05 REPORT

デューク大学での短期修行

2015年07月16日

デューク大学での短期修行
 
大学院理工学研究科都市環境学専攻博士課程後期課程二年
         丁 青
 
 
 2015年2月4日から約一カ月間、短期留学支援制度を利用してアメリカノースカロライナ州のデューク大学(Duke University)のDepartment of Civil and Environmental Engineering (CEE)のMark Wiesner教授の研究室に留学しました。
 私は現在、浄水処理過程でのコロイド形成メカニズムに関する研究に挑戦しています。コロイドとは、水中に存在している、粒径が0、01-0、1マイクロメートルの不純物です。コロイド化学は二〇世紀後半に急速に発展した分野であり、いまだ解明されていない物理・化学的な現象も多く存在します。特に、水中での挙動については、それを観察するすべが少ないこと、たくさんの物理化学的影響因子が関与するため、特殊な装置と技能を持った研究室でなければ、研究を深めることは困難です。
デューク大学のチャペル

デューク大学のチャペル

私は、修士課程一年間と博士課程一年間の合計二年を通して、浄水処理過程で500ナノメートル(*)以下の粒径を持つ微小なフロック、すなわち不純物と凝集剤の塊が形成されることを発見し、その発生機構について検討してきました。既存研究において、10マイクロメートル(*)以上の粗大なフロックに関する理論と経験が蓄積されてきましたが、10マイクロメートル以下の微小なフロックについては、その挙動を観察することが難しいために、発生起源や浄水過程での挙動については詳しく分かっていませんでした。私の研究では、初めて500ナノメートル以下のフロックの表面電荷を明らかにし、その挙動がマイクロ単位の大きなフロックと異なる可能性を示しました。実験でその存在は証明出来たものの、その発生・成長過程を知るためには、更に微小フロックを調べるための装置と、微粒子の凝集に関する理論が必要となります。(*1ナノメートル=1000分の1マイクロメートル、1マイクロメートル=1000分の一ミリメートル)
デューク大学のWiesner教授は、1980年代に微小フロック形成を予測し、その重要性をいち早く提唱しており、現在ではナノ粒子が環境に放出された際に、どこに、どの程度蓄積されるのかに関して、アメリカの国家プロジェクトを先導しております。ナノ粒子やナノとマイクロの中間のメソ粒子の特性分析にかかわる分析装置も多く保有し、私の研究を加速するために、非常に良い環境にあると考え、デューク大学に留学することを推薦していただきました。
今回、保険に関するトラブル、研究室管理システム、そして研究進捗について紹介させていただきます。
(1)保険に関するトラブルについて
私は中国の上海交通大学を卒業してから日本に留学したため、今回の渡米は初めての留学ではありません。留学には慣れているので大丈夫だろうと思っていましたが、トラブルも色々ありました。例えば、中央大学が指定した海外旅行保険に加入して渡米しましたが、デューク大学では、デューク大学が指定する保険への加入が強制されます。たった四週間の滞在にもかかわらず、タームの切り替え時期にまたがったため半年分(10万円以上)の保険加入を求められました。何とか色々な方にサポートいただいて、中央大学で加入した保険がデューク大学の必要となる内容をカバーするものであることを説明することで、加入を免除してもらうことが出来ました。アメリカは銃社会で、事件も多いせいか、日本とは異なる保険の文化を体験することが出来ました。
(2)研究室について
アメリカは研究費予算が潤沢で、研究室にはたくさんの高額な分析装置があり、まさに夢のようでした。が、たくさんの装置は管理がされておらず、使えないもの、使い方が分からないものもたくさんありました。日本の研究室では、分析装置ごとに管理者がいたり、マニュアルがきちんと整備したりされているため、使いたい時にすぐに利用することが出来ます。日本は、チームで管理するシステムですが、アメリカでは自分が使いたければ、自分で管理する、というように、研究室で必要となる行動が異なることが分かりました。短期間かつ高強度的な実験生活はまるで修行みたいなものだと私は思いました。
(3)研究結果について
あこがれのWiesner先生と多くの研究打ち合わせの機会をいただき、最先端の装置で、コロイドの計測とシミュレーションを実施することが出来ました。この研究結果をもって、現在論文を執筆しております。インパクトファクターの高い科学論文雑誌に掲載されればなおうれしいと思います。
最後になりましたが、このような機会を提供していただいた中央大学には感謝申し上げると共に、少しでも恩返し出来るように、一生懸命勉強して、良い研究をたくさん実施したいと思います。ありがとうございました。
研究室のミーティング後に

研究室のミーティング後に

宿舎。滞在中は大雪だった

宿舎。滞在中は大雪だった

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