05 REPORT

”研究者” として留学するということ

2021年01月01日

理工学研究科精密工学専攻
博士課程前期課程2年

 
金森 公平 <私立攻玉社高校(東京都)出身>

■活動内容
留学先:米国コロンビア大学 Xi Chen Group
(トビタテ第11期生としての派遣)
期 間:2019年9月12日(木)~2019年11月15日(金)
場 所:アメリカ合衆国ニューヨーク
参加した学会
「EUROMAT 2019」(スウェーデン・ストックホルム)、
「ASME IMECE 2019」(アメリカ・ソルトレイクシティ)
 

▲筆者の座右の銘:どんな時も貪欲に!

 もともと単なる語学留学ではない、研究留学をしたいと考えていましたが、学部4年次に配属された材料強度学研究室の米津明生先生のご紹介で、修士1年次に「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」の一員として、約2カ月間の研究留学の機会を得ることができました。

 留学を前に、私は所属研究室の実験技術を先方に売り込んで共同研究を創出すること、さらには先進的な解析技術を扱う研究プロジェクトに参加することを目的としました。つまり、「どんな研究をするか」に主眼を置いていました。そしてなんとか研究をまとめ上げ、渡米直前にストックホルムで行われた「EUROMAT 2019」という国際学会に参加したのですが、私の研究に関心が集まらず完全に自信を喪失してしまいました。

▲チュー王子を片手に自由の女神像へ

 そんな状態で臨んだ米国留学も、学生ではなく一人の研究者として評価される厳しい環境のなか、しばらくの間は一生懸命プレゼンをしても関心をもってもらえない状況が続きました。ところがあるとき、一人のPh.D.から「パワーポイントの図がきれいだから」という理由で、周囲の湿度に応じてCO2の吸収・脱離を行う材料を開発する研究プロジェクトに招待していただくことになったのです。

 それ以降、なんの知識も経験もないのだからと割り切り、私という人間に少しでも期待してもらえるよう必死の努力を続け、徐々に関心をもっていただけるようになり、研究を軌道に乗せることができました。そして、「どんな研究をするか」ではなく「どんな研究者になるか」に主眼を置くようになり、プレゼンにおいても、私という研究者がどのような思想をもち、何を成し遂げようとしているのかを前面に出すようになりました。その甲斐があって、留学終盤にソルトレイクシティに飛んで「ASME IMECE 2019」という国際学会に参加した際は、多くの質問をいただき、議論を盛り上げることができました。

 帰国後も連絡を取って研究を進めた結果、論文が”Moisture-Driven CO2 Sorbents”というタイトルで国際学術誌『Joule』に掲載され、共同研究者のKlaus S. Lackner博士の所属するアリゾナ州立大学のニュース記事で特集されるという、この上なく光栄な経験もしました。

 留学を経て、私は共同研究とは「研究と研究」ではなく「研究者と研究者」が協同するものであり、何よりも一人の人間として関心をもってもらうことが重要であるということを学びました。また、研究には直接関係がないことでも、個性を磨いておくと後々役に立つことも実感しました。修了後は国内メーカーの研究職に就きますが、「研究者として何をめざすか」を常に意識し、研鑽を積んでまいります。




 

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