02 GLOBAL PERSON

グローバル・パーソンを目指す中大生 vol.25

法曹になって途上国の法整備支援に携われるよう、頑張っています

前山真輝さん | 【法学部】国際インターンシップ(タイ)

法学部 法律学科2年
[掲載日:2018年11月20日]


高校の教科書で見た1枚の写真に心が動いた。

内戦や干ばつ等によるアフリカの深刻な飢餓を写した写真は、
不自由なく暮らす自分たちの地球の裏側、世界中に、
苦しんでいる子どもたちがたくさんいることを教えてくれた。

力を付けるために法を学び、それをベースに
彼らのためにできることを模索しようと法学部に進学した。
授業で訪れたタイで、現地の実情を見て聞いて、想いは強くなった。

”法曹として、途上国の法整備支援に支援に携わる”

将来に向けて、発展的な知識を身に付けるべく、
問題意識を持って学んでいます。

文献や資料ではみえてこない実情を知るために途上国へ

 高校時代、教科書に載っていた「ハゲワシと少女」(※)という写真を見て、衝撃が走りました。アフリカには内戦や干ばつのために、深刻な飢餓で大変な思いをしている子どもたちがたくさんいることを知りました。その一方で、自分たちは恵まれた環境で暮らしています。心がざわつきました。
 それ以来、アフリカだけでなく、世界中の貧困等で苦しむ人々について意識するようになりました。そして、将来は途上国支援ができる国際協力や人道支援等に携わる仕事をしてみたいと思ったのです。
 
 法学部には、法曹を目指して進学しました。国際協力支援等に携わる仕事に就くとしても、企業の中で働く際にも、法律的な観点で物事を把握し、様々なサポートができる資格を持つことは強みになると考えたからです。
 海外へは、高校1年のときにイギリスへ3週間に行ったのが最初です。そのときは語学研修と観光を半々で過ごした楽しい海外研修でした。しかし大学生となり、教養科目や学部の専門科目を履修するうちに、次はテーマや目的を持って海外へ行ってみたい、できれば途上国を実際に見て見識を広げたいと考えて、海外で活動ができる「国際インターンシップ」を履修しました。
 
(※)ハゲワシと少女=フォトジャーナリストのケビン・カーター氏がアフリカ・スーダン
にて撮影。世界に衝撃を与え、1994年にピュリツァー賞を受賞した。
  「国際インターンシップ」の前期授業では、前提となる国際政治や外交に関しての知識のほか、人身取引・労働問題等についても学びます。さらに、訪問する国を選び、自分のテーマを明確にしていきます。私はタイを選びましたが、その他にミャンマーとスイスもあります。テーマや国が決まってからは、授業のほかに、昼休みに「サブゼミ」を行い、同行する仲間と共にタイについての文献などを読んで、歴史や文化、国の政策等を調べました。私のテーマは「子どもの人権」でしたが、仲間は、人身売買、企業目線での支援、教育等とそれぞれのテーマを持っていました。そして、各自のテーマを共有するだけでなく、現状について事前調査を行って、訪問先を決めたりアポイントを取ったり、現地調査に備えました。
 

支援団体や国際機関、企業を訪問し、タイの抱える様々な問題をリサーチ

▲タイの人身売買対策チームとの集合写真

 夏休みの約2週間、タイの首都バンコクに滞在したほか、ミャンマーとの国境近くの村で、一泊二日のホームステイをしました。

 バンコクの滞在中には、JICAをはじめとする団体、国際機関、企業などを1日数件訪問してフィールド調査を行いました。訪問先で、それぞれの担当者から活動の実態やその背景等についてレクチャーを受けてインタビューするといった流れです。担当教員の酒井由美子先生と兼任講師でタイに長期滞在経験のある齋藤百合子先生の同行があり安心でした。タイ語ができない私たちには心強かったです。

 
 インタビューの中で特に印象に残っているのが、移民労働者や不法就労者の権利の整備を目指して活動している「LPN」という団体の話でした。
 移民労働者たちは、入国して企業の孫請け以下のような下請け会社等で労働者として働くようになりますが、社会保障はもちろんなく、低い立場で働き暮らしています。さらに彼らの職場は違法なセクターということも多いようです。ある移民労働者の家政婦さんが仕事中に他殺された可能性があるにもかかわらず、警察の捜査もほどほどに自死と認定されてしまいました。その裏には、雇い主と警察に癒着があったと聞きました。
 このように真相がウヤムヤになる事件、移民労働者をめぐるトラブルは後を絶たないようです。移民労働者の権利もタイ人と同様に認められるべきだと思いました。
 
 また、タマサート大学法学部を訪問したときには、タイ政府で仕事に就いた経験のあるキリヤ教授から移民労働者に対しての政府見解と実態との比較等、とても興味深い内容を聞くことができました。もっとも、実際に問題の渦中にいる方々との間では、その認識のギャップがあるように感じました。

 

他国からの移民問題だけでなく、国内での貧富の格差にも驚く

▲ホームステイ先家族の田んぼにて。共に参加した1年生と

 首都バンコクは東京のような大都会で、高層ビルが建ち並び英語も通じます。一方、タイ北部、ミャンマーとの国境近くのチェンライは、山が近くにあるのどかな田園地域です。その中に住むアカ族の村で一泊二日のホームステイをしました。
 タイの移民労働者として働く人たちの中には、隣接するミャンマー、ラオス、カンボジア等から不法入国してくる人が一定数いるのですが、私たちが滞在した村から見える、未開の地のようなジャングルや山々を通ってくるようです。国境が明確ではない荒れた山々を抜けてくる、彼らの山を歩く様子が想像できるような村の風景でした。

 ホームステイしたアカ族の村には、電力が通っておらず、太陽光発電に頼っているのですが、滞在中は天候に恵まれなくてソーラーパワーが利かない日でした。そのために夜は、ロウソクとヘッドライトで過ごす経験をしました。貧しく電力が不足していて、冷蔵庫もありません。その日に採ったものをその日に、直火のかまどで調理して食べる暮らしです。また、村の道路はガタガタで、子どもが通学するにはとても危険です。村の医療設備や施設は十分ではなく、大病を患えば大きな街の病院に行かなければなりません。
 
 地方の貧しい地域に対してはインフラ整備や経済開発は行き届いていません。タイが国として経済開発に力を入れているのは、すでに発展しているような一定地域だと聞きました。農村地域にも資金を出しますが少額すぎて、開発にまで回らないようです。さらに農村地帯では収入の多くを農業などの一次産業に頼っていて、たとえ豊作だったとしても、他の村も同様に豊作で供給量の増加で値崩れするなど、収入は安定しません。教育を十分に受けてない大人たちが多いため、貧しさから抜け出したくても抜け出せない状況のようでした。

 田舎の村でのホームステイでは、日本の暮らしと全く違う体験ができただけでなく、インフラ整備や教育の拡充等様々な問題のある地方の様子を見ることができて、とても貴重な2日間となりました。

 

世界中の、支援が必要とされる人々や権利を奪われている人々が普通に暮らせる日を目指して

▲ホームステイ先でアカ族の伝統衣装を着せてもらいました

 帰国してからは、タイの振り返りレポートを各自で作成したり、ミャンマーやスイスへ行ったチームと情報の共有をし、テーマを絞りながら授業を進めています。それと同時に、活動報告のポスターを制作しています。私たちの多くが法学部の「やる気応援奨学金」を利用してタイに行ってきたこともあり、このポスターは、奨学金を支援してくださる方への報告にもなり、併せて来年の履修者に向けたプログラムの紹介にも利用します。

 この「国際インターンシップ」で2週間タイに行ったことにより、タイの地域の格差、貧困の格差、移民問題等、文献等の資料では味わうことのできない深刻さを体感することができました。また、日本における弱者や搾取の問題を気に留めるようになりました。子どもの権利には特に注目していて、女子高校生等が標的となるJKビジネス、これはいわば人身売買のひとつです。これは氷山の一角で、日本にも本当に様々な問題があると思います。

 日本であれ、世界であれ、支援が必要とされる人々、権利を奪われている人々が衣食住に困ることなく暮らせるようになってほしいです。そのためにも、このような問題に対処できる「法律」の整備等が必要であることを実感しています。自分自身が国際協力や人道支援に関わっていくために、法の専門知識を持つことの意味を見つけられたように思います。まずは広い視野を持つこと、そして司法試験に向けて力をつけていきたいです。

 

法学部の履修科目<国際インターンシップのここが良い!>~タイ編

・現地の団体、国際機関、企業等を訪問して話を聞き、文献や資料では分からない実態や情報を見て聞いて体感できる。
・バイリンガル(日本語・英語)の授業を受け、身に付けた語学力を渡航先で生かすことができる。
・多言語な環境で学ぶことにより、自分自身のアカデミック・リテラシーを発展させていくことができる。
・リサーチ、プレゼンテーションの技術を身に付けることができる。
・他学科や他学年の学生と共に学ぶことにより、多様なものの見方を知り、視野を広げることができる。

前山さんの活動経歴

●2年次:2018年8~9月国際インターンシップ(2週間)=タイ
企業や各種団体・機関を訪問して調査研究を実施(渡航費用=やる気応援奨学金を利用)

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