05 REPORT

【ユニセフ特別授業】経済学部/FLP国際協力プログラム 林光洋ゼミ 「ストリートチルドレンの現状と私たちにできること」

2020年12月18日

    ユニセフ特別授業「ストリートチルドレンの現状と私たちにできること」   

 2020年11月17日(火)、オンラインを利用した、日本ユニセフ協会(以下:ユニセフ)による特別授業『ストリートチルドレンの現状と私たちにできること』が、130人近い参加者を集めて開催されました。
 本授業は、経済学部およびFLP国際協力プログラムの林 光洋ゼミが企画したものです。ゲストスピーカーとして、日本ユニセフ協会 学校事業部から高円 承子 氏をお招きし、講演いただきました。ユニセフによる特別講演会は、例年、白門祭期間中に多摩キャンパスで実施されていました。コロナ禍にある2020年は、「国際開発論」(担当:林 光洋)の授業の一環としてオンラインを利用して実施され、履修者以外にも途上国の問題に関心を持つ多くの学生、 そして10人前後でしたが教職員も出席しました。

▲オンライン授業を運営する林ゼミナール4年生の様子

 講演会の前半には、高円氏より、子どもたちの命と権利を守るために活動する国際連合児童基金(UNICEF=ユニセフ、以下:UNICEF) についてお話いただきました。続いて、林ゼミナールの4年生ユニセフ班のメンバーが、ストリートチルドレンの定義や2019年にフィリピン・マニラで実施した調査からみえた実態を話しました。

 後半には、参加した学生を少人数のグループに分け、「ストリートチルドレン」をテーマとしたワークショップを実施。問題点や解決策等について話し合ってもらい、各グループより発表してもらいました。それらのアイディアに対して、高円氏から、関連するUNICEFの取り組みを交えて講評していただきました。
 参加した皆さんは、途上国のストリートチルドレンの現状を知り知識を深めただけでなく、援助が必要な世界中の子どもたちに対しての支援を考える、大変良いきっかけになったようです。
 以下で、授業の概要をご紹介します。
 

世界の子どもたちの現状とUNICEFの活動について

世界中の厳しい環境で暮らす子どもたちのために活動するUNICEF

 国連の機関のロゴにはすべてオリーブの葉が描かれ、その内側に機関を象徴するアイコンが描かれています。大人の人が子どもを抱き上げている、これがUNICEFのアイコンです。UNICEFは、すべての子どもの命の権利を守るため、世界中の厳しい環境におかれた子どもたちのために活動している国連の機関です。

 UNICEFは国連の発足と同時にスタートしています。日本もかつて、1949年から前回の東京オリンピック1964年までの約15年間、UNICEFからの支援を受けていました。その後1989年に、『子どもの権利条約』という国際条約が成立し、”子どもの人権”を明文化した内容が公約されました。この条約は現在、世界で最も多くの国が賛同しています。この中には40もの条文があり、子どもは生きる権利がある、育つ権利がある、病院に行く権利がある、教育を受ける権利がある、意見を言える、戦争に連れていかれてはならない、障がいのある子どもは特別に管理されなければならない等々…、日本に住む人の観点からすると、当たり前のことが書かれています。
 しかし、世界中にはこれらのことが守られない状況にある子どもたちがたくさんいるのです。UNICEFでは、そのような子どもたちの権利が守られるように、世界中で活動をしています。その活動は主に、保健、栄養、水と衛生、教育、暴力や搾取からの保護、HIV/エイズ、緊急支援などがあります。

保護や支援の必要な子どもたちとは

▲日本ユニセフ協会学校事業部の高円 承子氏
リモートで特別講演を行いました

 世界の子どもたちの現状をみると、世界中で年間520万人の5歳未満の子どもが亡くなり、6秒に1人が亡くなる計算です。その理由の多くは、栄養不足、風邪や胃腸病によるもの、予防接種が実施できずに病気になった等が挙げられます。水の問題も深刻で、汚れた水をそのまま飲用している人は大人を含めて1億4,700万人もいます。また、児童労働や学校に通えない子どもの問題もあります。世界中にさまざまな事情で働かされている5~17歳の子どもは、1億5,200万人います。労働のために学校に通えない、また紛争で学校が破壊されて通えない子どももいます。

 UNICEFは、2つの信念を柱に、子どもたちのために活動しています。それは「予防と自立」です。
●予防:子どもたちの健康チェックや予防接種をする等して、病気から予防する。栄養不足の子どもたちに高栄養の食事を食べてもらって回復してもらう等があります。
自立:UNICEFがずっと支援を続けるのではなく、地域の人が自分たちの力で地域の子どもを成長させられるようなサポートをします。例えば井戸を作るときも一緒に作ることで、井戸が壊れても自分たちで直せるようになる、というような支援の仕方をしています。農業や栄養指導についても同様の支援をしています。

▲(資料提供:日本ユニセフ協会)

▶UNICEF の支援物資のひとつ「箱の中の学校」(資料提供:日本ユニセフ協会)

▲約40人の子どもたちが学ぶことのできる教材がひと箱にセッティングされています

経済学部/FLP林光洋ユニセフ班によるフィリピンでの調査報告から。ストリートチルドレンについて

林ゼミナールの紹介

 林ゼミナールは、経済学部とFLP国際協力プログラムの合同ゼミナールです。経済学部だけでなく、さまざまな学部に在籍する仲間が集まり、開発経済学を一緒に学んでいます。2年次には輪読や論文執筆、3年次には輪読に加えて、現地調査を含む1年間の本格的な研究プロジェクトを実施、4年次には卒業論文と併せて、高校等への訪問授業やユニセフと協力した活動を実施しています。
 現在の4年生は、2019年の夏にフィリピンの首都マニラに2週間滞在し、自分たちが立てた仮説を明らかにするための現地調査を行いました。教育、ビジネス、保健、防災をテーマとした4班に分かれ、アジア開発銀行、フィリピン大学、フィリピン保健省、マニラ市保健局、NGOs、現地企業、JICA事務所等を訪問し、インタビューやアンケート調査をしてきました。

フィリピンで出会ったストリートチルドレン

▲マニラのスラム街で出会った子どもたち(個人情報保護のために画像はぼかしています)

●ストリートチルドレンの定義
①路上で寝泊まりしている子どもたち
⇒家に居場所がない、家にいても食べるものがない
②日中は路上で働き、夜は家に戻る子どもたち
⇒家庭が貧しく毎日の食費を稼ぐ。自分の学費を稼ぐ
③家族が全くいない子どもたち
⇒育児放棄や家族に見捨てられた

フィリピンにいるストリートチルドレンの人数
25万人(資料:国境なき子どもたち、2019年)→世界1多い人数

現地調査では、ストリートチルドレンの保護施設やスラム地域を訪問。彼らの現状や問題となることを見ることができた。ストリートチルドレンの生活実態はとても過酷なものである。

ワークショップ~ストリートチルドレン問題の解決方法を考えよう

▲ワークショップにて(林ゼミのメンバー)

 ワークショップでは、前半の高円氏の講演と林ゼミナールによるストリートチルドレンについての解説を踏まえ、5名程度のグループに分かれ、オンラインのグループ討論機能を利用して、ストリートチルドレン問題を、誰が、どのように解決したらいいのか、等について、30分ほど話し合いました。そののち、各グループの代表者が発表しました。

 各グループからは、親やストリーチルドレンに対して行うこと、政府や企業に求めること、日本に住んでいる自分たちができること等、さまざまな意見が出されました。


各グループからの意見(順不同)
●解決案:親やストリートチルドレンに対して
農業のように継続して行える仕事を覚えてもらう。衣食住の知識を増やす。お金の稼ぎ方や使い方を学ぶ。収入を改善する。
●解決案:政府や企業に求めること
プレスクールを充実させる。補助金を増やす。企業がブランドを作る。職業訓練の機会を提供する。学校の授業料や就学に必要な経費を無料にする。勉強の楽しさを親に伝える。お金の稼ぎ方・使い方の講習会の実施。

●自分たちにできること
私たちの募金の使われ方を知る。学用品を寄付する。大学生などが英語でノンフォーマルな授業を行う。募金する。クラウドファンディングを行う。物資を送る。情報発信をする。

ワークショップについて高円氏から講評・コメント。ユニセフが実施していること

▲マニラの実態について、ワークショップでは多くの質問を受けました(林ゼミメンバー)

 現地の貧困層やストリートチルドレンの親は子どもたちに仕事をしてほしいわけではない。大人の仕事がそもそもない、政府にも収入がない、お金がない=教育の予算がない、国が貧しいという実情があります。
 UNICEFがその国の政府を説得したりしているが、なかなかうまく進まないというのが実情です。物を送るというよりも、現地で物を調達し、物を作る、というところに力を入れています。UNICEFはノウハウはあっても作る力がないので、企業の製作ノウハウを借りて現地で物を生産する、さらにその人材を現地雇用する等しています。

 皆さんがこのようなテーマに関わりたい、何かを始めたいなら、まずは知ることが大切です。企業のホームページを見てSDGsの取組み等を知るのもよい方法です。
 大学生の皆さんにお願いしたいことは、このような活動や実情を発信する、友だちを誘ってみる、今日の授業が皆さんのきっかけになることを願っています。

林ゼミによるユニセフ募金活動
「#Childhood Challenge = 子どもたちの子ども時代を守ろう!」


 林光洋ゼミナールでは毎年11月~12月に、多摩キャンパス内や多摩センター駅前等においてユニセフの募金活動を実施しています。
 この活動は、日本ユニセフ協会との共同プロジェクトとして2016年から継続しているものです。コロナ禍にある2020年は、街頭での募金活動ではなく、オンラインの募金プロジェクトを立ち上げて募金活動を実施しています。

 11月~12月の間、ユニセフでは「Hand in Hand Project」という募金キャンペーンを実施しています。2020年のテーマは、
「#Childhood Challenge = 子どもたちの子ども時代を守ろう!」
寄付していただいた募金は、全額を日本ユニセフ協会に寄付されるとのことです。

▲日本ユニセフ協会オフィスにて。林ゼミのメンバーが2019年秋に実施した募金全額を寄付金としてユニセフに贈呈しました。本日の特別授業に登壇した高円承子氏(右から2人目)と林ゼミのメンバー(写真提供:日本ユニセフ協会)

●林ゼミナールが立ち上げた募金プロジェクトでは、ユニセフ『フレンドネーション』内に「中央大学林光洋ゼミナールの特設サイト」を作りました。この募金ページから、ご賛同のご寄付、SNSでのシェア等のご協力を学生たちは呼びかけています。
「#Childhood Challenge = 子どもたちの子ども時代を守ろう!」
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