05 REPORT

【参加報告】JICA大学生国際協力フィールド・スタディ・プログラム

2016年04月08日

↑ガンジス川の様子。

塩野 愛実 法学部 国際企業関係法学科2年
(私立淑徳高校出身)
 
プログラム名:JICA大学生国際協力フィールド・スタディ・プログラム
 渡航期間:2016年2月21日~3月6日
 渡航国:インド(デリー、アラハバード、バラナシ)
 私はこの春、国際協力機構(JICA)大学生国際協力フィールド・スタディ・プログラム第3期生として2週間インドに滞在し、調査をする機会を得ました。渡航自体は2週間ですが、2泊3日の事前研修(12月中旬)と事後研修(3月中旬)を含むもので、テーマ設定や日本での事前調査、渡航後の報告まできちんと行える内容の濃いプログラムです。
 なんといっても本プログラムの魅力は、参加者20名が日本全国の20の異なる大学、学部から集結していることです。国際系学部はもちろん、法学部、経済学部、農学部、工学部、獣医学部、医学部そして水産学部など、多岐に渡る分野から国際協力に興味を持つ学生とつながりが持て、お互いに刺激し合うことができました。
 また、JICAのプログラムということもあり、実際にJICAが現在取り扱っている案件の現場を視察させていただくことができました。さらに、第3期の運営事務局はNGOを支援するNGO団体「国際協力NGOセンター(JANIC)」であったため、JICAという大きな国際機関からの視点だけでなく、より現地に密着度の高いNGOからの視点という双方からの物事を観察することができました。

↑JICAインド事務所にて。

 現地渡航後、まずはデリーのJICA事務所でオリエンテーションを行い、次にVANI(JANICのインド版のような団体)にてインド内のNGOレベルにおける活動状況に関するお話を伺いました。
 その後、寝台列車でアラハバードという農村地域へ移動し、一週間、NPO法人「アーシャ=アジアの農民と歩む会」のサムヒギンボトム農工科学大学継続教育学部の宿舎にて、現地学生と共に過ごしました。滞在中には、農村指導者育成事業に関することを学んだり、JICA技術協力プロジェクトである母子保健事業について取材をしたり、また周辺地域の村や学校にて各班に分かれて調査も行いました。私の班はトイレと手洗いに関する調査を行いました。インド国内では野外排泄が多く、問題となっています。
 その後バラナシへ移動し、JICAのガンジス川流域都市衛生環境改善事業を視察しました。
 3日間の滞在後、国内線を利用しデリーへ戻った後は、青年海外協力隊(JOCV)の 活動現場「Bluebells School International」を視察させていただいたり、「国際交流基金(ジャパンファウンデーション)」や「日本貿易振興機構(ジェトロ)」にて、インドの経済事情などに関する講義をしていただいたりしました。
 最後は2週間のまとめとして、その成果を初日にお話を聞かせていただいたJICAの職員の方々などの前で調査報告をさせていただきました。

↑調査班のメンバーと通訳をしてくれた方。

↑夜のニューデリー駅。

↑村で学校で調査に協力してくれた子供たちと。

 班ごとの調査について、私の班はトイレと手洗いに関する調査を行いました。
 トイレの調査実施にあたって重要なことは、日本の常識で見ても意味がないということです。また、質問の仕方も、通訳による影響がでないよう、パネルをあらかじめ用意するなど工夫をしました。
 インドでは、モディ政権が政策としてあげるほど野外排泄は非常に大きな問題となっています。ある村の教師によれば、現在村人のトイレ所有率は10~15%だそうです。しかし、モディ首相の衛生に関する政策「Clean India Mission」によって、5年後には村人全員がトイレを所有するだろうという予測でした。実際に、トイレのない家であってもTVケーブルや携帯電話の普及率は非常に高く、モディ政権の影響が村にまで良く伝わっている印象を受けました。
 その一方、インドには独特の宗教観からトイレ掃除はカーストを雇うものという常識があります。これが影響し、外国のNGOが支援してトイレを作ったとしても、掃除や管理が行われず、使われなくなってしまうことが多いそうです。ハード面の支援の限界を感じます。
 また別の村の調査では、村人の70%はトイレを自宅に持たずに野外排泄が当たり前でした。その村の野外排泄場所は特定の湖に決まっており、湖の両サイドが丘のようになっていて、男女同士両側が見えない仕組みになっていました。その村の男性にトイレがほしいかと質問すると、ほしいとは答えるものの、特に今の状況に不便はないとのことでした。

↑村にて、パネルを見せ、トイレ調査を行う様子。

↑肥料にするため、牛のフンを藁と混ぜ、手でこねて、干している。

 開発途上国に行って、実際に人々の笑顔を見たり、話を聞いたりするといつも、色々な支援の必要性がわからなくなります。私たちの常識では必要でも、現地の人にとっては必要ないのではないか。むしろないほうが幸せなのではないか。価値観の違いを考慮すればするほど、答えを出すのは難しいことが多いです。
 しかし、自分の中で意識を変えなければ、ここから前には進めません。いつまで経っても、どんなにたくさんの国を訪問したとしても、そこから自分の中で一歩進まなければ、この考えで止まってしまう気がします。私は2016年4月からミャンマーへ1年間留学するのですが、開発途上国への長期留学を決断した理由も、こういった心情の変化に大きく影響しています。
 最近は国際協力に興味を持つ学生が非常に多いですが、おそらく一人ひとりの定義は違い、またそのアプローチ手段も無限にあります。JICAのような国際機関、現場で活躍する青年海外協力隊や開発コンサルタント、企業ほか、将来の可能性は、今、私が知らないところに多く存在するはずです。多岐に渡る分野からのアプローチが必要な“国際協力”という抽象的な枠組み、そんな中でさまざまな分野を専門とする全国の学生との横のつながりが、仲間が、どんなに今後重要な財産となることか。本プログラムに参加したことで、国際協力に対する姿勢が大きく変わりました。

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