05 REPORT

オランダ人戦争被害者と体験を共有する「中央大学日蘭交流会」開催

2016年11月30日

 2016年11月15日(火)、多摩キャンパスにて「中央大学日蘭交流会」が開催されました。第二次世界大戦において旧日本軍の戦争捕虜・民間人抑留の対象となったオランダ人の方たち18名が外務省「日蘭平和交流事業」の枠組みの下で来日しており、本学法学部学生および教員たち約80名が、彼らのスピーチから戦争体験を共有する機会を得ました。
 なお、本交流会はかつて外務省に所属していた元法学部教授・元駐英大使 折田正樹の発起により、2007年から例年開催されています。今回は前メキシコ駐箚特命全権大使である法学部教授 目賀田周一郎のほか、以前より同企画を引き継いでいる法学部教授 宮丸裕二、法学部准教授 ピーター・ソーントンの実働のもと、国際センターの主催、外務省欧州局西欧課の協力により開催しました。
「中央大学日蘭交流会」
 オランダ人戦争被害者の方たちに、現代の日本の姿を日本人学生との対話から理解してもらうとともに、学生たちには国際的な交流を通じながら戦争経験に触れ、学修の動機づけを得る機会としています。

「日蘭平和交流事業」
 第二次世界大戦時、日本支配下にあった東インド(現インドネシア)で、旧日本軍の戦争捕虜・民間人拘留者になったオランダ人の方々がいました。この過去に対して、戦争が終結し平和条約が交わされた後も日本とオランダの間で平和と友好について話が交わされ、1995年には外務省欧州局が交流事業のひとつとして「日蘭架け橋事業」を開始しました。2005年からはこの事業の後継として「日蘭平和交流事業」がスタート。毎年20名ほどのオランダ人戦争被害者の方たちが日本に招聘され、観光や交流を通して日本に対する理解を育み、両国の理解を深めています。

 交流会の開会にあたり、法学部教授 目賀田は「若い世代に戦争体験を語り継ぎ、何が起きたのかを学ばなければいけません。相互理解を深めるために、今日は非常に重要な日となるでしょう」と挨拶。
 また、司会を務めた法学部准教授 ソーントンからも「苦しい体験は記憶に留まり、戦争が終結しても心の傷は癒えません。この体験を引き継ぎ、今後に活かしていくことが重要です」と学生たちに述べました。


法学部教授 目賀田

オランダ人戦争被害者の方たちによるスピーチ

 3名の方が、捕虜収容所での過酷な生活や家族を失った悲しみなど、自らの幼少期について語りました。登壇者のひとり、ディック・シュワルツさんは「収容所での体験は忘れられない印象を私に残し、その後の人生を決定づけました。本当の挑戦は、未来をいかに築くかということ。知識は力を意味します。貧困、不公平、汚職、戦争を、この世界から撲滅するカギを握っています」とスピーチし、次の世代の生き方を変えることによって過去を変化させることができると学生たちに訴えました。

 
ディック・シュワルツさんほか
スピーチをされた皆さん

スピーチの合間は、各自が自由に懇談

スピーチ内容や学生生活などについて話す様子が見られた

質疑応答

 学生たちはオランダ人の方たちに向け、英語や日本語を交えて「現代の日本の印象」や「オランダではいかに戦争体験を若い世代に語り継いでいるか」など質問を投げかけました。さらに、オランダ人の方たちからも学生に向けて質疑が行われ、「なぜ多くの日本人はインドネシア独立戦争を知らないのか」といった疑問が上がったほか、多くの方から「英語が話せるようになることはとても重要。英語を勉強するように」と激励の言葉がありました。




 オランダ人一行の数名はオランダ南部の都市・ロッテルダムに在住しており、この地域にはエラスムス・ロッテルダム大学があると紹介。同大学は哲学者・人文主義者、デジデリウス・エラスムスの名前に由来しており、一行から記念品としてエラスムスのコインと作品集を受贈しました。なお、本学ではエラスムス・ロッテルダム大学とのプログラムが検討されており、教授らから本学の学生がエラスムス・ロッテルダム大学で学ぶ機会が訪れると示唆されました。
 質疑応答を終えて法学部教授 スティーブン・ヘッセから閉会の挨拶があり、体験を分かち合ってくれたオランダ人の方たちと、交流の機会を与えてくれた外務省へ感謝の意が表されました。

懇親会

 交流会の最後には、オランダ人の方たちと学生たちの懇親会が開催されました。交流会に参加した学生の中には、400年以上におよぶ日蘭関係について学んでいる学生もおり、彼らのリサーチプロジェクトにて作成したポスターが会場に展示されました。

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