02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソンを目指す中大生 vol.23

語学研修で訪れたドイツで、再生エネルギー政策について調査研究

山田麻莉奈さん | 【総合政策学部】外国語研修プログラムに参加
    

総合政策学部 政策科学科 4年
[掲載日:2018年10月24日]



子ども時代に育んだ環境問題に対する意識を
高校、大学へと進学しても持ち続けていたという山田さん。

その思いは、ドイツへ渡航するきっかけのひとつになりました。
そこで見た街や人々の暮らしを肌で感じ、ふくらんだ疑問は
研究プロジェクトに発展していきます。再び訪れたドイツでの調査研究は、大学生活のひとつの成果にもつながっていきました。

卒業論文、そして卒業後も”環境”をテーマに、
次は、日本のためにできることを探し続けていきます。



 
あああ

興味を抱き続けてきた”環境”がきっかけとなり、
ドイツ語に出会い、語学研修でドイツへ

▲研修旅行の主な滞在先・デュッセルドルフにあるライン川

 小学3年の時に新設された小学校に通ったことが、“環境”に興味を持つきっかけとなりました。その小学校はエコスクールだったため、最新の環境設備が整備されていました。太陽光や雨水の活用、屋上緑化等の取り組みが行われ、日々の環境保護教育も盛んでした。そのような学校で過ごしたことにより、環境について学んだり考えたりすることが、自然に身に付いたように思います。さらに、高校時代には、エコスクールでの体験を基にしたレポートが表彰され、“環境”は、いつしか自分のテーマとなっていきました。その後、多面的に物事を見る能力を養いたいという思いから、総合政策学部に進学しました。
 
 大学入学後、9つある第二外国語の中から選択したのはドイツ語です。ドイツが環境保護活動先進国であることに魅力を感じたからでした。学び始めると、ドイツ語圏へ行き、実際に目で見て、現地の人々と会話をし、文化に触れてみたいという思いが強くなり、2年次の夏に、ドイツへ行くことにしたのです。

▲ドイツで見つけた電気自転車の充電器はポップなコインロッカーのようです

 ドイツへは、学部のプログラム「外国語研修」を利用して行きました。学ぶ場所である語学学校ではカリキュラムが組まれ、入国から出国まで担当教員の引率があるなど、滞在中のサポート体制が整っていました。初めての海外滞在だったため、とても安心できるものでした。滞在中の2週間では、午前中は語学学校でドイツ語を学び、午後は観光をしたり、自分で立てた計画で行動したりすることができました。

 環境保護活動先進国として名高いドイツでは、街中に設置されたごみ箱は、日本よりも種類別に細かく分けられていて、ペットボトル・瓶のデポジット制も定着していました。環境に対して高い意識を持つ住民が多く、こうした取り組みが根付いているように感じられました。また、再生エネルギーの導入も進んでおり、太陽光パネルや風力発電機が至る所にありました。

 ホームステイ先でドイツの一般家庭の暮らしを体験したことで、環境に対する市民の意識を肌で感じることができました。2週間の滞在によって、ドイツの環境政策の実情を、より深く知りたいと思うようになったのです。
 そして、翌年、3年次の夏に再び「外国語研修」を利用して、ドイツに行くことを決めました。


 

初めて訪れたドイツで、街や市民の姿に刺激を受け
2度目の研修に向けて研究プロジェクトを立ち上げる

 2度目のドイツ語研修では、語学力の向上だけでなく、調査研究をすることも目的になりました。大学生のうちに、課題を発見して研究したいという気持ちもありました。そこで、学部の「プロジェクト奨学金」にも挑戦。研究プロジェクトを立ち上げ、研究計画書を提出する必要があったため、3年次の春に計画を立て、様々な準備をスタートさせました。
 
 研究活動は「再生エネルギー政策」を柱に決め、所属ゼミの宮下紘准教授、ドイツ語講師でドイツ滞在時に引率をしてくださる研修担当のヤンボール先生から助言をいただきながら、プロジェクトに取り組みました。調査対象には、2年次に滞在したドイツ西部ノルトライン・ウェストファーレン州にあるリヒテナウ市と、都市部での環境政策に力を入れている川崎市を選びました。
 様々な文献や資料を調査した結果、「今後の日本の再生エネルギー政策に必要なものとは?~ドイツ・リヒテナウ市の事例から考える~」という環境行政に関連したテーマを設定し、比較研究に取り組むことになりました。

 ドイツ渡航前には、川崎市の環境教育施設の見学を通して、市の取り組みを学んだり、リヒテナウ市での取材に向けた質問表を作成したりして、準備を整えました。
 

▲デュッセルドルフ空港では、サッカーコート6面分の太陽光パネルで発電を行っています

風力首都・リヒテナウ市で見たもの、感じたこと

▲多くの家屋では、屋根全面に太陽光パネルが設置されています

 語学学校で語学を学び、午前や週末を利用して調査研究を行う2週間のドイツ語研修が始まりました。
 リヒテナウ市では、街の様々な場所に風力発電機が建ち並び、多くの家屋に太陽光パネルが設置されています。市内には、官民パートナーシップ事業の一環として設立された“テクノポリス”という環境関連の施設があります。同施設の見学後、リヒテナウ市気候保全対策管理人のフォッスさんと、市民エネルギー財団理事のパウリさんに取材させていただき、市の再生エネルギーの取り組み等に関して具体的に知ることができました。
 
 リヒテナウ市で再生エネルギーが受け入れられるようになった背景には、市民と再生エネルギーの距離の近さがあるように思います。例えば、電気自動車の試運転のモデル事業や、再生エネルギーの利益を市の環境・福祉政策に反映させる取り組みが挙げられます。こうした政策の結果、風力・太陽光を中心とした再生エネルギー発電設備が、市内の一般家庭用電力需要をカバーできる程度まで整備されていると分かりました。
 フォッスさんに頂いた、私からの質問に対する9ページにわたる回答書からは、リヒテナウ市の再生エネルギーに対する熱意が感じられました。取材後には昼食をとりながら、環境に対する考えを意見交換させていただくなど、密度の濃い取材を行うことができました。

 また、取材は可能な限り、ドイツ語を駆使して行いましたが、ヤンボール先生が同席してくださったおかげで、インタビューをより正確かつ円滑に進められ、非常に充実した調査ができました。

 帰国後、リヒテナウ市で学んだことを踏まえ、川崎市環境局の方にお会いして、インタビューを行いました。川崎市では、過去に公害・大気汚染問題が起きたことをきっかけとして、工業地帯でありながら環境都市として持続可能な経済活動を行うことを目指しています。取材を通して、日本国内における自治体の再生エネルギー政策の難しさを感じました。

 テーマを持って参加したドイツへの「外国語研修」によって、ドイツと日本、リヒテナウ市と川崎市の、環境政策に関する比較研究を行うことができました。また、補助金事業・広報活動など、行政の取り組みを幅広く知ることができました。日本でも、自治体による環境に関する啓発活動は行われていますが、リヒテナウ市のような日常生活で再生エネルギーなどを「体験」できる仕組みがあれば、より環境問題が身近になるのではないかと感じました。
 

▲テクノポリス内で取材を行いました(右からパウリさん(市民エネルギー財団理事)、フォッスさん(リヒテナウ市気候保全対策管理人)、ヤンボール先生、筆者)

▲街には見渡す限りの風力発電機が建ち並んでいます

テーマやビジョンを持って過ごすことは、
より充実した大学生活につながります

▲ホームステイ先でホストマザーの作るケーキは、ドイツ滞在中の楽しみのひとつでした

 海外留学や海外派遣をより充実したものにするためには、語学履修や参加プログラムを選択する際、漠然とでも良いので、何かしらのビジョンを持って臨むことが大切だと思います。

 私は、ドイツ語の講義を受けるだけでなく、ドイツに関する映画やテレビ番組を見たり、書籍や観光ガイドブックを読んだりして、日常生活にドイツを取り入れていました。ドイツ語に慣れ、国や文化をより身近に感じられるようになりました。私は「環境」というテーマでしたが、ぜひ、後輩の皆さんもテーマやビジョンを持って、いろいろなことに挑戦してみてください。きっと実りのある大学生活を過ごせると思います。

 充実したドイツ語研修、3年次までの学部での学びを経て4年次になり、卒業論文では「廃棄物政策」に関しての執筆に取り組んでいます。また、夏には環境省への入省が内定し、春からは環境行政に携わることになります。2度のドイツ語研修・プロジェクト研究で養った、ドイツでの経験と行動力を活かし、日本の環境政策に貢献できるよう、頑張っていきます。
 

総合政策部の授業科目<外国語研修のここが良い!>

・語学学校に通いながら、その他の時間を利用して外国文化を学ぶことができる。
・履修している外国語のモチベーションを向上できる。
・大学から航空券代等の一部について補助費が支給される。

<山田麻莉奈さんの活動経歴>

●2年次:2016年8月 外国語研修(2週間)=ドイツ・デュッセルドルフの語学学校
●3年次:2017年8月 外国語研修(2週間)=ドイツ・デュッセルドルフの語学学校、リヒテナウ市での再生エネルギー政策の調査
●2017年度学部長賞(プロジェクト奨学金)を受賞

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