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05 REPORT

中央大学パシフィック・オフィス開設10周年記念◇中央大学・ハワイ大学合同国際シンポジウム/中央大学学術シンポジウム「ウェルビーイングのための認知多様性への学際的アプローチ」を開催<DAY1>

2023年11月30日

  University of Hawaii and Chuo University International Joint Symposium  
   “Interdisciplinary Approach on Cognitive Diversity for Well-Being” 
    Commemorating the 10th Anniversary of the Chuo Pacific Office

 「中央大学パシフィック・オフィス」は、第一号の海外拠点として、2013年12月に本学の海外協定校であるハワイ大学マノア校(オアフ島ホノルル市)のイースト・ウェストセンター内に開設されました。開設以来、本学からの派遣留学生支援や研究者交流等、両校の交流支援拠点の役割を担っています。
  2023年、「中央大学パシフィック・オフィス」は開設から10周年を迎えました。これを記念し、2023年10月6日(金)、7日(土) (現地時間では5日、6日)に、イースト・ウェストセンター内の会場において、 『中央大学パシフィック・オフィス開設10周年記念 中央大学・ハワイ大学合同国際シンポジウム/中央大学学術シンポジウム「ウェルビーイングのための認知多様性への学際的アプローチ」』が開催されました。

 シンポジウムでは、本学とハワイ大学の研究者が2日に分かれ、それぞれの研究について報告していただきました。また両日共に講演後には、研究交流が行われました。

 今回のシンポジウムにより、本学が取り組む学際的研究「コグニティブ・ダイバーシティ」がますます進展するとともに、同テーマと関連する両校の教育・研究交流が発展することが期待されます。

 以下で、シンポジウム1日目の様子をご紹介します。
(2日目のレポートは、こちらからご覧いただけます ⇛ ②DAY2

 DAY1(10月6日) 

▲開会の挨拶を述べる加藤 俊一 副学長(研究推進支援本部長・理工学部教授)

 ハワイ大学と本学教員による講演に先立ち、ハワイ大学マノア校工学部副学部長 ソンキー・チョイ教授(Prof. Son K. Choi)と本学副学長・研究推進支援本部長・理工学部教授 加藤俊一より歓迎の言葉と開会あいさつが述べられました。続いて、ハワイ大学マノア校工学部長 ブレノン・モリオカ博士(Dr.Brennon Morioka)、ハワイ大学マノア校国際センター所長のブレント・ホワイト教授(Prof. Brent White)より祝辞のお言葉をいただきました。

 また、加藤俊一副学長は、「中央大学の認知多様性プロジェクト」についての説明の中で、「ウェルビーイング社会には個人と社会の二つの側面があります。考え方、意思決定、行動、ライフスタイルや文化的背景、生活・自然・社会環境、ソーシャルデザイン、政策など、さまざまな面で多様化に対応する必要があります。特に研究者には、このような多様性を考慮しウェルビーイングに対する最新の知識を得る必要があることが求められています。さらに異なる視点・異なるディシプリンとのインタラクションから新しい発想が生まれます」と、今回のシンポジウムへの期待について述べました。

 1日目の講演は、人間主体の情報環境や側面と水資源のサステナビリティを中心に、4名のエンジニア系の研究者が登壇。ハワイ大学からは、レザ・ゴルバニ教授(Prof. Reza Ghorbani)、タオ・ヤン教授(Prof. Tao Yan)、本学からは、理工学部教授 新妻  実保子、同教授 山村  寛が、それぞれの研究について報告しました。 

“Human-Robot Interaction and Its Application for a Home Robot Committing Parent-ChildRelationships”(JST-funded Research Project)
~「ヒューマンロボットとの交流と、親子関係を担う家庭用ロボットへの応用」(JST委託研究事業)

中央大学 理工学部精密機械工学科教授  新妻  実保子 
Prof. Mihoko Niitsuma  (Dept. of Precision Mechanics,
Faculty of Science & Engineering, Chuo)
 
  新妻教授の研究テーマは、人間の生活環境に溶け込む自動サービスやアシスト機能付きのロボットシステムの開発と評価、身体が不自由な方への支援・健常者の活動を効率化するロボットを使ったソリューション等の提供です。人の作業の流れを情報として取り込んだロボットシステムが、人をサポートする自動サービスやアシスト機能によって人の活動を効率的で活発なものにできることを目指して研究を行っています。最近は、ロボット活用による生産性向上にとどまらず、人のメンタルヘルス面において、活動や人間関係を良好にできるようなロボット開発プロジェクトを新たに進めています。ロボットの人への働きかけが人の感情に作用し、問題行動を減らしたり、それがセラピーにもつながるようなロボットの開発です。生産性の向上にとどまらず、メンタルヘルス面でも人間の活動を支援する、ヒューマンアシストロボットの実現を目指しています。

“Challenges and Opportunities in Big Data for Human Decision-making”
~「人間の意思決定にビッグデータを活用することの課題と可能性」

ハワイ大学 理工学部精密機械工学科 レザ・ゴルバニ教授
Prof. Reza Ghorbani (Dept. of Mechanical Engineering, College of Engineering,UH) 

 レザ・ゴルバニ先生は、ソーシャルメディアを駆使する戦略で世界的な成功を収めている米国のシンガーソングライター「テイラー・スウィフト」の成功を例に挙げながら、ビッグデータを活用することの課題や問題点、利点について話しました。ヒット作を作り続ける裏には、膨大なデータをフィルタリングしリアルタイム分析したものを迅速に活用していることにあります。これらのためには、データの正確性を支援するプラットフォーム、データ保護のプラットフォーム、バイアスに配慮したツール等が必要です。データの質と正確さについて、プライバシーと安全性、バイアスと公平性、人間による解釈の可能性等について、それぞれの課題と利益を生むチャンス・利点を分かりやすく紹介しました。

“Challenges toward Wise and Green Water Management in Circular Economy &Digitalization - Lesson from Super-aging Society”  ~「循環経済およびデジタル化社会における賢いグリーンウォーター管理実現への課題~インフラの超高齢化社会から学ぶこと」

中央大学 理工学部人間総合理工学科教授 山村  寛
Prof. Hiroshi Yamamura  (Dept. of Integrated Science and Engineering for Sustainable Societies,
Faculty of Science & Engineering, Chuo)

 山村教授は、今後深刻な問題となりうる日本とアメリカの水問題について、現状を紹介しながら課題と今後の展開について報告しました。両国に共通しているのは、水道インフラの老朽化とインフラを管理する熟練技術者の減少が大きな課題となっていることです。水道管の破裂や水道に鉛等の汚染物質が混入したり、特に日本では夏の大雨増加や南海トラフ地震発生があれば、それに伴う断水やインフラ損傷の危険が高まります。インフラの老朽化や地球温暖化による水リスクへの対応を急ぐと共に、少子高齢化等によるインフラ事業にかかわる技術者減少に対応するためには、インフラの自動化・デジタル化を含めた水道・下水道のインフラ再構築、脱炭素型インフラへの転換が急がれています。スマートインフラ・脱炭素型水インフラ型水インフラの基礎研究ならびに社会実装に向けて、同じ島国であり、ヒトとモノの資源が限られるハワイを代表するハワイ大学と共同で研究・開発を進めることで、次世代の水インフラの土台となるような研究を、展開していきたいと述べました。

“Tracking COVID-19 Transmission Dynamics and Variant Development via Wastewater Surveillance”
~「新型コロナウィルス感染症の伝播動態と変異株の発生を廃水調査によって追跡」

ハワイ大学 工学部土木・環境・建設工学科  タオ・ヤン教授
Prof. Tao Yan (College of Civil, Environmental and Construction Engineering, College of Engineering.UH)
 
 下水道管の排水から地域に出回る微生物糞や病原体を回収して調査を実施・研究を進めているタオ・イェン教授は、新型コロナウィルス感染症の流行時に廃水調査を行いました。臨床実験の場合には、調査範囲に限界があり時間がかかり偏りも多くなることがわかってきました。廃水調査の場合には、地域レベルでの調査のため、偏りが少なくどのような病気でも迅速に調べることができます。ホノルルではロックダウン中、臨床検査の減少と併せてコロナウィルス(SARS-CoV-2)濃度が減るという結果が出ています。さらに液体よりも固形の方が濃度が高いということも分かりました。廃水調査は地域全体の感染状況を低コストで把握することができ、持続可能に行うことができます。今後も変異株、変容の様子や新たな感染症についても廃水調査を続けていくそうです。

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