05 REPORT

上海のビジネス現場を訪問ー企業研究プログラム@上海2015

2015年11月24日

上海理工大学内にて

↑上海理工大学内にて

 このプログラムは、2015年9月6日~13日までの間、中国上海にて上海白門会、上海理工大学の協力のもと本学キャリアセンター主催で実施された今年で3年目のプログラムです。訪問先企業での学び、中国の学生との交流、参加メンバーとの関わりを通じて、14人の本学参加学生の一人ひとりが自分の将来やキャリアプランについて考えるきっかけとしました。

<目的>

・「世界規模で活躍することができる人材」とはどのような人材かを、掴むきっかけとする。
・上海経済、中国の今を知ることを通じて、世界全体を視る力を養う。
・このプログラムを通じて、自分自身のコンピテンシーをどのように伸ばすか、事前準備を含めて目標設定、行動計画をたて、取り組む。
・次の目標設定につなげ、目標を達成するためのプロセスを考える。

<プログラム内容>

 本学の卒業生や協定校である上海理工大学にご協力いただき、「事前プログラム」、「現地プログラム」、「帰国後プログラム」の3つの構成で中央大学独自のプログラムとして実施しました。


 1. 事前プログラム 

 私たちは上海へ行く前の約2ヵ月半の準備期間で計4回の事前研修を行いました。上海白門会会員で上海での実務経験がある3名の先輩方からお話を聞いたり、中国の経済事情について本学経済学部教授・唐 成先生にご講義いただいたりしました。また、私たちでも3グループに分かれて、それぞれ訪問する企業のうちから担当を分けて、事前の企業研究をし、発表しあいました。

 2. 現地プログラム 

 2‐1. 企業訪問 
 このプログラムを通じて、私たちは8社の企業と蘇州工業園区を訪問させていただきました。新聞社や食品メーカー、コンサルティングファーム、旅行会社といった幅広い業界へ訪問し様々な学びを得ることができました。
→訪問企業ごとのレポートは下段の「企業訪問レポート」参照

 2‐2. 上海白門会定例会への参加や卒業生の先輩方との交流
 プログラム6日目の夜、上海でご活躍されている約30名の先輩方が出席される上海白門会定例会に我々も参加させていただきました。歓談の中で先輩方の上海での体験談やそれぞれのビジネスの難しさなどをお聞かせいただき、多くの刺激を受けました。今回のプログラムで我々が得た中国の新たな印象、海外で働くことに対する不安や悩みついてご指導、ご助言いただき、ときには議論を交わすことができました。
 

↑上海白門会定例会記念撮影



 また、プログラム最終日の成果報告会には、6名の先輩方にお越しいただき、発表に対するコメントや今回の学びを今後に生かすためのアドバイスをしていただきました。そのあとのフェアウェルパーティーでも人生観や仕事感など、より深いお話を伺うことができました。
 
↑上海白門会との懇親会


 2‐3. 上海理工大学との交流
 滞在期間中は上海理工大学の日本文化交流センターにお世話になり、キャンパス内のホテルに宿泊していました。上海理工大学の学生の皆さんは、初日のウェルカムパーティーや最終日のフェアウェルパーティーにおいて、心のこもったもてなしをしてくださり、学生同士でお互いに交流する機会もありました。互いの国の文化を紹介したり、趣味の共通点を見つけて語り合ったり、国籍にとらわれない一人ひとりとして仲を深められたと思います。最終日にはグループディスカッションを行い、恋愛観や知的財産の問題について議論しあいました。互いの考えの相違点を把握し合うことは新鮮に感じるとともに相互理解において大きな意義があると感じました。
↑上海理工大学にてウェルカムパーティー

 3. 帰国後プログラム 

 2015年10月25日のホームカミングデーにて、本プログラムの参加学生による成果報告会を行いました。

<むすび>

 今回のプログラムで上海に行くにあたって、参加学生は各々目的や思いをもって望んでいました。キャリアプランを具体的に考えている者、まだ先が見えず将来を考えるきっかけにしようとする者、中国という国に興味があり日中関係をビジネスの視点から切り込んでみようとする者等、様々でした。このプログラムを通じて、私たち学生が学んだものは企業研究だけではなく多種多様な内容のものです。当然、学年や学部も違えば抱いていた目的も違う私たちは、それぞれ感じ、学び得たことも一人ひとり異なります。しかし、私たちが特に共通して得た学びが一つあります。それは自分の目で見て学習する大切さです。渡航前、中国という国に対して、マイナスのイメージを抱いている者も少なくありませんでした。日本人に広く共通している感覚でしょうが、マスコミやメディアからの間接的な情報が強く影響しているでしょう。ですが、実際に中国の街並み見て、中国の方たちと触れ合って、中国のビジネスの現場に行って、私たちは事前に得ていた情報が必ずしも正しくはないのではないかと感覚的に思いました。自分の目から直接得られる情報は他には代えられない価値を持ち、時に新たな発見をもたらしてくれます。その貴重な経験ができたのも今回のプログラムの大きな意義であったと感じています。

 今回、事前学習も含め、私たちは各々数多くの学びを得ました。内容はそれぞれで異なるでしょうが、将来を考えるにあたって、また今後の様々な学習をするにあたって、ものを見る視野を広げることができたのは間違いありません。このような成長は、実際に上海に行ったからこそ感じられたものです。これに終わらず、私たちは更なる挑戦をし、それぞれの目標に向かって前進し続けます。また今後も、このような経験を将来にわたって多くの学生にしていただきたいと強く思っています。

 最後に、今回企画の段階からお世話になった上海理工大学日本文化交流センターのセンター長である何 偉銘先生、上海理工大学ボランティアの学生の皆さん、上海白門会の先輩方、そして本学キャリアセンターの担当者の方々には、改めてお礼を申し上げたいと思います。

 → 活動報告会後OBOGの先輩方と記念撮影

企業訪問レポート

2015年9月7日(月)

産経新聞社
 “中国における報道とそこから見える中国の現状と今後について”を中心にお話を伺いました。中国での新聞記者としての働き方として、感情論と客観的思考を分けて考える二分法を取ることが不可欠であり、事実を伝えるにあたってこの二つを混同させてはならないことをお教えいただきました。そのうえで、中国企業に対して日本企業がスピードで劣ることや、GDP成長率など目くらましの数値に惑わされてはいけないことなど、新聞記者の視点からみえる中国という国をお伝えいただきました。外国メディアに対して規制が厳しいという中国国内の問題、中国についてネガティブな内容が注目される風潮である日本国内の問題など、様々な難しさを抱えながら働く新聞記者の苦労とやりがいがお話からよく伝わり、私たちも報道の意義や受け取り方について考えさせられました。
JETRO(日本貿易振興機構)
 “日系企業の中国進出の鍵、他国との競争”についてを中心にお話しいただきました。模倣品が数多く出回る中国でいかに日系企業はビジネスを展開するか、知的財産の問題にどう対処するかなど、中国という国ならではの問題についてお教えいただきました。また、日系企業が中国進出で成功するためにすべき工夫や努力を様々な企業から相談を受けてきた実務経験をもとに学ばせていただけました。日系企業はスピードが劣り事前調査も十分にできない場合もあるが、一方で手厚いアフターサービスなど独自の強みも持っているなど、具体的にお聞かせいただきました。また、中国に進出している韓国や台湾の企業の特徴なども学びました。このプログラムを通じて役に立つ視点や知識を得られたと思います。

2015年9月8日(火)

安川電機
 “中国における日系企業の工場運営の工夫”を中心にお話を伺いました。日本企業が中国に工場を持つメリット、現地従業員の教育の工夫をお教えいただきました。最近は中国国内でも注目され始めている環境への配慮について、安川電機の工場での工夫をご紹介いただきました。また、日本と比較した中国での受注の特徴について実際のご経験からお話しいただきました。その後、工場内を見学し、製造の過程の一部を見学させていただき、機械のオペレーションも体験させていただきました。
KOMATSU
 “中国での産業機械ビジネスの特徴と工夫”を中心にお話を伺いました。中国市場は日本と大きく異なり、産業機械の売り方には工夫が必要であることを、具体的な例をもちいてお話しいただきました。中国全体で日本とビジネスの仕方が違えば産業機械に求められるものも違い、それにどう日系企業として特長も生かしつつ応えるか、非常に難しいことが分かりました。また、常に先を見通し、スピーディーな意思決定でビジネスチャンスを逃さないという中国ビジネスにおける必須事項を学ばせていただけました。積極的に現地従業員を育成し、企業として現地化を推し進めていること、またそのメリットもお教えいただき、日系企業を研究する新たな切り口を見つけられたと思います。
 

2015年9月9日(水)

蘇州工業園区
 蘇州工業園区とは、蘇州の広大な土地に建設されたビジネスパークです。国内外の企業のオフィスを中心に、住宅や教育機関、リラクゼーション施設などが区画分けされ含まれています。蘇州大学の施設内にはベンチャー企業がオフィスを借りられる場所があり、手厚いサポートが受けられるシステムを知りました。中国の急激な経済成長の鍵となるビジネスのパワーが誕生し成長していく仕組みを肌で感じることができました。
 


→ 蘇州大学内 innovation center
KPMG
 “会計監査、コンサルティングから見える日本企業の中国進出”についてを中心にお話を伺いました。外側からみた中国の経済状況やビジネスと内側から見たそれらの現状と今後の展開について、数多くの企業のコンサルティング業務の経験からお話しいただき、大変新鮮に感じました。今まで抱いていたイメージと異なっていた面が多く、中国のリアルを垣間見ることができました。また、中国での会計監査やアドバイザリーサービスの独特な難しさや工夫について学び、ビジネスの世界でのそれらの役割を知ることができました。

 

2015年9月10日(木)

日本旅行
 “日中関係の変動と旅行業界のビジネス”について中心にお話しを伺いました。政治や環境の問題の影響を強くうける旅行業界が、どのようにその困難を乗り越えてビジネスチャンスを狙っていくか、中国での長年の駐在経験からお話しいただきました。中国というリスクの多い国でビジネスを展開することは大変難しく、ときには政治問題が影響し旅行がすべてキャンセルされてしまうこともあることを伺いました。そのようなときの対処法は旅行業界だけでなく、すべての業界に通ずる考えだと感じました。また、外的要因に影響されやすい業界だからこそ見える、これから中国で伸びるビジネスの形についてもお教えいただき、中国経済の今後について考える良い機会となりました。
上海漢和立業
 “日中間ビジネスにおける商社の役割と会社運営の工夫”について中心にお話を伺いました。自ら会社を立ち上げ、日中間のビジネスを扱うご経験から、日中のビジネスの特徴や商社企業者としての働き方をお話いただき、日本企業には中国進出の際のアドバンテージも多くあることを改めて理解しました。また、ビジネスパーソンとして自分の仕事をどう良い方向に導くかお教えいただき、自分たちの将来を考えるにあたって大変貴重な経験となりました。
ハウス食品
 “中国でのプロモーション活動と現地法人の役割”について中心にお話を伺いました。カレーの文化がなかった中国でいかにカレーの味を知ってもらうか、まさに草の根活動から中国ならではのプロモーションの難しさに直面した経験をお話しいただきました。改めて異なる文化と社会の仕組みを持つ海外に進出する際の苦労を感じさせられました。また、日系企業の現地法人として、現地社員に対し迅速に意思決定をする必要性や、本社との意思疎通の工夫をお教えいただき、日系企業の駐在員としての働き方について肌で感じられました。

 

本取り組みは、産経新聞にも掲載されましたので、ぜひご覧ください。(下記リンク参照)
SankeiBiz /【上海摩天楼】ソフト競争力、まだまだ日本が優位 安川電機・中国常州の工場 中大生が視察_2015.9.10


2015年度 企業訪問プログラム@上海 参加者一同

執筆代表者
法学部法律学科3年 冨田裕美



 

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