05 REPORT

新たな世界を切り開く

2015年06月24日

 
2014年3月大学院理工学研究科精密工学専攻博士課程後期課程修了
大森 隼人(神奈川県立鶴嶺高校)
 
 
 私が短期留学をした理由は、三つあります。一つ目は博士課程後期課程の最終段階に入り、外部から、私の研究評価や更なる躍進に向けアドバイスをもらうことです。二つ目は今後発展が期待されるハプティクス(装置利用者に力等をフィードバックさせることで、あたかも実際に物体を触っているように感じることが出来る技術)の研究に携わり、知識と経験を得ることです。最後に、修了後の就職先を海外で見付けることです。
 私は2013年6月20日から約二カ月間、スイスのローザンヌにあるスイス連邦工科大学(EPFL:École Polytechnique Fédérale de Lausanne)に短期留学しました。受け入れ先は、ハネス・ブロイエル教授のロボットシステム研究室(LSRO:Laboratoire de systèmes robotiques)でした。EPFLでは数々の世界最先端の研究を行っており、各国から優秀な研究者が集まってきます。この研究室でも10数名の各国からの博士課程の学生が研究を行っていました。研究室の主な研究はパラレルリンクロボット(並列なリンク機構により一点の動きを決めるパラレルリンクを有したロボット)やハプティクスなどです。また、中央大学での指導教授である中村教授がこの時期にLSROで在外研究を行っていました。これらの理由からLSROを留学先として選びました。
 研究室では日本での研究を進め、LSROや他の研究室、他大学の研究室、企業にも研究発表を行いましたが、さすが優秀な研究者が集まっているだけあり、鋭い質問をされました。また普段、午後三時はコーヒーブレイクでしたが、実際は休憩中でも研究に関する議論が始まります。全力を注ぎ研究をしている時よりも普段思い付かないアイデアが生まれることもあります。国際学会の質疑応答は10分程度ですが、今回の留学ではさまざまな研究者に多く時間を費やして見てもらったことで有益な意見をいただくことが出来ました。
 また、新たな分野としてハプティクスの研究も行いました。研究室にはハプティクス用の機材が数多くあり、それらを用いて研究に取り組みました。ゼロからのスタートでハプティクスの基礎知識、機材の使い方やソフトウエアを学びました。時間が少ないながらも、利用者への力の提示とグラフィカルな表示も行うことが出来ました。
 留学期間中の天候は良く、週末は国内の都市はもちろん、隣国にも行きました。ある週末、イタリア人の友人とリヒテンシュタインに行き、その道中、一人で旅行していたドイツ人と仲良くなり三人で街を散策しました。このように、初対面の人とも仲良くなれて、人と人とのつながりが世界に広がっていくのも留学の醍醐味です。
 「郷に入っては郷に従え」ということで、LSROでの研究の合間を縫ってEPFLの教授や学生に就職の実情を聞きながら就職活動に励みました。また、研究発表の度に名刺を配り、就職活動中であると伝えましたが、就職先はそう簡単には見付かりませんでした。ある日、中村教授に他の大学に行くから一緒に来て研究発表をしないか、と誘われました。そして、この発表を聞きに来ていた方が私の研究に興味を持ち、後にその方の下で働くことが決まりました。
 結果として三つの目標に対し大きな成果を残すことが出来ました。更に留学生活を通して非常に有意義に過ごすことが出来たと思います。このような成果を得、また貴重な体験が出来たのも、中村教授、ブロイエル教授、そして両研究室のメンバーの支援があったからです。心から御礼申し上げます。
 

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