02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソン メッセージ vol.053

ローカルスタッフから心構えを学び、マネジメントするという姿勢

土本雅彦さん | 三菱UFJリース株式会社 
PT. Mitsubishi UFJ Lease & Finance Indonesia Research & Development Advisor

中央大学法学部 政治学科 2010年卒業
[掲載日:2016年5月23日]

「新しいことにチャレンジし、自分の成長を楽しみたい」。
学生時代から、常にアグレッシブに人生を歩んできた土本氏。
海外赴任を希望し、今年でインドネシア駐在3年目。
日系企業と非日系企業という2つの担当を経験し、
この現場で、唯一無二の地位を築き上げつつある。
目指すは、両国の企業がWin-Winのビジネスを生む
新たな架け橋となること――。

何にでも積極的に挑戦した。今、後悔はないし、仕事に活きている

↑ FLP林ゼミでのフィリピン現地調査。
現地調査中に訪問した「ネスレ」前での集合写真。

 大学生時代は、フットサルやアジア法学生協会ジャパンといったサークル、学生団体での活動、ゼミ、議員インターン、アルバイト、短期留学など、出来ることは何でも取り組みました。今、振り返ってみて、どれもやってよかったと感じています。
 とりわけ注力したのはゼミ活動。入学前からチャレンジしたいと考えていたファカルティリンケージ・プログラム(FLP)国際協力プログラムの林 光洋ゼミナール1期生として、開発経済学を学びました。FLPが「学部横断型」であることや、FLP林ゼミが1期生だったので、自分たちのゼミ文化を創りあげられる点に魅力を感じていました。ゼミでは開発の現場をより知るため、3年次にフィリピンで現地調査を行いました。学生が自らテーマを設定し、論文を英語で執筆しました。ゼミ長という立場から学んだのは、マネジメントです。フィリピン現地調査はテーマ設定から論文執筆まで、1年近くにおよびます。このプロジェクトをどう進めるか、ゼミメンバーのモチベーションをどう維持するか考える必要があり、マネジメントの勉強になりました。国際機関や現地企業、NGOなどに対し、研究内容の説明やアポイント取得、訪問時におけるヒアリング内容の事前準備なども学生たちで行っていたので、社会人になってからビジネスにも活かせたと感じます。
 また、大学1年生の頃から日経新聞や様々なジャンルの本を読んでいたことも、やっていてよかったと思えたこと。議員インターンでは、政治家や社会人との関わりが多く緊張する場面を体験してきたので、就職時の面接はあまり緊張しませんでした。
 学生時代にするべきだったことを挙げるとすれば、1年以上の長期海外留学や経営学修士(MBA)取得、将来どんなことをしたいかもっと具体的に考えておけばよかったとも思います。

一緒に働くローカルスタッフへのリスペクト。それから、語学力

 新しいことにチャレンジすることが好きです。三菱UFJリースに就職したのは、世界で通用するMitsubishiというブランド力、グループ力を借りて、新しいことにチャレンジしたり、海外で働いたりするチャンスがあると考えたから。まず入社初めの4年間は、大阪の営業部にて東証一部上場企業およびそのグループ会社に向け、ファイナンス提案をしていました。大切にしていたのは「何でも前向きに取り組むこと」です。これまで、あまり関わりがなかった関西での社会人スタートでしたが、「大阪を知って大阪の人たちに溶け込もう!」と大阪検定を受験し、関西各地を訪ねて回るなどしていました。(私の周りの関西人は、関東人が関西弁を話すと嫌がっていたので、あえて関西弁は話しませんでしたが……笑)。
 海外赴任は、社内公募で希望。高校生時代にイギリスへ短期留学したことがあり、世界の人や文化に触れたことで「一度は世界で仕事がしてみたい!」と漠然と考えていたからです。異国の地で新しいことに挑戦し、自分の成長を感じて変化を楽しみたいという思いがありました。赴任先は、インドネシア。外国人がインドネシアのファイナンスカンパニーで働くには、インドネシアの金融庁による面接試験に合格しなければなりません。現地のレギュレーションなど、大学受験と同じくらい必死に勉強しました!
 現在の業務は、1)インドネシア企業が設備投資する際の資金調達のサポート、2)インドネシア現地法人の運営、の2点を主に担当しています。日本にいたら関わることのないインドネシア企業、インドネシア人という、言葉も文化もまったく異なる人たちと一緒に仕事ができています。
 また、2016年の2月から日系企業担当から非日系企業(インドネシア企業)担当へと部署が異動し、よりディープな世界に足を踏み入れています。正直、まったく異なる会社へ移った感覚です。日系企業を担当していた時は、インドネシアに進出する日本人の社長や幹部の方にアポイントを取り、営業していました。現在のインドネシア企業担当になってからは、ローカルスタッフがインドネシア企業に営業を行っています。私はその企業のファイナンス可否を判断するなど、社内での仕事が増えました。しかし、ローカルスタッフがインドネシア人社長や幹部と面談する際は、私も同行します。英語で面談をしていても議論が白熱するとインドネシア語に変わることがあり、会話についていくのに苦労することも。 以前はひとりの営業マン、プレーヤーという意識でしたが、今はローカルスタッフの営業活動をマネジメントするマネジャーの意識が強くなりました。

ローカルスタッフには私よりもずっと年上の営業ディレクター、マネジャーがいます。若手ローカルスタッフを指導、サポートしていく一方、彼らからインドネシア企業や営業の心構えを素直に教えてもらう意識も必要だと感じます。
 このほか、海外で働くには自分の言いたいことを相手に伝える語学力と、伝えようとする努力、工夫が大切。英語が下手でも、図やグラフ、エクセルを使ってビジュアル化、数値化して伝えるなどもできますから。あとは衣食住が異なるので、例えば「現地の食事がまったく合わない」となると、生活には苦労すると思います。「日本と違う環境下で働く」というバイタリティも必要ですね。


← カリマンタン島の石炭採掘現場。
トラックをファイナンスした後、物件を確認。
「インドネシア系企業がある場所は、地下資源が豊富なカリマンタン島などインフラが未発達な地域が少なくありません。
顧客のプロジェクト現場に、悪路を4時間かけて訪問することもあります」

海外に飛び出したことで、社内で唯一の存在に成長する

 「海外で働く」と一言で言っても、大きく違うと感じたエピソードをもうひとつ。
 インドネシア駐在になった年の夏休みに、スイスのチューリッヒに駐在している大学時代の友人に会いに行きました。お互い海外駐在の話で盛り上がりましたが、インドネシアという発展途上国とスイスという先進国で働くのは、まったく状況が異なりました。インドネシアはイスラム文化なので、インドネシア人の同僚とお酒を飲む機会は皆無。一方で、スイスは仕事帰りにパブに立ち寄って、一杯飲みながら仕事談義をするそうです。日本人としてはお酒を飲みながら仲良くなって仕事の話もしたいところですが、インドネシア人とはそうはいきません。私の場合は、休日は一緒にフットサルをするなど、仲良くなるために別の方法を取っています。また、インドネシアは親日国であり、日本人が比較的リスペクトされる環境にある一方、欧米社会では信頼を勝ち取ることが最初は難しいようです。

↑ ジャカルタ白門会。「50名程度の会員がいます。世代、学部を超えて先輩方と交流が持て、人生の幅がとても広がります。現地には様々な日本人コミュニティーがあり、異国の地だからこそ『日本人』というだけで、色々な世代の人と仲良くなることができます」(前段右端:土本さん)

もちろん、親日というアドバンテージに胡坐をかくと、大きなしっぺ返しが待っている。常にお互いを尊重しあう気持ちが大切だと思います。
 4月から、インドネシア駐在3年目を迎えました。この2年間の経験を基に、自分のカラー(自分なりのアイディア)をもっと出して、現地法人のマネジメントに取り組みたいと思っています。会社内でも非日系企業を担当している人材は少ないので、「この分野なら“土本”に!」と任されるようになりたいですね。私はインドネシアに進出している日系企業とインドネシア企業の両方を担当した経験を持つ、社内で唯一の存在でもあるんです。この経験を活かしたもう少し大きな目標として、ビジネスマッチングという日系企業とインドネシア企業の双方がWin-Winになれるような結びつけを行なってみたいです。
 21世紀になって、誰でも簡単に世界に飛び立てる時代になりました。一度きりの人生、世界で日本人以外と働いてみることは、人生の大きな経験になります。学生の皆さん、是非一度はチャレンジしてみて下さい!

■プロフィール■

三菱UFJリース株式会社
PT. Mitsubishi UFJ Lease & Finance Indonesia
Research & Development Advisor
土本 雅彦(つちもと まさひこ)さん

1987年2月生まれ、埼玉県出身。2010年3月中央大学法学部政治学科を卒業。同年4月に三菱UFJリース株式会社に入社。大阪第一営業部を経て、2014年4月よりインドネシア現地法人PT. Mitsubishi UFJ Lease & Finance Indonesiaに出向。

前へ

次へ