05 REPORT

短期留学のすすめ

2015年06月24日

 
大学院理工学研究科精密工学専攻博士課程後期課程4年
戸森 央貴
 
 
 皆さんは留学というものをどう捉えているでしょうか? 何となく敷居の高いものに感じている方も多いのではないでしょうか。私もその一人で、英語の苦手な自分が短期であれ留学するなどとは夢にも思っていませんでした。そんな私が留学を終え、今では留学して良かったという思いと、皆さんにも留学制度を利用してほしいという願いを込めて執筆させていただきました。
 私は短期留学支援制度を利用し、2012年6月15日から8月3日の一月半ほどをスイスのイヴェルドンで過ごしました。短期留学としてもこの期間は短いものですが、スケジュールの問題もありそのように決定しました。初めこそ受け身の部分もあったこの留学でしたが、準備を進めながら留学への意識がはっきりとしてきました。これまでに国際学会への参加経験は数回あり、つたない英語で発表を行ってきましたが、その度に世界の研究者と渡り合うための力が必要だという考えがありました。そこで、今回の留学を通してもっと身近に世界を感じ、力をつける足掛かりになれば良い、そんな考えに変わっていきました。
 
スイスの留学先で

スイスの留学先で

 そして、先行してスイスでの一年の交換留学をしていた先輩に合流し、留学生活が始まりました。受け入れ先は西スイス応用科学大学HEIG-VDの研究室LaRA (Lab for Robotics and Automation)で、デッシーモ教授の下で研究が始まりました。内容は工業部品をロボットアームで組み立てるための制御の開発で、専用の装置に比べ製品の仕様変更や製品そのものの変更にも柔軟に対応出来るという強みがあります。私は先輩と共にこの研究に携わり、プログラムのデバッグ、組み立て工程の追加、効率化に取り組みました。更に、プログラム一辺倒でなくハード面に少しの工夫を施して問題を簡単にするなど、自由に課題へアプローチしました。火曜日のゼミでは個々に研究の進捗や計画について述べ、私も必死に会議に食らい付いていきました。結果としてロボットアームはツールを換えながら部品を組み立てることに成功し、成果として一連の工程を収めた動画や各工程の実験データを残すことが出来ました。
 また、研究外の生活でもさまざまな収穫がありました。休日に友人たちとBBQをしながら過ごした時は、一日中英語で話し続け、気が付けば日本の友人と接するように会話を楽しんでいました。この日以来、研究室においても英語が聞き取りやすくなっていたのを覚えています。スイスには多くの国から留学生が訪れており、そこには異なる価値観が一緒になって存在していました。そんな人々と共に暮らし、食事をし、文化の違いや趣味について語り合う中で、私が感じた彼らの共通の考えは、「意見をはっきり、理由と共に言うこと」「その上で相手の考えを認めれば受け入れること」でした。特に国際的な場ではどちらを欠いても議論をすることは出来ないと感じました。日本でもよく言われていますが、実際に各国の人々と話すと、実感を持って理解することが出来ます。
 これまでは海外、留学というものに対して漠然とした畏怖がありましたが、その地に立ってみることで本当の姿が見えてきました。そして自分の意思をしっかり持って接すれば、必ず相手は向き合って話を聞いてくれます。この短期留学支援制度を利用する学生はまだまだ少ないように感じます。もしも、少しでも海外に興味があるのなら行動してみるべきだと思います。初めがどんな理由であれ、自ら行動した結果として得たものは自信となり人生の糧となることは間違いありません。
 最後に、本制度を利用させていただいた中央大学大学院理工学研究科、留学に関して多くの助言をいただいた大森さん、受け入れてくださったデッシーモ教授に深く感謝いたします。
 

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