05 REPORT

【第9回 IW実施報告】
経済学部特別公開授業「世界の子どもたちの現状とユニセフの活動」

2017年12月18日

インターナショナル・ウィーク
第9回 国際機関

日本ユニセフ協会 学校事業部
高円 承子 氏

 国際化を推進する本学では、学生の知的好奇心を喚起するとともに、より活気あるキャンパスを実現するため、行事企画「インターナショナル・ウィーク」を2011年より開催しています。
 今年は「国際機関」をテーマに授業や講演会等を企画しており、2017年11月28日(火)には、特別公開授業「世界の子どもたちの現状とユニセフの活動」を多摩キャンパス8号館8201号室で実施しました。
 同授業は経済学部教授 林 光洋による講義『国際開発論』を特別公開したもので、ゲストスピーカーとして日本ユニセフ協会 学校事業部の高円 承子 氏が登壇しました。
 高円氏は自身が国際協力に携わるきっかけを交えながら、ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)の活動や日本ユニセフ協会とユニセフの違いなどを説明。ユニセフの支援現場で実際に配布されている栄養治療食、ピーナッツバター味の「プランピー・ナッツ」を手に、現場スタッフのエピソードを紹介しました。このほか開発途上国やシリア難民の子供たちの生活を動画で上映し、視覚的に訴える授業となりました。 授業の最後に行われた質疑応答では、学生から「配給物資がターゲット層に届かないことや意図しない使われ方をするケースはあるのか。それを防止する対策は」、「井戸やトイレ等を設置した場合、住民自身が管理できるように工夫していることはあるか」といった多くの質問が出され、高円氏は一つひとつ丁寧に回答しました。
 下記に特別公開授業の概要をご紹介します。

特別公開授業「世界の子どもたちの現状とユニセフの活動」概要

途上国の開発政策等を学ぶ学生たちが多数、出席した

 国連(国際連合)は、第二次世界大戦後の1945年に設立された組織です。世界の平和と安全の維持、世界の経済的、社会的、文化的、人道的な問題の解決といった目的を、世界の国々と連携、協力して達成するために生まれました。国連のなかには各課題を専門に扱う機関があり、健康・保健・医療に取り組むWHO(世界保健機関)や難民を支援するUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などが、その一例です。
 ユニセフは、子どもに焦点を当て、保健、水・衛生、栄養、教育等の分野で、緊急支援から開発支援まで幅広く活動を行っています。国連のなかでも大きな機関で、150以上の国と地域に300以上の現地事務所があります。世界の子どもたちの生命、健康を守り、基礎教育を提供する支援活動の資金は、各国政府からの任意拠出金等に加えて、個人や企業・団体からの寄付金で賄われています。この寄付金はユニセフにとって重要な資金ソースですので、それを募るために日本ユニセフ協会は広報活動を行っています。

 ご存知の人は少ないでしょうけれど、過去には日本もユニセフから支援を受けていた時代がありました。戦後1949年からの15年間です。日本の子どもの状況が改善すると、「恩返しがしたい」という声が上がり、世界で困っている子どもたちのために学校募金が始まりました。この統括組織として日本ユニセフ協会が誕生します。
 このようにユニセフは先進国の募金を使って開発途上国の援助を行ってきました。ただし、近年はこのような関係に変化が起こっています。例えばタイでは、富裕層の寄付で貧困層が援助され、国内で支援が回っている状態です。

 ユニセフの活動例をご紹介します。世界では、1年間に約560万人の子どもが5歳を迎えることができずに命を失っていることをご存知でしょうか。死亡理由のトップ3は、出産前後の問題を除くと、肺炎、下痢、マラリア。これら3つに共通する、根本的な原因は栄養不足です。この現状に対し、ユニセフでは健康診断や栄養治療等の支援を行っています。このほか、安全な水を届けるために給水設備を作り、トイレを設置して衛生習慣を広め、根づかせるといった活動もしています。

 教育、ジェンダー平等に対する取り組みを見てみましょう。学校に行けない、学べない子どもは世界に6100万人。ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは、彼女の両親の教育に対する理解から、学校に通っていました。ところが、「女性に教育は必要ない」と考える宗教をベースにした武装勢力から標的にされてしまいました。児童婚により学校に通えなくなるケースもあります。児童婚は女の子が対象となる場合が圧倒的に多く、宗教や慣習に由来する理由に加えて、「自分たちの収入では子どもを養えない」と判断した親が、娘を飢えさせないために結婚をさせてしまうこともあるんです。このほか、紛争によって学校に通えない子どもたちもいます。これらの問題に対し、ユニセフは啓蒙活動やジェンダーに配慮した学校の普及、臨時学校の設置等、状況に応じた支援を行っています。こうしたプロジェクトの多くが、地域主導で展開させていることも注目すべき点です。

 ユニセフはこうして保健や栄養、水と衛生、教育など、子どもたちの健やかな成長支援のために活動を行ってきましたが、近年は緊急事態に対する援助が増加しています。緊急支援の現場では、支援が重複しないように国連によるクラスターシステム(組織ごとの役割分担制度)が構築されています。
 


栄養治療食や子どもの栄養状態を計るメジャーなどを紹介

 また、技術や制度のイノベーションを導入し、スムーズな支援に繋げています。例えば携帯電話のショートメッセージを利用した出生登録、ドローンを利用した輸送実験などが実施されています。

 これまで海外におけるユニセフの活動を中心にお話してきましたが、国際協力は意外と身近にあります。そして、大学生の皆さんだからこそ、できることがあります。ボランティア活動をしたり、学園祭などでの模擬店の売り上げを寄付したり、海外インターンシップをユニセフで行ったりする学生もいます。「何か行いたい、何か協力したい」と思ったら勇気を出して行動に移して欲しいです。
 

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