02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソン メッセージ vol.041

国際的視野から、人を救うための支援に広く携わる

田坂翠さん | 日本赤十字社
企画広報室(広報担当)

中央大学総合政策学部 政策科学科 2011年卒業
[掲載日:2014年8月11日]

田坂翠さん

生まれた時から高3の夏まで、フィリピン、韓国、ヨルダン、バングラデシュで暮らしていました。小学生の頃はフィリピンの日本人学校に通っていましたが、日本の教育をきちんと受けたことがなったので、日本人としてのアイデンティティというものがそれほどありませんでした。そんな私にとって、中央大学の総合政策学部は、ある程度自分の興味に応じて科目が選択でき、中国語や韓国語など多様な言語が学べるところが魅力的でした。

FLPの国際協力プログラムを履修

大学では、1年次からFLP(ファカルティーリンケージ・プログラム)を履修。総合政策学部のブレナン マイケルゼミとFLPの林光洋ゼミをとっていました。FLPを履修しようと思った理由は、違う学部の学生と学びたいということ以上に、幼い頃から貧しい人たちの現状を見てきたことで開発学に興味を持ち、開発学を専門とする経済学部の林光洋先生のもとで学んでみたいと思ったからです。

FLPで印象に残っているのは、3年次に体験したフィリピンでの現地調査です。ゴミ山の衛生保健について学ぶために赴いたのですが、クラスメイトと一緒に現場を見る機会はあまりありませんし、自分たちで一からアレンジをして調査する機会を設けていただいたことで、とてもためになりました。現地調査に行く際には奨学金を申請したのですが、皆で議論しながらコンセプトペーパーを作成し、その評価を経て奨学金をいただき、現地調査後に報告するというプロセスを踏んだことも勉強になりました。これは社会人になってからも必要なスキルであり、その基礎が学べたと思います。

フィリピンには、かつて住んでいたこともあって、調査に行く前はあまり大きく印象に残るようなことはないだろうと思っていました。しかし、実際にゴミ山の現状を見て、現地の人と話をしたことで、考えさせられることがたくさんありました。風景もそうですが、ゴミ山の匂いなど、現地に住んでいても嗅いだことはなく、そうした意味でも衝撃的でした。昔の悲惨な状況に比べたら随分よくなっているとは思うのですが、それでもゴミ山の近くで裸の男の子が座っているのを見たりすると、今でも変わらず貧困のサイクルから抜け出せない人々がいるのだという現実を思い知らされました。ただ、現地に寄り添った形での様々なNGOの活動を見聞きする中で、改善された点についても多く知ることができました。

卒論はEPA看護師受入れ事業について英語で執筆

フィリピンでの現地調査などを経て、やはり現場の声を聞くというのは、何においても重要だと感じました。卒業論文は、EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師の受入れについて書いたのですが、その際にも、受入れ病院すべてにアンケートを取って、実際に何人もの外国人看護師及びサポートしている日本人看護師の方にインタビューを行い、EPA看護師受入れ事業の改善点について自分の視点からまとめました。

卒業論文を書くにあたっては、ブレナン先生から、論文の書き方についての基本、例えば、引用の仕方であったり、また体験者の報告を入れるなど、自分の目で見聞きしたことを取り入れることがどれだけ大切なのかについて、丁寧に指導いただきました。もちろん、中央大学の先生方から学んだ英語力も今の仕事に生きています。

「苦しんでいる人を救いたい」という信念に共感

卒業後は、日本赤十字社に就職しました。就職先についてはかなり悩みましたが、「赤十字は『苦しんでいる人を救いたい』という信念のもとに活動している」という言葉が、自分の中で一番響きました。また、バングラデシュに住んでいた時も、現地の赤新月社でボランティアをしたことがあり、どの国にもある国際的な団体で、世界性がとても強いという印象を持っていたことも決め手になりました。英語はいずれ何かの機会で使えるだろうとは考えていましたが、英語力を活かせることが一番高い優先順位ではありませんでした。それよりはむしろ、開発や貧困といった学生時代の学びとリンクするような組織で働きたいと思ったのです。

現在は企画広報室で広報を担当

本社前にて

入社後は青少年・ボランティア課に配属されました。子どもたち向けの「青少年」というセクションと、「ボランティア」というセクションがあり、私は「青少年」を担当しました。ここでは、幼稚園から高校まで約12,947の加盟校に対して教育機材を提供したり、赤十字の精神である「人のためになりたい」「人を救いたい」という思いをボランティアでどう生かすかについての啓蒙活動を行っています。各都道府県支部の青少年課は直接学校に出向いて赤十字の説明をするのですが、私は本社所属なので、各支部の活動をまとめたり、赤十字社が推進している国際人道法を簡単に噛み砕いた教材を先生方に研修会で伝えたりする業務を担っていました。また、2年に1回、アジアの高校生が来日して、日本の高校生と議論を交わす機会があり、その調整なども行っていました。

青少年・ボランティア課に2年いたあと、昨年4月に企画広報室へ異動しました。現在は、広報担当として、毎年12月にNHKと日本赤十字社が協同で実施する「海外たすけあい」という募金キャンペーンの広報に従事しています。また、東日本大震災においては海外100の赤十字社を通じて、約1,001億円の海外救援金が集まりましたが、この海外救援金による復興支援の報告や広報関係の取りまとめもしています。具体的には、被災者の方にインタビューをして、どのように生活が変わったのか、また復興の現状などについて伺い、寄付していただいた海外の方々に英語と日本語でレポートしています。他には、メディア対応として、プレスリリースを書いたり、日本赤十字社が海外に派遣している職員が戻って来た際の報告会と、取りまとめなども行っています。先日の大型台風による被災の際には、各国の赤十字社に、日本赤十字社の救護活動や現状の動きなどについて情報を提供しました。海外メディアからのインタビューが発生した場合は、その調整も行っています。

私には昔から、「いつかは国際的な場で活躍したい」という夢があります。日本赤十字社という「苦しんでいる人を救う」組織で仕事をすることを通じ、様々な場面で学ぶ機会があり、その都度「自分ができることはなんだろう? 一番やりたいことはなんだろう?」と見つめなおし、目標設定を行っています。国際赤十字に出向という形もあるようなので、いつかはアプライしてみたいと思っています。

何をどう学ぶかは自分次第

中央大学は留学生を多く受け入れていて、学生生活の中でも留学生が身近な存在になっています。彼らと積極的に接することで、日本のことを伝えながら、海外について知ることができると思います。また、語学プログラムが豊富なことも魅力です。私は総合政策学部で中国語を履修していましたが、商学部の先生にお願いをして、スペイン語の授業も聴講させてもらっていました。何をどう学ぶかは自分次第です。いろいろな言葉を話してみたいという欲求さえあれば、様々な場が提供されていると思います。あとは、旅も一つの方法でしょう。自分にとって抵抗がないところからでよいので、海外に目を向けてみてください。面白いなと思ったら、ただその方向に進んでいけばよいのです。

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