05 REPORT

「グローバル・アントレプレナーシップ・キックオフシンポジウム」が開催されました

2024年07月02日

   中央大学が全学的なグローバル・アントレプレナーシップ教育の推進に挑戦します

 2024年6月22日(土)、中央大学多摩キャンパス フォレストゲートウェイ3Fホールにおいて、「グローバル・アントレプレナーシップ・キックオフシンポジウム」が開催されました。
 中央大学では、「多様な文化背景を持つ世界中の人々と協働し、困難な課題にも果敢に挑戦し、新たな価値を創造できるグローバル人材育成」を目指して取り組んでいます。本シンポジウムは、これまで一部の学部で実施してきた「グローバル・アントレプレナーシップ教育」を全学での推進に拡大させるという本学の新たな挑戦のスタートを記念して開催されました。イベントの様子はオンラインでも同時配信され、多くの方々が視聴しました。

▲在学生、附属校生、教職員のほか、近隣の一般の方がシンポジウムに参加

▲(左)中央大学学長 河合 久、(右)国山 ハセン氏

 シンポジウムは、「世界に通じるエコシステムのなかで力を発揮するグローバルなマインドを伴うアントレプレナーシップの醸成」をテーマとし、文部科学副大臣の今枝 宗一郎 氏、東京都副知事の宮坂 学 氏、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の伊藤  羊一 氏による講演とスペシャルセッション、社会のイノベーションに挑む起業家の皆さんによるトークセッション、在学中の中大生・附属高生によるピッチイベントなどが行われました。
  また、本シンポジウムの総合司会として、本学卒業生の国山  ハセン 氏(PIVOT番組プロデューサー・元TBSテレビキャスター、商学部OB)に会の進行を担当していただきました。

 開会に先立ち、中央大学学長 河合 久は、「現在、これまでに経験したことのないような変化が世界で起こってきています。従来の、そして新しい社会課題に対して、世界の人々と協働して対応してゆくためにはグローバルな視野を持ちチャレンジする力が必要です。社会と共に学びながら社会に開かれた大学を目指すとともに、新たな価値を創造できるグローバル人材を育成する取組みを進めてまいります」と挨拶の中で述べました。

以下で、シンポジウムの一部をご紹介します。

 第一部「なぜ今、アントレなのか?」~国や東京都、大学の視点から

 第一部では、文部科学副大臣の今枝 宗一郎 氏、東京都副知事の宮坂  学 氏、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の伊藤  羊一 氏による、国や東京都のスタートアップ支援の狙いや今後の方向性、これまでの成果や課題、大学におけるアントレプレナー教育の期待と可能性など、「アントレ教育の未来」について、それぞれの立場からお話いただきました。

▲今枝文部科学副大臣はオンラインでご登壇いただきました

  「文科省スタートアップワーキングチームの取り組み」 
 今枝  宗一郎 氏(文部科学副大臣/衆議院議員/スタートアップ推進
 議員連盟 事務局長/MaasS推進議員連盟 事務局長)
 
 入退院を繰り返した幼少期時代、高校時代の「学費が払えない高校生向けの募金活動」、医学生時代に愛知万博で自ら立ち上げたNPOで事業を起こしたこと、医師時代のこと、28歳で議員として初当選してからのこと等、ご自身のこれまでの経験と挑戦や成果を語っていただきました。
 さらに、国がすすめているスタートアップ計画の中から、「大学発スタートアップを取り巻く課題」をご教示いただき、「アントレ教育の抜本的強化プロジェクト」の実例、課題と対応をご紹介いただきました。その中から、戦略的な創業支援のひとつである「大学等発新事業創出事業」がトピックとしてあげられました。全国の大学プラットフォームが連携して、経営人材(CXO人材)をマッチングする仕組み、戦略的に創業支援・事業化支援人材を育成する仕組みを構築し、経営人材バンクやマッチング、スタートアップの創業支援・事業化支援人材の育成、大学の知を開放する次世代産学連携環境整備等を今後は展開していくようです。また、本学に対しての期待のお言葉もいただきました。
「挑戦者が生まれ、世界から集まり、挑戦者を応援する東京へ」
 宮坂  学 氏(東京都副知事/GovTech東京 代表理事)
 
  いつの時代も、さまざまな分野・ジャンルで新しい何かを生み出すのは挑戦者たちです。ビジネスの挑戦者がスタートアップを立ち上げ、新しいものの見方・考え方、革新的なテクノロジーやアイデアが新しいサービスを創造します。それらは社会の課題解決や雇用創出、経済の活性化に大きな役割を果たすとともに、世界に貢献することであると、「スタートアップ」に大きな期待を寄せました。「東京を、挑戦者が生まれ、世界から集まり、挑戦者を応援する都市」になることを目指して、東京都ではさまざまな取り組みを進めています。2024年5月に開催したアジア最大規模の「スタートアッププログラム」や9月に開催予定の若者向けの「TIBJAM&CAMP」、学生主体に企画を創出する「SusHi Tech」、「スタートアップコンテスト」などを紹介し、「若者が東京からイノベーションを生み出す大きな流れを作っていきたい、多くの中大生が応募してくれることを期待している」と述べました。
「アントレプレナーシップをもって踏み出そう!」
 伊藤   羊一 氏(武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長
 /Musashino Valley代表/LINEヤフーアカデミア学長)
 
 日本の国際競争力とGDP比較、日本のアントレプレナーシップレベルの国際比較、Yahoo!・Amazon・Uberのような企業が日本ではなぜ生まれないのか等を紹介しながら、日本の課題について解説いただきました。伊藤 氏が学部長を務める武蔵野大学アントレプレナーシップ学部は2021年に開設され、2024年に4学年が揃い240人が学んでいます。起業家精神、高い志と倫理感に基づいて失敗を恐れずに踏み出し、新たな価値を創造すること等、学部で行われる4年間のアントレプレナーシップ教育を通じて、活躍できる学生を育成しています。「この学部や武蔵野大学だけがよくなればよいわけでなく、多くの大学や国と行う連携プログラムを通じて、大学全体さらには日本の多くの大学と共に、アントレプレナーシップを盛り上げていきたいと述べました。中央大学でも素晴らしい取り組みをしていることを知り、「中大ならではのアントレプレナーシップとは、それは「行動する知性」の上にあるものではないかと思っています。学内外でよりたくさん話し合い、意見を共有し合い、また大学を越えて協力し合って「アントレプレナーシップマインド」教育を行っていきましょう、未来は予測するものでなく創るものです」と締めくくりました。

 第二部「トップランナー達の挑戦」~社会で活躍する起業家の言葉 

 第二部では、企業での経験を活かして事業をスタートアップした起業家の方々、企業に在籍しながら企業内のスタートアップ支援を活用して社内起業をした方々、中大在学中に起業した等、学生の皆さんのロールモデルとなるような先輩たちによる講演とトークセッションが行われました。
 起業したきっかけ、事業の内容や工夫していること、事業から学んだこと、今後の展望等、学生時代の経験も含めてお話いただきました。さらに、ミニ座談会や学生からの質問にもお答えいただきました。
 多岐にわたる話題の中から先輩方のキーワードをピックアップしてご紹介します。 
 

▲(上)佐藤 孝徳 氏(総合政策学部2006年卒業)、(株)Shippio 代表取締役CEO
▲(下)佐々 翔太郎 氏(法学部2019年卒業)、(株)ASEAN HOUSE, CEO

●佐藤  孝徳 氏(総合政策学部OB):新卒から入社した企業で10年業務をした経験とそこで築いた人脈は、起業した今、非常に役立っている。100人もの優秀な同期たちから受けた刺激は励みにもなるし、起業した多くの先輩たちからアドバイスをもらいやすい。起業に必要なことは、踏み出す力と人間同士の信頼関係を作れるかが大切。
●佐々  翔太郎 氏(法学部OB):法学部のやる気応援奨学金で訪れたフィリピンで、生活が貧困で苦しくても明るく笑顔で楽しく生きている現地の人々に衝撃を受けた。「笑顔で楽しく生きることが大事なんだ!」をモットーに、途上国の格差を無くしたいと、“トビタテ”で行ったミャンマーで持続のできる国際協力をスタート。「外国人雇用」を通じて問題解決につなげようと、現地の人々と協働で起業した。外国人も暮らしやすい社会を作るというビジョンを掲げて活動している。
●植松  誠 氏:入社して面白いことを仕掛けたいと考え、社内のOnePanasonicの協力を得て、社外の人とのつながりを作る目的で「ONE JAPAN」を立ち上げて、山本さんや小西さんとも協力して活動している。妻と世界一周をして越境人材のコミュニティを運営したり、企業の支援・伴走をしたり。女性リーダーを増やす取り組み等を行っている。大人ができることは「環境の整備」と「挑戦の姿」を示すこと。山本さんと小西さんは企業で挑戦するロールモデルなので、良い話を聞けると思う。
●山本  将裕 氏(経済学部OB):NTTドコモのスタートアップで、中高生から始める人材開発として、探求/キャリア教材の開発と講師育成、オンラインスクール運営、プログラムのサブスクを行っている。年数回、社会人の講演を聞いても社会のことが分かるわけがない、社会について継続的に楽しく学べるサービスを展開し、さらに企業や社会と共に作る高校を開設した。
●小西  好美 氏:JR東日本という鉄道会社で窓口・車掌・運転士等の業務を担当しながら育休・子育てをする中で、疲弊した経験を改善につなげたいと、社内ベンチャー制度に応募し2023年から事業を開始した。女性リーダーシッププログラム、日本におけるダイバーシティ推進トレンドインプットの企画、「ONEJAPAN」への参加等を行っている。日本の女性活躍推進の実現とワーキングマザーが変化を前向きに楽しめる社会を目指し、キャリア形成支援サービス、マッチング・座談会・セミナーを提供している。

▲濱松 誠 氏:ONE JAPAN 共同発起人・共同代表、SUNDREZ(株) チーフコミュニティデザイナー

▲山本 将裕 氏(経済学部2010年卒業)
ONE JAPAN共同発起人・共同代表CEO、(株)RePlayce 代表取締役

▲小西 好美 氏:JR東日本マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門 新規事業ユニット イントレプレナー担当

第三部「社会の変革に挑む中大生」~学生によるピッチ形式の発表

 第三部では、学生によるピッチ形式の活動発表が行われました。高校・大学在学中に起業した学生、外部のビジネスコンテストにおいて入賞経験のある学生チーム、附属高校の生徒が登壇し、「美顔水を広めるためのビジネスプラン提案」、「気軽に始められるビジネスアイデアマッチングアプリ」、「ゼミ活動で様々なコンテストに参加、指導教員から学んだこと」「ベンチャーキャピタルからの出資を受けて上場を目指すスタートアップ」「高齢者向けの買い物支援・ついキャリ」、「古着のネット販売」といったそれぞれのテーマを発表しました。発表の中では自身の経験や仲間と共に考え抜いたビジネス案等、活動や事業を通じて学んだこと、企業のハードル等について語り、発表後には、ゲスト登壇者の皆さんによる講評も行われ、登壇した学生にとっては、価値のある発表経験ができたようです。

【登壇した学生の皆さん】※敬称略
法学部 西村ゼミ:保田  優太・原  彩夏・半田  元輝、(株)ideaccept:浅野  海翔(代表取締役CEO/法2)、経済学部 和田ゼミ:伊藤 初音・王 駿堯・河村  ひより・南部 颯太、TOPICO株式会社:坂入 啓介(共同創業取締役COO/経3)、ついキャリ:平沼 明花(商3)・細江 耕次郎(商3)、春原 崇寿(中大附属高校3年)

 「行動する知性」をもって、初めの一歩を踏み出してさまざまなことに挑戦しよう

▲左から、国松副学長、藤井教授

 1部から3部まで、熱い想いと深い内容のつまった講演や発表が行われ、予定時間を大幅に延長して終了しました。
 本シンポジウムの最後には、中央大学副学長/グローバル・アントレプレナーシップ教育推進委員長 国松 麻季、中央大学理工学部特任教授/キックオフシンポジウム実行委員長 藤井 真也が本シンポジウムの感想と、本学で新たにスタートする「グローバル・アントレプレナーシップ」について、閉会のあいさつとして述べました。
「グローバルな視野を身に付け、起業家精神(アントレプレナーシップ)を身に付けた人材、自分の未来・世界の未来を豊かにかたち創ってゆけるような人材を育て、本学から輩出していくために、中央大学らしいアントレプレナーシップ教育の取り組みを進めていきたい」と述べました。

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