ち、そろそろ自分のことだけではなく、社会や次の世代のために何かをする順番だと信じています。まだ、具体的なプランはありませんが、ボストンから日本や実家のある茨城県に何らかの恩返しをしていきたいと考えています。

■プロフィール■
JB Line, Inc.(日系ボストニアンサポートライン) 理事
大沼 広和(おおぬま ひろかず)さん

茨城県高萩市生まれ。2003年に総合政策学部を卒業し、同年、日本電産に入社。京都の本社に勤務した後、2007年に同社経営企画部(MA担当) スタッフとしてアメリカ・ボストンに出向する。2008年に同社を退社。2009年 NYLIFE securities LLC に転職。2016年にそれまでサポートをしてきたJB Line,Inc.の理事に就任。

<JB Line,Inc.について(*)>
 JB Line,Inc.(日系ボストニアンサポートライン)は、米国ニューイングランド地方の日本人及び日系人を中心とした人々の生活上の問題解決を援助するために2010年10月に設立された非営利団体。24時間対応のホットライン、ケースマネージメント、カウンセリング、DV/離婚/ハーグ条約・親権等の相談、シニア訪問、サポートグループ、アウトリーチ等、さまざまな活動を行っている。2018年、JB Line,Inc.は、ニューイングランドにおける日本人および日系人を援護する活動の功績が顕著であるとして、外務大臣表彰を授賞。

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