05 REPORT

ノルウェー科学技術大学への留学について

2017年01月06日

ノルウェー科学技術大学への留学について
 

大学院理工学研究科都市環境学専攻博士課程後期課程3年
丁 青(中国・上海交通大学出身)
 
 
 ノルウェー王国のトロンハイム市に立地しているノルウェー科学技術大学(Norwegian University of Science and Technology; NTNU)は7学部、約2万5000人の学生が在籍する国立大学であり、ノルウェー産業界にとって重要な人材輩出機関となっています。私は今回2015年8月27日から約1カ月間、短期留学制度を利用してノルウェー科学技術大学の水理環境工学学科のThomas Meyn准教授の研究室に留学するという機会に恵まれました。

 現在、安全な浄水を得るための技術として、前凝集-膜ろ過浄水システム(水の汚れを凝集剤に付着させ、膜でろ過するシステム)が注目されています。膜ろ過の課題の1つに、膜の孔の目詰まりによる透過性能の低下が挙げられます。膜目詰まりの原因物質は、膜の孔の大きさに近いコロイド粒子(水中の0・01から1・0マイクロメートル(*)の不純物)であることが分かっています。私は博士後期課程に入って以来、ずっと前凝集で発生するコロイド粒子について研究してきました。これまでに、粒子の大きさによって、表面の電荷が異なることを明らかにしましたが、粒子の中身が何か分からないため、これ以上研究を深めることは困難でした。(*)1マイクロメートル=1000分の1ミリメートル
 ノルウェー科学技術大学のMeyn准教授は、凝集で発生するコロイド粒子に関して先進的な研究を推進しています。私は、Meyn准教授と協力して凝集で発生するコロイド粒子の中身を突き止めるため、Meyn准教授の研究室を訪問しました。留学中、ノルウェー科学技術大学の中にあるノルウェー産業科学技術研究所(SINTEF)で研究を行いました。フィールドフロー分画(Field-Flow Fractionation;FFF)という高価な装置で、コロイド粒子を大きさに応じて分離してみました。人工原水及び天然河川水を用いて、異なる凝集条件で実験を行った結果、凝集条件によってサンプルの分離結果が異なることを明らかにしました。
 しかしながら、私は今まで3年間の実験生活を経験したので、実験等の装置をうまく調整するには時間が掛かることは分かっていましたが、留学先の別の環境で研究管理システムと分析装置の使用方法について勉強する時間が予想以上に掛かってしまいました。また、SINTEFは平日8時-16時のみ開館、博士研究員しか使えない実験室であるため、実験できる時間がかなり制限されていました。更に、すべての装置は先生方や技術員の方によって管理され、スケジュールによる完全予約制となっているため、自分の予定で装置を自由に使うことはできません。このように、時間の制限があるため、自分が考えていた通りの本研究のより詳しい検討は十分にはできませんでしたが、特別な場所での環境に順応して自分のスケジュールをできるだけ消化した今回の経験は将来の研究に非常に役立つことと思います。

 留学中は研究だけではなく、ノルウェー式の生活も色々体験できました。留学所在地のトロンハイムでは、17時-18時ぐらいでほとんどの店が閉店し、ボウリング場やカラオケなど日本で人気のある店は1つもありませんでした。これは、日本人やアジア人との生活の大きな違いだと思い感動しました。ある休日で、同じ研究室に所属している友達とハイキングをしましたが、体力不足の私はかなり大変でした。今後は生活に運動を取り入れなければいけません。またノルウェーは、物価が世界一高いことが有名です。地元の料理はたまに食べるとおいしいですが、長期滞在する場合には、倹約という意味でも、食べ慣れたものを食べるという意味でも、やはり自分で料理できるようになるのが大事だと分かりました。私はアジア人なので、アジア料理を食べると幸せな気分になります。
 最後になりましたが、このような機会を提供していただいた中央大学に感謝申し上げると共に、少しでも恩返しできるように一生懸命勉強して、良い研究をたくさんしたいと思います。ありがとうございました。

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