05 REPORT

【第9回 IW実施報告】マラウイ派遣隊員(文学部OB)による
「JICAボランティアセミナー」開催

2018年01月22日

インターナショナル・ウィーク
第9回 国際機関

青年海外協力隊 平成26年度2次隊 原 真人 氏

青年海外協力協会 藤田晃典 氏

 2017年12月19日(火)、約1か月をかけ開催された「インターナショナル・ウィーク」の最後を飾るイベントとして、本学学生・教職員を対象とした「JICAボランティアセミナー」が多摩キャンパス3号館3115教室で実施されました。
 本セミナーには、青年海外協力協会の藤田晃典 氏と本学文学部卒業生で、青年海外協力隊 平成26年度2次隊の原 真人 氏が講演者として招かれました。藤田氏からのJICAボランティアの事業説明、原氏からの協力隊体験談の報告、それら説明、報告に関する質疑応答の三部構成で進められました。

 第一部で登壇した藤田氏は、まず、JICAボランティアは日本政府のODA(政府開発援助)の一形態であると説明し、以下のようなJICAボランティア事業の種類を紹介してくれました。
【JICAボランティアの種類】
・青年(20~39歳)対象
青年海外協力隊、日系社会青年ボランティア、短期ボランティア
・シニア(40~69歳)対象
シニア海外ボランティア、日系社会シニア・ボランティア、短期ボランティア

左より経済学部教授 林光洋、青年海外協力協会 藤田晃典 氏、
青年海外協力隊 平成26年度2次隊 原 真人 氏

 その後、1965年の青年海外協力隊派遣開始以来、5万人以上を派遣してきた実績や、隊員に対する派遣前、派遣中の支援内容、帰国後の進路開拓支援などサポート体制を紹介し、最後に、英語能力をはじめとする応募条件について説明しました。

 続く第二部の青年海外協力隊経験者による体験談では、原氏が青年海外協力隊に応募した経緯、派遣先のアフリカ、マラウイで行ったコミュニティ開発の様子などを報告しました。
 原氏は青年海外協力隊を経験したことで、開発途上国への先入観的なイメージが変わったと言い、自分が模範となって行動を起こすことが支援先のサスティナビリティ(持続可能性)に繋がると感じた、と自身の学びを会場の学生たちに熱く語りました。

 第三部の質疑応答の時間には、学生から挙がった「社会人を経験したからこそ現地で活きた能力は?」という質問に対し、原氏は「現地では自ら行動を起こさなければならず、面識のない方たちを積極的に訪問する必要があったため、日本での営業の経験が活かされた」とエピソードを語りました。

 2010年にJICAとこのセミナーを企画し、以来開催を続けてきた経済学部教授 林光洋は、「今回の話を、何らかの形で皆さんの将来に活かしてもらえたら」とフロアーの学生たちにメッセージを送り、セミナーを締め括りました。

 下記に原氏の体験談概要をご紹介します。
 

体験談概要

原 真人 氏
青年海外協力隊 平成26年度(2014年度)2次隊
職種:コミュニティ開発
派遣国:マラウイ
2012年度 中央大学 文学部 卒業

多忙を極める社会人生活のなかで
「仕事とは何か」を考え、国際協力に挑戦

 在学中のゼミでは、若者の間で人気だった海外ボランティアツアーとその心理的背景を社会学的見地から学んでいました。沢木耕太郎さんが著した小説『深夜特急』の影響で途上国の一人旅も好きでしたが、当時は国際協力に関わることを「自分の経験や能力では、かえって迷惑をかける」と遠慮していました。
 大学卒業後は総合製紙メーカーに就職。営業職で朝8時から夜11時まで仕事という激務のなか「自分にとって働く意義、仕事とは何か?」、「本当に大切なのは、志を持って人のために行う志事(しごと)では?」、「国際協力にチャレンジしたい!」と考えるようになり、2年2か月働いた後、退職して青年海外協力隊に参加しました。

インフラ、資金が不足するなか、住民を巻き込み活動する難しさを実感
 派遣先はアフリカ南部の内陸国、マラウイです。農業水灌漑省が管轄するムチンジ県水開発事務所に所属し、衛生啓発や井戸を中心とした水管理の支援を村落部で行うという要請内容でした。現地の生活で不便だったことは、断水と停電。水は2日に1回、3時間程度しか使えません。停電は毎日起こり、ひどい時には夜中に30分だけ電気が復旧することもありました。初めは満天の星空に感動しましたが、パソコンで調べ物をしたいのに使えないことが当然あり、次第にストレスに。そんな時には、井戸や自家発電を備えている首都に出向き、対処していました。
 マラウイの水事情ですが、2015年時点における安全な水へのアクセス率は農村部89%、都市部96%、私の任地であるムチンジ県では83%と言われていました。
 ムチンジ県には約1500本の深井戸が配置されています。維持・管理は住民が組織する水管理委員会が中心となって住民の負担で実施することになっていましたが、彼らの収入や衛生への理解が乏しいことから、十分に機能していませんでした。
 この状況に対して、井戸の管理方法を普及する活動を行ったほか、トイレを設置する活動を加えて行いました。言葉にすると簡単ですが、資金は提供せず、村人の自主性を重んじたため、住民の行動に変化が現れるまで、もしくは計画が完結するまでに半年から1年の歳月を要しました。しかし、そのかいあって私の帰国後にトイレをもう3基建てたという連絡が現地から届き、活動の意義があったと感じることができました。

計画通りに進むことはない! 実行力と粘り強さ、人脈が成果を生んだ
 活動の中で大切にしていたことは、とにかく行動を起こす大胆さと、諦めずに最後までやり遂げる執念。計画を立てることも大切ですが、計画通りに進むことはまずなかったので、活動しながら軌道修正していました。
 派遣期間の2年間は長いようで短いです。人に行動の変化を起すことは時間がかかり近道もないので、早い段階から取り組むよう心がけていました。
 配属先との人間関係だけでなく、様々な省庁に人脈を築くと活動の幅が広がります。自分の活動を振り返ってみると、活動を共にした多くは配属先以外の人たちでした。彼らが居たからこそ、充実した活動となったと感じています。

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